秀英体のコネタ

2008年12月08日

 

第26回 「未来見」で見つける新しいこと楽しいこと

 

実は、秀英体がロゴマークに使われました!

DNPが2008年7月からサービスを開始している「未来見/サキミ」という仕組みです。

未来見
未来見ってなんですか?

「Consumer Generated Media/CGM」という言葉をご存知でしょうか。

これは、一般の生活者が内容を作り上げていくメディアのことだそうです。インターネットの登場によって、ごく普通の人でも、自由な意見を発信することができるようになりました。最近では何かを買うときは、まずインターネットでクチコミを調べる、という行動も一般的です。

今までになかった伸びやかさで、その商品やサービスを批評しているメディアなだけに、企業にとっては貴重なユーザーの声を聞くことのできる場でもあります。しかし一方で、あまりにもたくさんの人たちが発信しているため、すべてのクチコミに目を通すことは、現実的には難しいという課題があります。

どうやら未来見は、そのあたりの課題を解決するサービスのようなのですが、具体的にどんなサービスなのか、とても気になってきました。

そこで、今回の秀英体のコネタは、不思議な名前のサービス「未来見」について、開発者である大日本印刷株式会社 情報コミュニケーション研究開発センター ユビキタスメディア研究所の森本光昭さんに聞きにいってみました。

「未来見」とは?

――今回、「未来見」のロゴに秀英体を使っていただきました。ありがとうございます!

森本:このロゴに決めるまでには、実は、様々な書体でデザインを試みました。中でも、秀英体をベースにしたこのロゴデザインは、古風な書体と斬新さが混ざりあい、プロジェクトメンバーが全員一致で「コレ!」ということで決定しました(笑)。通常使うロゴと、あとは狭いところに載せるマークもあります。

未来見ロゴ
左が通常で右がコンパクトサイズ。どちらも秀英体です。

――「未来見」という変わった名前のサービスですが。

森本:簡単に言うと、クチコミの文章を分析して、わかりやすく「見える化」(可視化)するサービスです。ちょっと先にどんな商品やサービスが盛り上がるか、生活者の声を分析することで「未来を見せる」ことができるサービス、ということで「未来見」と命名しました。

――既に集英社「MORE」のWEBサイトで利用されていますね。

モアハピ部
「モアハピ部」の気になるキーワード。女子100人分の気になることが凝縮。

森本:MOREの読者が100人集まった「モアハピ部」のメンバーが、それぞれブログを書いているんですが、彼女たちの文章から、重要なキーワードを拾っています。さらに重要度がわかりやすいように、文字サイズや色の濃淡で表現しているわけです。

――わたしが聞いたことのないキーワードも大きく表示されているから、単純に使用頻度で決めているわけではないんですね。

森本:使用頻度だけ取ると、「わたし」や「今日」などの、一般的な名詞が上位に来てしまうんです。

――あっ! それじゃあダメだ!

森本:知りたいのは「今なにがモアハピ部で盛り上がっているか」なので。

――一方で、流行している言葉ばかりが並んでいるわけでもなく、個性が見えるのがおもしろいですね。冬に向けてのキーワードの一方で、何気なく「祖母」とか出ていると、ちょっと見てみたくなります。

森本:モアハピ部の入り口にキーワードという新しい切り口を作ることで、興味を持つきっかけになると思います。

――ちなみに、編集部では、どのような使い方をしているんですか?

森本:鋭い質問ですね! これまで編集部の情報収集は、街中やお店へ足を運んでの地道な取材作業が一般的でした。情報の臨場感などはもちろん取材に分があるんですが、併せて未来見を使うことで「Webを使ってクチコミの収集が出来る点や、キーワードのチェックで次の企画へのヒントが得られる」など、今までにない新しい価値を感じていただいています。

――実際に使える機能としてはどんなものがあるんですか?

森本:未来見の主な機能は大きく分けて4種類あり、お客様に必要な機能を組み合わせで使っていただけます。モアハピ部で使用されているように、盛り上がっているキーワードを見つけてくる「重要語抽出機能」、あとは対象が単語ではなく文章やある程度の文節とした「重要文抽出機能」。そして重要度にプラスして頻度も考慮にいれた「ランキング機能」。ちなみにランキングでは、同じ意味だけど違う表現をしている言葉、たとえば「二酸化炭素」「CO2」を同じ内容として集計できます。

――確かに、そういう言い回しは人によって違いますね。出版物なら言い回しを統一しますが、個人ブログなどではそんなことはできないですものね。

森本:また、それらとは別に「感想集計機能」というものもあります。

――ん? 感想だけ?

森本:そうです。たとえば、秀英体が新製品としてリリースされたとします。クチコミ情報の中から、きちんと感想を述べている情報だけを抽出し、「かっこいい」と肯定的に受け止めた割合がどれくらいなのか、あるいは逆なのか、製品の印象を集計し、グラフで割合がわかるようにします。

感想抽出機能
あくまで例です。こういう感じでたくさんのクチコミから評判をチェックできます。

――ユーザーアンケートを取ったりしなくとも、評判の傾向がぱっとわかるわけですね。これは便利そう!
でも、生活者が褒めたり批判したりする表現は、人それぞれですよね? そんな文章から感想だけ分析するなんてどうやっているんですか?

森本:ふふふふふ、ここはなかなか作るのが大変な機能なので、秘密です(笑)。感想を抽出するための独自のアルゴリズムを開発しまして、僕たちにとってはものすごく重要な部分です。

なぜDNPがクチコミ分析?

――そもそも、印刷会社がどうしてクチコミ分析? と思う人も多いのでは……。

森本:でも、そもそも広告やパンフレットを刷るということは、「お客様の販促情報づくりを担っている」と言い換えられますよね?

――なるほど!

森本:それに、紙やテレビなどの広告は、流す一方で、生活者からのリアクションが直接返ってくるわけではありません。でもインターネット上には、そのリアクションが毎日たくさん生み出されています。

――こんなに素直な反応が読み取れるメディアは、いまだかつてなかったですからね。

森本:そうそう。だから、製品を作った企業にとってクチコミはまさに巨大な宝の山なんです。とはいえ、あまり巨大すぎて、必要な情報がつかみにくい。そこでDNPは未来見のシステムを使って、宝の山に埋もれている原石を見つけてきれいに磨いたり、宝石の種類ごとに並べたりするお手伝いをしましょう、ということですね。

――紙に刷ることと、クチコミを分析することは、DNPにとっては地続きのお仕事というわけですね。

森本:あと、未来見でポイントなのは、分析の対象はブログだけじゃないんです。

――ブログだけじゃない、というと?

森本:ブログの分析を専門に行っている他社のサービスはいくつかあるんですが、未来見はブログだけというわけではなく、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)や掲示板、それにアンケートの結果など、とにかく誰かが書いたテキストデータなら、何でもござれです。たとえば、マイポイントで行ったエコ活動のアンケート結果は、事前にマイポイント会員から集めたデータを未来見で分析しています。

マイポイント eco・to・life
エコについてのアンケート結果を、ゲーム感覚で見える化しました。

――未来見は、ブログ分析システムではなく、あくまでクチコミ分析システムなわけですね。

森本:もともとDNPではずいぶん昔から自然言語処理の研究を行っていまして、未来見の開発もその延長線上に出来ました。だから、未来見はDNPで開発したオリジナルの言語処理ライブラリを使っています!

――おおおおおおおおおおおおおおおお!

森本:他社のすばらしい技術を導入して開発するシステムももちろん重要ですけれど、未来見は研究所らしくこつこつ作りました!

――秀英体もこつこつ作っています……。

森本:お互いにがんばりましょう!(笑)

新しいサービス「未来見」のこと、少しは伝わったでしょうか。新しいとはいえ、研究所の長年の研究から生まれたサービスだったんですね。

すっかり秀英体のことを忘れていましたが、ロゴで使用された秀英体は「秀英横太明朝 B」と「秀英初号明朝」です。

どちらも、現在取り組んでいる平成の大改刻のプロジェクトで開発をした新しい書体です。

未来見ロゴ
ベースは秀英横太明朝Bで、「サキミ」という振り仮名は秀英初号明朝です。

振り仮名に秀英初号というのが、渋いチョイスですね。

(2008.12.08 佐々木)

協力:集英社 MOREマイポイント