自社事例(京あそび)

重要文化財 杉本家住宅 杉本家にて京都の文化を知る

かつて「奈良屋」という屋号で呉服屋を営んだ当時の暮らしを現代に伝える貴重な建物として、重要文化財の登録を受けている杉本家住宅。こちらを会場に京の商家の暮らしと文化を知る体験プログラムが開催されました。

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重要文化財 杉本家住宅

杉本家住宅は、京都市街の中心部に所在する町家で、伝統的な京都の町家形式をよく示し、市内に現存する大規模な町家建築として高い歴史的価値を有し、2010年に国の重要文化財に指定されました。
その通常非公開の邸宅にて、杉本家の方に解説を受けながら伝統的な京の商家の文化を体験するプログラムを開催しました。

プログラム内容

プログラム1 旧商家での雛の節句を体感するプログラム「ひなを遊ぶ」

杉本家_ひな人形
杉本家に伝承されてきた雛人形

<開催日時>2018年3月11日(日)、12日(月)

<プログラム内容>
・杉本歌子さんによる解説と雛飾り鑑賞
・「手あぶり」・「和ろうそく」体感
・亀屋良長 店主による京菓子づくり実演
・邸内見学
・引千切とおうす賞味 映像作品鑑賞

亀屋良長店主 吉村良和氏による京菓子づくりの実演

梅の花がほころぶ季節とはいえ、まだまだ寒さが残る3月半ば、京町家 杉本家住宅にて、旧商家での雛の節句を体感するプログラムを開催しました。
一歩踏み入るとタイムスリップしたような気分を味わえる独特の趣きの中、女の子が生まれる度に増えていった雛人形を鑑賞しました。

杉本家9代目杉本秀太郎氏の三女としてこの家に生まれ育った杉本歌子さんの解説で、雛人形の由来や当時の生活に想いを馳せ、和ろうそくの明かりで杉本家所蔵の屏風や人形を鑑賞して、電灯では味わえなかった奥行きや影の存在に気づかされたり、手あぶりで暖を取る幸せを体感したりと、京町家で過ごす時間をゆったりと堪能していただきました。

後半は、京菓子の老舗 亀屋良長の店主 吉村良和氏による、京菓子づくりの実演を鑑賞していただきました。ねりきりの「桜」と、雛の節句にちなんだ京菓子「引千切(ひちぎり)」が目の前でできていく様に、参加者の皆さんも前のめりになって熱心に見入っておられました。間に挟まれる吉村氏のユーモアあふれるお話で、笑顔あふれる和やかなひとときとなりました。

邸宅を見学した後、製作過程を見学した引千切と、歌子さんがたてたおうす(お抹茶)をご賞味いただき、杉本家住宅で過ごす四季の暮らしをまとめた4K映像で、見学いただけない場所や季節の室礼(しつらい)を鑑賞していただきました。変化していく時間の中で「同じことが無事にできる」幸せを感じること、「変わらない場所」の安心感を与えられる場所であることを守っていきたいという歌子さんの言葉が、とても印象的なプログラムでした。

<参加者の声(アンケートより抜粋)>
◎杉本家の歴史や行事を歌子さん直々にしかも思いのこもったご解説で知ることができました。日々暮らしておられた記憶の中に貴重な歴史があり、それが参加者に伝わるようなプログラムだったと思います。(京都市在住 40代女性)
◎五感で物事を味わうことができた。(京都市内在住 30代男性)
◎杉本様の素晴らしい趣向と行き届いた説明に感動しました。ひな祭りがテーマでしたのでそこにめんめんと流れている女の歴史を感じました。(京都市内在住 70代女性)


※杉本 歌子(すぎもと うたこ)
公益財団法人奈良屋記念杉本家保存会 学芸部長。杉本家9代目杉本秀太郎の三女として生まれる。京都造形芸術大学非常勤講師。 杉本家住宅の維持管理、収蔵品の整理調査保存、防災管理、季節の室礼、展示を担当。

プログラム2 京商家の日常の食と着物から、暮らしの知恵を紐解く「京商家の日常の食と着物から、暮らしの知恵を紐解く」

展示された晴れ着と常着

<開催日時>2018年10月6日(土)

<プログラムの内容>
・10代目当主 杉本節子さんのご挨拶・お話
・杉本歌子さんによる解説と邸宅案内
・常着と晴れ着の展示鑑賞
・旧米蔵・おくどさん見学
・4K映像作品「未来(あす)への歩み」鑑賞
・杉本節子さんお手製の一汁一菜のご賞

”おだいどこ”と解説をする杉本節子さん

今回のプログラムは、「奈良屋」の屋号で京呉服商を営んだ杉本家の台所を支えた米蔵の修築完成記念として、京商家の日常の食と着物から、暮らしの知恵を紐解くことをテーマとしました。
はじめに、杉本家10代目当主杉本節子さんから、杉本家の歴史と当時の暮らしについてのお話がありました。多くの使用人を抱え、生活も支えた商家には、日々の暮らしの工夫が積み重ねられ記録された「歳中覚(さいちゅうおぼえ)」が受け継がれてきたことなどが紹介され、皆さん複製本を手に取りながら興味津々で見入っておられました。

続いて、歌子さんのご案内で、邸宅内を仏間、茶室、八畳の間の順に見学しました。昔、度々京都を襲った大火事の経験から地下に石室を備えた仏間であること、茶室にかけた短冊にある広隆寺の「牛祭」が奇祭といわれる所以など、興味深いお話とともに巡り、八畳の間では展示された晴れ着と常着を鑑賞。生地が透けるほど継ぎを当てて使い込まれた布や、上村松園の絵にも出てくる当時一般的だったお針箱、鮮やかな糸をかけて手作りされた指ぬきなど、つつましやかな生活の中にもひと手間、ひと工夫を惜しまない杉本家の人々の知恵が感じられる貴重な品々も並びました。

修築された旧米蔵内では、杉本家での四季の暮らしをまとめた特別映像を観賞、また、一汁一菜の準備が進むおくどさんもご見学いただき、なかなか見る機会のない常の日の「おだいどこ」の様子も味わっていただくことができました。

最後は節子さんお手製の一汁一菜。「歳中覚」にも夏の献立として記されている「茄子の泥亀煮」をご賞味いただきました。京都産プレミアム米のごはんはおかわりもでき、杉本家自家製の梅干しでお茶漬けにしたりとたっぷり堪能。食後には、テーマの「米」にちなんで、京菓子司 亀廣脇の落雁「俵」と種合わせ「赤とんぼ」をご用意しました。

奈良屋記念杉本家保存会 代表理事を務められる、節子さん、歌子さんのお母様 杉本千代子さんのご挨拶に始まり、節子さんのお料理、歌子さんのおもてなしと、アットホームな雰囲気の中にも特別感あふれるプログラムとなりました。

<参加者の声(アンケートより抜粋)>
◎いかに着物を大事にしていたかがわかり良かった。お食事も美味しくて!!説明も良かった。(名古屋市在住 70代女性)
◎京の昔の日常のくらし、食を知り得た。実際に住んでおられた方の話は興味深い。(大阪府在住 40代男性)
◎一汁一菜のお食事が期待以上の美味しさでした。祇園祭の時とは違った展示も拝見できて良かったです。(京都市内在住 50代男性)


※杉本 節子(すぎもと せつこ)
杉本家10代目当主。奈良屋記念杉本家保存会常務理事兼事務局長、料理研究家。京都府立京都和食文化研究センター客員教授。 著書に『NHKきょうの料理 京町家杉本家のおばんざいレシピ』(NHK出版)、『京町家杉本家の普段づかい』(PHP研究所)ほか多数。

プログラム3 京商家のハレの行事「婚礼行事に親しむ」

杉本家に嫁いだ女性たちの婚礼衣装・諸道具

<開催日時>2019年10月5日(土)

<プログラムの内容>
・杉本家9代目秀太郎氏の妻・杉本千代子さんのお話
・邸宅見学
・婚礼衣装・婚礼道具を解説付きで鑑賞
・千代子さんによるピアノ演奏
・水引細工製作体験

杉本家9代目秀太郎氏の妻・杉本千代子さんによるお話

かつて京都有数の大店 奈良屋として、京呉服商を営んできた杉本家の住宅は、古き良き京の生活文化を体現する空間そのものです。
今回は杉本家に嫁いだ女性たちの婚礼衣装・諸道具の展示やお話から京商家の婚礼行事に親しむことをテーマとしました。

まず初めに、杉本家9代目秀太郎氏の元に嫁ぎ60年近くとなる千代子さんから、代々杉本家に嫁いだ女性たちのお話や、婚礼にまつわるエピソード、お衣装、お道具などについてお話を伺いました。
婚礼で用いられた衣装は4枚あり、黒地の振り袖には松、赤地には竹、白地には梅と決まっていたのだそうです。そして、4枚目に身につけたものとして「牡丹に孔雀」の柄を刺繍で描き上げた打ち掛けがこの日、床の間に飾られていました。7代目夫人たつさんの名古屋のご両親が誂えたもので、光沢の綸子地に見事な孔雀の刺繍はひときわ目を引きます。
当時の婚礼は、夜に行なわれていたとのこと、室内の明かりに照らし出される絢爛豪華な婚礼衣装の数々は、花嫁の美しさをどれほど人々に印象づけたかしれません。
座敷正面には、千代子さんの婚礼時の打ち掛けが展示されていました。
婚礼にふさわしい、松の柄のおめでたい衣装です。
60年前と言えば、戦後の復興途上で豊かではなかった時代のこと、明治期ほど豪華ではないものの、両親がどれほどの思いを込めて準備してくれたのか、歳を重ねご自身も母となった今、分かるようになったという千代子さんの言葉が印象的でした。
娘に晴れやかな衣装を着せることで、色々な苦労をしながらも、嫁ぎ先の家を守っていってほしいとの願いが込められていたのでしょう。

続いて歌子さんの解説で、婚礼衣装の他に何代にも渡って用いられてきた「真綿の綿帽子」や、漆塗りの「長柄の銚子」、女紋が施された「おまん袱紗」など、現在ではなかなか見ることのできない興味深いお道具の数々を鑑賞しました。

また、杉本家には「教文記」という古文書が残っています。その中には「身も心も親からの大切な預かりものであり、身勝手なふるまいは慎むべき。」という記載があり、一節を歌子さんに読んでいただきました。
かつて奈良屋では、毎月朔日、上役が奉公人たちを集めてこれを読み聞かせ、お商売に関わることだけでなく、人となりも教えていたようです。

水引作家 森田先生の水引体験

次に洋間に移り、実は東京芸大卒の経歴をお持ちという千代子さんによるピアノ演奏を楽しみました。
曲目は、童謡からヴェートーベン、ショパンまでと多岐にわたり、「ふるさと」や「虫の声」の曲では、参加者の皆さんで楽しく歌い、昔懐かしさに思わず涙を浮かべる方も......。

最後に、水引作家で和工房包結主宰の森田江里子さんのご指導の元、結納や贈答にかかせない水引細工の製作を行いました。バラや菊、桜などを形作る中で手先の細かな作業があり、それぞれ苦心しながらも、和気あいあいとした雰囲気の中で皆さんしっかりと完成させることができました。

千代子さんはこの間も演奏を続けてくださり、お人柄が現れるような優しいピアノの音色をBGMに、ゆったりとした時間を感じるプログラムは締めくくられました。

<参加者の声(アンケートより抜粋)>
・生活の空間が文化財になることについて考えるきっかけをいただきました。(京都市内 30代女性)
・千代子さんのお話、歌子さんのお話、親のありがたさをあらためて感じ入りました。(京都市内 40代女性)
・家の方のお話を生で聞かせていただくことは貴重。演奏もすてきで、その後の体験プログラムもB.G.M.として、ほんとに優雅なひとときでした。(京都市内 40代女性)


※杉本 千代子(すぎもと ちよこ)
京都市伏見の造り酒屋 酒斎藤酒10代目三女として生まれる。杉本家9代目杉本秀太郎氏と結婚。奈良屋8代目(先代)が亡くなり、杉本家住宅保存の為夫9代目と共に財団設立に奔走する。1992年財団法人奈良屋記念杉本家保存会設立、理事に就任。2011年公益財団法人に移行。2015年代表理事に就任。

※森田 江里子(もりた えりこ)
水引作家。東京都出身。女子美術短期大学服飾科卒。日本書道専門学校卒。美術・日本文化への関心から水引にたどり着く。2007年、和工房 包結(https://mizuhiki-houyou.jp/)を設立。京都に拠点を移す。水引作家・講師として、京都を中心に水引の魅力を発信している。著書に「季節をむすぶかわいい水引」(ブティック社)がある。筆耕歴16年。未生流華道師範 日本文様検定2級 日本結び文化学会会員 NPO法人古都研究会監事

4K映像作品について

世界文化遺産「古都京都の文化財」に登録された社寺や城、華道や和歌などの芸道、京商家の暮らしの知恵など、長い歴史の営みの中で受け継がれてきた貴重な文化遺産の魅力を高精細な映像で紹介

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