食品、洗剤、トイレタリー、工業製品…、包装分野で急速に広がる「紙化」という決断【前編】

包装分野で注目を浴びる環境配慮素材についてレポートするコラム、前編になります。

“環境配慮”が企業価値に直結する時代

SDGsが2030年までの国際目標として国連サミットで採択されたのは、2015年9月のこと。すでに多くの企業が、それぞれの事業分野において持続可能な未来に貢献すべく、さまざまな取り組みを進めつつあります。

SDGs17の目標

さらに、2020年初頭に発生した新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響を受けて、アメリカの「グリーン・ニューディール」が再び注目され、欧州では「グリーンリカバリー・アライアンス」が発足するなど、アフターコロナの経済復興と環境施策を一体で進めるという考え方が世界的な潮流になっています。

ひとくちに環境配慮といってもさまざまな切り口がありますが、なかでも急務とされているのが、廃プラスチック問題の解決です。本来、プラスチックは、軽くて丈夫で密閉性も高く、製品の軽量化や食品ロスの削減に貢献してきた有用な素材です。しかし近年では、海洋プラスチックごみや地球温暖化への影響など、そのリスクの部分が指摘されるようになっています。

海岸の環境汚染イメージ

日本においても、2019年に政府が策定した「プラスチック資源循環戦略」で、基本原則となる「3R+Renewable」(※)やマイルストーンが定められるなど、官民一体となって解決に取り組む動きが加速しています。

  • 3R+Renewable=製品を作る際に使う資源の量や廃棄物を減らす「Reduce(リデュース)」、使用済み製品を繰り返し使う「Reuse(リユース)」、廃棄物等を原材料やエネルギー源として有効利用する「Recycle(リサイクル)」の頭文字をとった3Rに、再生資源を積極的に利用する「Renewable(リニューアブル)」を加えたもの。「プラスチック資源循環戦略」において、循環型社会を実現するキーワードとされています。

プラスチック資源循環戦略におけるロードマップ

同戦略では、「2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入 」など
「3R+Renewable」を推進する具体的なロードマップが示されている。


これを受け、プラスチックに関して具体的なアクションプランを設定する企業が数多く登場しています。そこで今、包装分野でプラスチックを代替する製品として注目を集めているのが、「紙容器」です。紙の原料となっている木は、使ってもまた育てることができる再生可能な原料であり、育つ時にCOを吸収するためカーボンニュートラル(※)が成り立ちます。最近では、環境保全に寄与する森林認証紙の活用も広がっており、包装分野における「紙化」の動きは、ひとつのトレンドとなりつつあります。

  • カーボンニュートラル=植物の成長過程における光合成による二酸化炭素の吸収量と、植物の焼却による二酸化炭素の排出量が相殺され、実際に大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えないとされる考え方。

紙容器イメージフォト

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