コロナ禍における Security & Safety
「AIや非接触認証技術が変える感染症拡大防止策」

コロナ禍に直面する現在、感染症を予防するために、衛生に対する意識がかつてないほど高まっています。ITやAIの技術を活用して感染症予防のニーズに応えるDNPのエキスパートに、最先端技術で実現できる対策についてなど話を伺いました。

DNP 大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 PFサービスセンター IoSTプラットフォーム本部 企画・販促部  部長 的田 博行

大日本印刷株式会社
情報イノベーション事業部 PFサービスセンター
IoSTプラットフォーム本部 企画・販促部 
部長 的田 博行 Hiroyuki Matoda

大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 PFサービスセンター セキュリティソリューション本部 システム企画開発部 部長 石橋 正教

大日本印刷株式会社
情報イノベーション事業部 PFサービスセンター
セキュリティソリューション本部 システム企画開発部
部長 石橋 正教 Masanori Ishibashi

  • 所属・肩書などは、2020年11月取材時のものです。

AIや非接触認証技術が変える感染症拡大防止策



AI技術を活用、正しい手の洗い方をガイドする「手洗いAIサービス」

──新型コロナウイルス対策として「職場でのクラスター発生」を防ぐためにさまざまな取り組みがなされていますが、ITを活用した感染症対策としてどのようなことができるのかを伺いたいと思います。

的田さんは映像解析とAIを組み合わせたソリューションを手がけているそうですが、以前と比べてお客さまの意識やニーズに変化はありましたか?

的田:
「衛生」そのものに対する意識が大きく変わったと強く感じます。

例えば製造工場の衛生を管理するというと、従来は生活者に安全・安心なものを届けることが第一でしたが、いまは「従業員を守る」ことも求められています。

従業員の感染リスクを低減し、安定した製品供給を実現することが企業としての評価につながりますので、基本的な衛生対策の徹底から見直そうとされる企業が多いと感じます。

──基本的な感染症対策の第一歩として、手洗いが注目されています。特に食品工場では手洗いは重要な工程ですね。

的田:
私の部署ではAIで正しい手洗いを支援するツールを開発しました。

手を洗う所にモニターと、手元を写すためのカメラを設置します。モニターの画面では厚生労働省が提唱する正しい手洗いの手順を表示し、正しい洗い方ができているかどうかをAIが判定します。

誤った洗い方をしていると、正しい方法の動画が表示され、リアルタイムで正しい手洗いの習得をガイドします。洗い方の順番や、手の平と甲、右手と左手の区別、手洗い推奨時間の計測も行っています。

正しい手洗いをAIがガイド

手洗いAIサービス
AI技術を活用し、正しい手洗いを習得することで感染症を防ぐ

──具体的な効果はいかほどでしょうか?

的田:60人以上に協力してもらい、社外の専門家に依頼してATP(※)の数を調べました。

  • ATP: すべての生物の細胞内に存在する化学物質。ATPが存在するということは、検査対象に細菌などの汚れが存在することを意味する。

手洗い前の数値は1万~2万くらいのものが、普通に手洗いをすると約3,000に減りますが、AIのガイドに従って正しい手洗いをすると1,500以下に減らすことができます。ATP1,500以下というのは、食品工場で要求される数値です。

また、手洗いの効果には個人差が出ますが、AIのガイドがあると、個人差が少なく効果の高い手洗いを行えるようになります。

DNPには食品のパッケージを作る部署があり、実際に内容物をパッケージに充填する工場を持つグループ会社もあります。このような会社では特に厳しい衛生管理が必要です。

工場へ入る前に粘着ローラーで全身のホコリを取り、手洗い、乾燥、アルコール消毒をするとゲートが開き、エアシャワーを浴びてやっと中へ入る……という流れが一般的ですが、工程管理が大変だという相談を受け、1年くらい前からAIを使った判定ができないかと検討していました。

手洗いAIサービスは、全工程の中から手洗いだけを切り出して、正しい洗い方の啓発に使っていただこうという観点でサービス化を行いました。

インタビュー風景  DNP  的田 部長

──システムを使用するということは、手洗いの記録も残りますね。

的田:例えば食品工場では「HACCP(ハサップ)」という衛生管理のガイドラインがあって、エビデンスを残すことが求められます。従来はポスターを貼って「この通りにやって下さい」と呼びかけ、実施したという記録を本人に記録させていたのですが、正しく手洗いができているかどうかまでは、わかりませんでした。

エビデンスを残すことも大切ですが、正しいプロセスに基づいて本当に衛生を守れているのかという点に関心が集まっています。

目的に応じたカスタマイズが可能、研修向けには楽しく学べる工夫を盛り込んでいる
研修で正しい手洗いを習得

──食品工場以外からもニーズはありますか?

的田:バックヤードに調理場を持つような外食産業や小売業界からのニーズが高いです。ほかには医療や福祉の施設では、スタッフだけでなく訪問客に正しい手洗いをしてもらうために使いたいというケースもあり、多くの業界から強い関心を持っていただいています。

日頃から、正しい手洗いを身につけるための1つの手段として、今後は学校などでも活用していただきたいですね。

──目的に応じたカスタマイズはできますか?

的田:はい、柔軟に対応できます。ご要望に応じて例えば洗い方の順番や時間を変えられますし、研修向けにはバイ菌が少しずつ消えていく絵を入れて楽しく学べるような工夫をすでに盛り込んでいます。



不特定多数が触れることへの抵抗感から採用が増えた「非接触認証」

──石橋さんは認証システムを扱っていらっしゃいますね。入退管理の認証にはカードや指をセンサーと接触させるものが多いですが、需要の変化はありましたか。

石橋:感染症の流行以降、「接触しないで認証したい」というご要望を多くいただきます。不特定多数の人が触るものに対する抵抗感は強くなったと思います。

われわれのチームでは、非接触で指紋を読み取って認証するソリューションを扱っています。コの字型の装置の間に手を通すと、光学式センサーで指紋パターンを読み取るというものです。

非接触指紋認証 使用イメージ

接触しないで認証できる「非接触指紋認証」

石橋:認証のスピードや読み取り精度も良好で、直接触れるタイプの認証システムと比べても、さほど変わりません。価格は高くなりますが、非接触式の指紋認証というのは世界的にも珍しい技術です。

──同じく非接触で認証ができるものとして、顔認証システムも扱っているそうですが、こちらはどのような環境に向いていますか?

石橋:大人数が同時に入ってくるようなウォークスルー環境に対応できることが最大の特長です。IDカードをかざしてゲートを通るようなフラッパーゲートから置き換えるケースが多いですね。

顔認証の採用が増えた理由としては、非接触というだけでなく、スマートフォンなどで顔認証が普及し、心理的なハードルが下がったこと、近頃はマスクを着用している場合が多くなり、その場合の精度は少し下がるものの、認証の性能が非常に上がったことなどが挙げられます。

──顔認証の速度はどれくらいですか。

石橋:製品ごとの性能もありますが、システムで採用するサーバーの能力などによっても、処理速度は大きく変わりますので、ヒアリングしながら求められる性能要件を考えてご提案しています。

──入室時に体温を測るケースも増えてきましたが、入り口で1人ずつ計温測するのは大変です。

石橋:入退管理を提案する中で、発熱している方をチェックしたいという要望もたくさんいただきましたので、ウォークスルーで同時に約30人の体温を測れるサーモカメラの扱いを始めました。

──サーモカメラと顔認証を同時に使用することはできますか?

石橋:それぞれ専用のカメラが必要になりますが、1カ所に設置することは可能です。
ただしサーモカメラは測温するだけですので、指認証や顔認証には本人の生体情報を事前に登録する必要があります。

インタビュー風景 DNP  石橋 部長



「セキュリティ強化」や「出退勤管理」にも応用可能

──感染症が収束すれば、衛生に対する意識も変化すると思いますか?

的田:お客さまの衛生に対する意識は今回の新型コロナウイルスをきっかけにとても高まり、今後下がることはないように思います。新型コロナやインフルエンザのウイルスはアルコール消毒で対処できますが、ノロウイルスには効かないので、正しい手洗いが重要です。

食品・薬品・化粧品といった業界は、すでにそういったところまで見通して真剣に取り組みを始めています。いま実現できているのは手洗いだけですが、その先のニーズにも対応できるように、衛生管理全体を一括で実施できるシステムを現在開発中です。

例えば石橋さんのチームの顔認証システムを組み合わせれば、出退勤のエビデンスを残すことができ、トータルなソリューションを構築できるようになるでしょう。

石橋:サーモカメラの導入では、恒常的な入退室システムの一環としてご要望をいただいています。

いまは暫定的に人が立って対応しているところもあると思いますが、恒常的に検温を行うのであれば、システムの導入を検討せざるを得ないでしょう。

また、いまは扱っていませんが、人の密集度を判断するシステムのお問い合わせをいただくことがあります。
感染症全般への対策として、大人数を同時に検知するソリューションは恒常的に求められていくように思います。

──衛生意識が「物理的なセキュリティ」や、さらには「働き方全般」にまで影響を与えそうですね。

石橋:手洗いAIも、ウォークスルー対応の顔認証システムやサーモカメラもそうですが、今日ご紹介したソリューションは、人々の日々の自然な動作の中でセキュリティを担保できることが特長です。

われわれの事業の軸の1つがIDカードなのですが、IDカードを使う場面は非常に多くあるので、積んできた経験やノウハウにも自信があります。特定の技術やソリューションを売ることではなく、培ってきた経験やノウハウを新しい技術と組み合わせながら、お客さまに最適なご提案をしていくことが、われわれのミッションです。



■関連ソリューション

【手洗いAIサービス】
感染症予防の第一歩は「正しい手洗い」。しかし、スタッフや来客の全員が正しい手洗いを実行しているか、把握するのは困難です。そこでこのサービスでは、正しい手洗いをAIが動画でリアルタイムにガイドして結果を評価。学校や医療施設など、施設に応じたカスタマイズも可能です。
詳しくはこちらをご覧ください。

【非接触指紋認証システム】
世界的にも導入が始まったばかりの、光学式センサーで指紋パターンを読み取る非接触認証システム。接触式とほぼ同等のスピードで指紋認証を行います。感染症予防や、他の人と同じセンサーを触ることへの抵抗感にも対応しています。詳しくはお問い合わせください。

【顔認証システム】
毎日多くのスタッフや来客が通る「フラッパーゲート」は、IDカードを使用したセキュリティ管理が主流です。しかし、スマートフォンでもおなじみの顔認証であれば、ウォークスルー環境での認証が可能。詳しくはお問い合わせください。

【サーモカメラ測温システム】
「入館者の体温チェックで入り口が混雑」「1人ずつ対応するので業務量や人件費が増大」といった課題に対応する検温システム。ウォークスルーで同時に30人の体温を測れます。顔認証システムと組み合わせれば、認証セキュリティと衛生管理を同じウォークスルー環境で実現できます。詳しくはお問い合わせください。

【抗菌・抗ウイルスカード】
抗菌と抗ウイルスの性能を兼ね備えた「非接触ICカード」です。DNPが国内で初めて開発し、電子マネー、社員証や入館証などに向けて、2020年10月から提供を開始しました。
詳しくはこちらをご覧ください。



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