ニュースリリース

横浜国立大学、情報通信研究機構、東京大学と共同でナノレベルのランダムパターンで個体認証する技術「ナノ人工物メトリクス」を開発

大日本印刷株式会社(本社:東京 社長:北島義俊 資本金:1,144億円 以下:DNP)は、国立大学法人横浜国立大学大学院、独立行政法人情報通信研究機構(以下:NICT)、国立大学法人東京大学大学院と共同で、人工物の物理的な特徴を認識して個体認証を行う技術「ナノ人工物メトリクス」において、数ナノ(10−9)メートル単位の微細でランダムなパターンでの認証を実現しました。

【開発の背景】

近年、紙やプラスチックなどの人工物について、個体に固有な物理的特徴(パターン)を計測して個体認証する新技術「人工物メトリクス」の研究開発が進められています。指紋などの生体固有の特徴で個人認証する「バイオメトリクス(生体認証)」にちなんで名づけられた人工物メトリクスは、これまで主にマイクロ(10−6)メートル単位のパターンを認証に用い、紙にランダムに漉き込まれた微細な磁性繊維で真贋判定する株券などの導入事例があるものの、セキュリティ性を高めるためにより微細なパターンで認証したいとの要望がありました。

横浜国立大学の松本勉研究室、NICTの成瀬誠主任研究員、東京大学の大津元一研究室、DNPは、総務省の戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)において「ナノフォトニクスによる情報セキュリティ技術の創成」というテーマで、ナノ領域の情報の書き込み/読み出しが可能な「ナノフォトニック階層的ホログラム」に関する共同研究を行っています。今回四者は、これまでの研究成果を発展させるとともに、電子線リソグラフィープロセスで発生する“レジスト倒壊現象”を応用し、ナノメートル単位の極めて微細なパターンを作成し、個体認証に利用できる技術「ナノ人工物メトリクス」を開発しました。

【ナノ人工物メトリクスの概要】

本技術は、ナノメートル単位の半導体回路の製造などに用いられる電子線リソグラフィープロセスを応用したものです。このプロセスでは以下のような工程で半導体回路を形成します。

  1. レジストを塗布したシリコン基板に、形成したいパターンで電子線露光を行うことでレジストの特性を変化させる。
  2. 現像処理によって、レジストに覆われている部分と基板が露出している部分を生じさせる。
  3. エッチングにより基板の露出部分に凹凸パターンを形成する。
  4. 不要なレジストを除去する。

今回、レジストの厚さや基板との接着力、電子線露光時間などの条件を調整し、レジストのピラー(柱)の倒壊現象をランダムに発生させることで、10ナノメートル以下の複雑な微細構造を有するランダムなパターンを形成しました。

通常の微細加工技術においてはレジスト倒壊現象は避けるべき現象ですが、今回の技術はこの現象のランダム性を逆に積極的に活かし、人工物メトリクスというセキュリティ応用に発展させました。作製したランダムパターンに対して、複製の困難さ(耐クローン性)や、読み取りの安定性などに関する評価などを行った結果、本技術が個体認証に活用できると判断しました。

【ナノ人工物メトリクスの特長】

  • 線幅10ナノメートル以下の微細な構造を有しており、最先端の微細加工製造プロセスに起因するランダム性を用いているため、偽造が極めて困難(耐クローン性が高い)。
  • 極めて微細なパターンをシリコン基板のウェハー上に多数形成でき、大量製造による低コスト化が見込める。
  • ホログラムなどの既存のセキュリティデバイスへの組み込みが可能。

【各者の役割】

横浜国立大学大学院

セキュリティ性の理論と定量化

NICT

ナノフォトニック技術のセキュリティ応用の検討

東京大学大学院

全体のとりまとめとナノフォトニック技術の基本理論及び基本設計

DNP

サンプル試作と実用化の検討

【今後の展開】

今回、パターンの読み取りには、半導体開発などに用いられる測長走査電子顕微鏡CDSEM(Critical Dimension Scanning Electron Microscope)を使用しました。今後は、小型の読取装置および読取照合アルゴリズムについても開発を進め、クレジットカード、ブランドプロテクションなどの用途で3年後の実用化を目指します。


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