大阪府大阪市教育委員会

蓄積された学習履歴(スタディ・ログ)を見とり、
よりきめ細かい指導を実現
大阪市 3年間のスマートスクール事業の成果から

文部科学省と総務省の共同実証事業である「次世代学校支援モデル構築事業」「スマートスクール・プラットフォーム実証事業」(2017年度~2019年度)に参画し、学校現場での実証研究を進めている大阪府大阪市教育委員会様に、本事業の取組み内容及び成果についてお話を伺いました。

この記事のポイント

  • 学習系データと校務系データの連携・活用で、学習指導の質の向上を目指す
  • タブレットと紙で行うテスト結果をスタディ・ログとして一元管理し、指導に活用
  • 蓄積されたスタディ・ログの見とりから、早期に個別指導などの手当てが可能に

学習系データと校務系データの連携・活用で学習指導の質を向上

大阪市では、児童生徒、学校の教員および管理職、教育委員会それぞれにとって有益なデータ(エビデンス)の見える化を実現することを目的に、文部科学省と総務省の共同実証事業である「次世代学校支援モデル構築事業」「スマートスクール・プラットフォーム実証事業」(2017年度~2019年度)に参画し、学校現場での実証研究を進めています。

本事業では、学習系データと校務系データを連携・活用することで、学習指導の質の向上等に関するモデル事例の確立や、システムの標準化といった学校に新しい価値を提供することを目指しています。同市はその効果普及を図るため、学校のデータ活用に対する期待や要望について合計47校・111項目に及ぶヒアリングを行い、「学力・体力の向上」「安全・安心な学校」「学校経営を支援する教育施策の企画立案」の3テーマを設定。これまでの3年間で、100件以上のユースケースを蓄積するに至っています。

タブレットと紙で行うテスト結果を一元管理し、指導に活用

同市の中学校における実証では日本電気株式会社がプロジェクトマネージャーとなり、校務系システムはエデュコムの「C4Thマネージャー」、学習系システムは大日本印刷の「リアテンダント」を導入。両システムのデータ連携による実証を行っています。実証校では、日常的に行う確認テストをタブレットで取り組み、その結果と紙で実施する定期テストの結果を学習履歴(スタディ・ログ)として一元管理し、指導に活用しています。データに基づく、よりきめ細やかな個別指導や学級指導や、授業の振り返りが可能となったことから、「教員が教科横断的にコミュニケーションできるようになった」、「ひとりの生徒をさまざまな角度から見られるようになった」など、学校・学級運営に変化が出始めているといいます。

旭陽中学校 2学年・数学での取組み

こうした学校の1つ、大阪市立旭陽中学校では、2学年の数学において実証しています。タブレットを使って実施する「章末テスト」では、授業中に生徒が自己採点。教員が自作する「中間・期末テスト」は従来通りに紙で行い、教員がデジタル採点するかたちをとっています。

また、同校では章末テストの実施前に、タブレットを使って当該の章についてどのくらい理解しているかを質問する「理解度アンケート」を実施しています。生徒は「よくわかる」・「だいたいわかる」・「わからないことが多い」・「ほとんどわからない」の4択から回答。このデータを併せることで、章末テストの結果と、生徒が自身で感じている理解度との乖離を教員が把握することが可能になりました。「理解度アンケート」で生徒のつまずきを見取ることで、その章についてわからない生徒が多い学級を明らかにすることや、過去からの推移をみて「理解度アンケート」が下降している生徒の確認が可能になりました。

スタディ・ログから生徒の理解度を見返す効果

データに基づきどんな指導を行ったのかについて、同校の教員に伺ったところ、「一次関数の章について、常に『よくわかる』と答えていた生徒が、今学期の章末テストで『わからないことが多い』に変化していました。この生徒が気になり、章末テストの結果を改めて確認すると、【動点】の単元の問題を全て間違っており、苦手としていることがわかりました。そのため、基本的な解き方をアドバイスし、練習プリントで対策させたところ、定期テストでは正答し、合計点も上昇。生徒自身も『今回の定期テストではできたと思う』と嬉しそうに報告してくれました」との声も上がっています。

これまではデータの蓄積がなかったことから、過去を遡って生徒が何を苦手としているかを気づくことができませんでした。現在ではこの事例のように、蓄積されたスタディ・ログから生徒の理解度を見返すことで苦手範囲が明らかになり、早期に個別指導などの手当てが可能となっています。

採点や校務処理の時間が削減し、テスト結果の分析が進む

その他の効果としては、「デジタル採点は採点時間を短縮するとともに、単元や観点ごとの得点情報を校務システムに取り込むことができるため、個票の作成や成績処理に費やす時間を大幅に短縮できました」とし、空いた時間によって、これまで以上にテスト結果の分析が行えるようになったといいます。
「たとえば、正誤一覧から生徒個々の正誤情報や学級ごとの設問別正答率をすぐに確認できるため、どの問題を中心にテスト解説をするのかを検討するようになったこと。また、学級別の設問別正答率を確認し、数学科の教員間で、なぜこの問題の正答率が低いのか、生徒のつまずいたポイントを分析するようになりました」と効果を指摘しました。

今後の展開

本実証を推進されている、大阪市教育委員会事務局 学校経営管理センター 学校園ICTシニアアドバイザー 山本圭作氏は次のように話します。
「スタディ・ログを教員間で共有し、客観的な根拠に基づく指導を行うことで、教員間の引継ぎや若手教員の育成、保護者への説明の質の向上など、多くの成果が見られています。また集計された観点別の正答率や誤答情報などから、個々の生徒の弱みを把握し、復習問題を用いて個に応じた指導が可能となります。スタディ・ログに基づく指導は教員の働き方改革と合わせて一層期待されます。」

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