在留資格の新設による受入の煩雑化
技能実習生や特定技能外国人が安心して活動するために

外国人が日本で働くためには、働くことを認める在留資格(就労ビザ)を取得しなければなりません。資格以外の在留資格で就労した場合は「不法就労」として罰せられます。また、外国人を雇用する事業者は資格にあった人材を雇用しなければならず、違反した場合は雇用者も罰則の対象となります。不法就労助長の罪に問われてしまった事業者は、顧客・社会からの信頼を失墜しかねないため、外国人雇用時は注意する必要があります。

在留資格とビザ(査証)の違い

「在留資格」は、日本に在留中の外国人が一定の活動を行うことができる法的な資格で「外国人が日本で在留するために必要な許可」のことです。
法務省入国管理局が取り扱っており、2020年9月現在、29種類の在留資格があります。
「ビザ(査証)」は、諸外国に置かれている日本領事館などの審査の結果、発給する「その外国人が日本に入国することは支障ないと判断されたことを証明する書類」のことを言います。

外国人が日本で就労する場合、在留資格による制限があり2種類に分かれます。職業に制限がなく様々な仕事に就ける在留資格は、「身分又は地位に基づく在留資格者」で、下記4つのうちいずれかの在留資格を取得している外国人となります。

身分又は地位に基づく在留資格者
1)永住者
2)日本人の配偶者
3)永住者の家族
4)日系外国人など

これら以外の在留資格は「在留資格で許可された範囲内での就労が可能」もしくは「就労不可」となり自由に就労することは認められず仕事をした場合には不法就労として罰せられます。罰則は外国人だけでなく雇用主にも課せられることがあります

参考:法務省 出入国在留管理庁 在留資格一覧表
http://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/qaq5.html

在留資格別外国人労働者の割合

日本に滞在する外国人労働者を在留資格別で割合の多い順から見ると、下記となります。

1)永住者、日本人の配偶者などの身分又は地位に基づく在留資格
2)日本で技術や技能を習得するための技能実習
3)週28時間以内の労働の許可を受けた留学生などの資格外活動
4)あらゆる分野において技術や知識を持っているシステムエンジニア、通訳、デザイナーなどの専門的・技術的分野の在留資格
5)その他インターンシップやワーキング・ホリデーなどの特定活動

下記のグラフから、技能実習生の数が決して少なくないことが分かります。

在留資格別外国人労働者の割合、専門的・技術的分野の在留資格、329,034人、19.8%、うち技術・人文知識・国際業務60,556人、特定活動、41,075人、2.5%、技能実習、383,978人、23.1%、資格外活動、372,894人、23%、うち留学、318,278人、身分に基づく在留資格、531,781人、32.1%、うち永住者、308,419人、うち定住者、114,453人

「在留資格別外国人労働者の割合」のグラフ


在留外国人、外国人労働者、技能実習生

少子高齢化や特定の産業分野では深刻な人手不足が加速しており、その対策の一環として外国人の人材や労働力を受け入れやすくするため「技能実習」や「特定技能」といった在留資格を設定し、事業の活性化を図っています。

技能実習制度の趣旨

技能実習制度は、我が国で開発され培われた技能や技術又は知識を開発途上国等への移転を図り経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とした制度です。

「技能実習の適正な実施」、「技能実習生の保護」を図り「人材育成を通じた国際協力」を推進することと規定されており、「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」ことを基本理念としています。
なお、技能実習生は労働者として、日本人労働者と同様に労働関係法令の適用を受け、保護されています。

技能実習制度に関わる機関

技能実習制度に関わる機関は下記のとおりです。

名称 役割
外国人技能実習機構 技能実習制度全体の監理・監督、監理団体の認定、実習生の保護など
監理団体 技能実習生受入手続き、実習実施者および実習生の監理・監督など
送出機関 技能実習生の募集、監理団体への取次ぎや送出の準備をする現地の機関
実習実施者 技能実習生受入事業者

技能実習制度において、実習実施者が実際に実習生を受け入れる際に関わるのが「監理団体」です。
以下ではこの制度の主役である「技能実習生」と、技能実習生・実習実施者間を仲介する「監理団体」について、詳しくご説明します。

技能実習生は...

技能実習生は前述の通り労働力不足を補う手段としての人材ではありません。「技能実習」という在留資格のもと技能の習得に専念し、本国への技能・技術等の移転に努めることを目的としています。実習形態は企業単独型技能実習と団体監理型技能実習の2つに分けられます。
企業単独型技能実習とは、実習実施者の外国にある事業所など一定の事業上の関係を有する機関から技能実習生を受け入れて技能実習を行う方式です。
団体監理型技能実習とは、営利を目的としない監理団体が実習実施者に対して指導・監督をしながら、技能実習を行う方式です。
技能実習生を受け入れるには複雑な手続きや監督・監理業務が伴うため、約97%の企業が団体監理型技能実習を利用しています。

技能実習生は良好な技能実習の終了や検定試験などにより1号から3号までの資格が取得でき、最長5年までの在留資格を得ることができます。
実習生を受け入れる実習実施者も実習生を適正に管理・育成することで、5年間の人材の確保が可能となります。

監理団体とは

監理団体とは外国人技能実習制度において監理事業を行う非営利団体のことです。
日本の企業から委託され、現地送出機関との交渉や実習希望者の面接、技能実習生の受入れから入国後の教育や講習、実習実施者(実習先の受入企業)の実習が適正に実施されているかなどの監督・監理を行います。監理事業を行おうとする監理団体は、主務大臣の許可を受けなければならず、監理団体として満たさなければならない要件が技能実習法およびその関連法令で規定されています。その基準を満たさなくなった場合には、監理事業の全部又は一部の停止や、監理事業の許可の取消しとなるため、常に法令等の基準を満たして監理事業を適正に行う必要があります。
ex)商工会議所、商工会、中小企業団体、職業訓練法人、農業協同組合、漁業協同組合、公益社団法人または公益財団法人などの非営利団体

課題①監理団体の外国人スタッフ雇用のリスク

監理団体は技能実習まわりの監理という性質上、外国人の方とのやり取りが多いため、外国人のスタッフを雇うこともあります。そこでリスクとなりうるのが内部スタッフの不法就労です。

監理団体、監理団体職員、監理団体スタッフ、登録支援機関職員、登録支援機関スタッフ

通訳として雇用したものの、申告されていた資格と実際の資格が異なっていたり有効期限が切れていたりする、というケースがある模様です。本人確認を怠ると意図せず不法就労の助長に繋がってしまう可能性があり、信頼が失墜することにもなりかねません。このような問題を起こさないためにも、雇用時の厳格な本人確認が必要です。

新しい在留資格:特定技能

2019年に新設された特定技能とは

日本において、特定の産業分野や中小・小規模事業者など深刻な人手不足の状況に対応するため、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れやすくするために2019年4月に新設された制度です。

  • 来日する外国人では、既に技能実習2号を良好に終了した者又は国外の試験で技能・日本語に合格した者が対象
  • 国内に在留中で技能実習2号を良好に終了した者又は留学生で技能・日本語試験に合格した者が対象
特定技能外国人

「特定技能」は特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
※ 在留資格「特定技能」には、特定技能1号と特定技能2号があり、特定技能1号は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格。特定技能2号は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格となります。

特定技能1号のポイント
・在留期間:1年、6か月又は4か月ごとの更新,通算で上限5年まで
・技能水準:試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した者は試験等免除)
・日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した者は試験等免除)
・家族の帯同:基本的に認められない
・受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象

特定技能1号で就労できる特定産業の業種は以下の通りです。
農業、漁業、建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、介護、ビルクリーニング、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電子・電気機器関連産業の計14業種。

特定技能2号のポイント
・在留期間:3年、1年又は6か月ごとの更新
・技能水準:試験等で確認
・日本語能力水準:試験等での確認は不要
・家族の帯同:要件を満たせば可能(配偶者、子)
・受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外

特定技能2号で就労できる特定産業の業種は以下の通りです。
建設業、造船・舶用工業の2業種のみとなります。

特定技能1号の就労までの流れ、外国人の就労開始までの流れ、海外から来日する外国人、技能実習2号を良好に終了した外国人、試験(技能・日本語)は免除、新規入国予定の外国人、国外試験(技能・日本語)に合格、求人募集に直接申し込む/民間の職業紹介事業者による求職のあっせん、<技能試験>・特定産業分野の業務区分に対応する試験、<日本語試験>・国際交流基金日本語基礎テスト(国際交流基金)、又は・日本語能力試験(N4以上)(国際交流基金・日本国際教育支援協会)など、日本国内に在留している外国人(中長期在留者)、技能実習2号を良好に終了した外国人、試験(技能・日本語)は免除、留学生など、試験(技能・日本語)に合格、求人募集に直接申し込む/ハローワーク・民間の職業紹介事業者による求職のあっせん、【受入れ機関と雇用契約の締結】、受入れ機関等が実施する事前ガイダンスや健康診断の受診、在留資格認定証明書交付申請、※受入れ機関の職員等による代理申請、審査、在留資格認定証明書交付、受入れ機関に在留資格認定証明書を送付、地方出入国在留許可管理局、在留資格変更許可申請、※本人申請が原則、審査、在留資格変更許可、在留カードの交付、査証申請、※受入れ機関等から送付された在留資格認定証明書を、在外公館へ提出、在外公館、審査、査証発給、入国、在留カードの交付、※後日交付の場合あり、〔入国後(又は在留資格の変更後)、遅滞なく実施すること〕、○受入れ機関等が実施する生活オリエンテーションの受講、○住居地の市区町村等で住民登録、○給与口座の開設、○住宅の確保、など、〔外国人本人の要件〕、○18歳以上であること、○技能試験および日本語試験に合格していること、(技能実習2号を良好に修了した外国人は免除)、○特定技能1号で通算5年以上在留していないこと、○保証金を徴収されていないこと又は違約金を定める契約を締結していないこと、○自らが負担する費用がある場合,内容を十分に理解していること、など、受入れ機関での就労開始

特定技能1号の就労までの流れ

特定技能1号の外国人は、受入れ機関(就労先企業)と登録支援機関のどちらかで、活動を保護されています。
受入れ機関は、「特定技能1号」の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する以下の支援計画を作成し支援を行わなくてはいけません。なお、これらの支援業務を登録支援機関に委託することもできます。

特定技能1号支援計画

①事前ガイダンス
②出入国する際の送迎
③住居確保・生活に必要な契約支援
④生活オリエンテーション
⑤公的手続等への同行

⑥日本語学習の機会の提供
⑦相談・苦情への対応
⑧日本人との交流促進
⑨転職支援(人員整理等の場合)
⑩定期的な面談・行政機関への通報


※特定技能2号になると①~⑩の支援はなくなります。

※受入れ機関および登録支援機関は、出入国在留管理庁長官に対し各種届出を随時又は定期に行わなければならず、受入れ機関による届出の不履行や虚偽の届出については罰則の対象とされています。

参考:法務省 出入国在留管理庁 特定技能制度
http://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri01_00127.html

特定技能の特徴である”転職可”

特定技能における、技能実習との大きな違いは「転職可能なこと」です。(技能実習2号から3号への移行の場合)
この転職の自由度の高さは在留外国人の方にとってのメリットとなるため、特定技能への変更をする技能実習生も少なくはありません。
在留資格新設による在留外国人の受け入れ機会が増えることに加え、就労の自由化により外国人就労者の入れ替わりが激しくなるのではないかと予想されます。受け入れ企業や登録支援機関の負担の増大も懸念されます。

課題②就労の自由化が抱える問題

取り上げた2つの在留資格は、国内では難しい産業人材の確保を外国人で補い受け入れるための政策としてますます進むでしょう。また、日本での就労を希望する外国人にも働きやすい環境が今後整備されて行くことになるかと思われます。
今後、コロナが収束し外国人の来日が通常化すれば仕事を求める外国人が急増します。監理団体や実習実施者が適正に稼働し技能実習生を正しく監理・監督することで円滑な制度の展開も可能となります。
現状としては、コロナ禍では実習先や事業主が倒産したり、事業縮小のために外国人が解雇されたりと、影響を受けている在留資格者が数多くいるようです。中には失踪してしまうケースや、在留資格を取れずに滞在してしまうケースも考えられます。
本人確認は、外国人の労働力に依存する事業者、それを監理・監督する団体が行う様々な課題解決策の中でも、重要な業務の一つです。労働者側も雇用者側も双方が安心して活動できるよう手段を講じることが必須となります。

技能実習・特定技能以外の就労ビザ

余談ですが、「技能実習」、「特定技能」という人材不足を補うための在留資格以外に、外国人留学生が大学などで習得した知識を活かし「技人国資格(技術・人文知識・国際業務ビザ)」というホワイトカラーの在留資格で日本での就労を希望する外国人が増えているようです。それぞれ専門分野で学習した知識で自由に就活し在留資格を申請しており、実際の事業内容が「技人国資格」に該当しないなどの理由で在留資格を取得できない状況などもあるとのことです。雇用する場合は採用が可能かどうかの確認を事前に取る必要があるようです。

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在留外国人と企業間の関係をサポートする立場にある監理団体と登録支援機関ですが、本人確認業務の負担を減らすことで、より効率的な活動ができるのではないでしょうか。
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補足情報

国籍別外国人労働者の割合


2019年10月時点の全外国人労働者数は165万人で国籍別に見ると中国、ベトナムだけで80万人を超えこの2ヵ国が半数を占めています。
ベトナムに至っては2020年10月で44万人を超え中国を抜いてトップとなっています。グラフからも分かるように開発途上の国や地域を含め約70%強がアジア地域の外国人で占めています。


国籍別外国人の割合、外国人労働者数1,658,804人、韓国69,191人…、フィリピン179,685人、11%、ベトナム401,326人、24%、ネパール91,770人、6%、インドネシア51,337人、3%、ブラジル135,455人、8%、ペルー29,554人、2%、G7/8+オーストラリア+ニュージーランド81,003人、5%

外国人技能実習機構とは


2018年に技能実習制度の見直しに伴い、新たに外国人技能実習機構が設立されました。技能実習計画の認定、実習実施者の届出の受理、監理団体の許可申請の受理等を始め、実習実施者や監理団体に対する指導監督(実地検査・報告徴収)や、技能実習生からの申告・相談に応じるなど、技能実習制度の適正な実施および技能実習生の保護に関する業務を担っています。

実習実施者とは


外国人技能実習生が技術や技能などを習得する農業・漁業、製造業、建設業などの特定の産業分野における中小・小規模事業者です。
実習実施者は外国人技能実習生の人材育成や教育、保護に努めなければならず、不当な扱いや人権侵害行為などは法令違反とし罰則が規定されています。

送出機関とは


送出機関は技能実習生の母国において、日本の監理団体に対して求職の申込みを取り次ぐか否かで、「外国の送出機関」と「外国の準備機関」の2つに分けられています。
「外国の送出機関」とは、技能実習生になろうとする者からの団体監理型技能実習に係る求職の申込みを日本の監理団体に取り次ぐ機関をいいます。
一方、「外国の準備機関」とは、技能実習生になろうとする者の外国における準備に関与する外国の機関をいいます。例えば、外国で技能実習生になろうとする者が所属していた会社や、技能実習生になろうとする者を広く対象とするような日本語学校を経営する法人、旅券や査証の取得代行手続を行う企業などが対象となります。

参考:法務省 出入国在留管理庁 技能実習制度 運用要領
http://www.moj.go.jp/isa/content/930005395.pdf

技能実習生の種類


技能実習1号
入国後1年間で技能などの習得が目標
技能実習2号
技能実習1号を良好に終了し技能検定に合格し申請が可能2年間で技能などの習熟が目標
技能実習3号
技能実習2号を良好に終了し、3級の技能検定又はこれに相当する技能実習評価試験の実技試験の合格後申請が可能。さらに2年間で技能などの熟達が目標


1号技能実習開始までの流れ(団体監理型技能実習の場合を例示)、赤字:技能実習法に基づく手続き、青字:入管法に基づく手続き、厚生労働省、出入国在留監理庁、外国人技能実習機構(本部)、外国人技能実習機構(地方事務所)、監理団体、技能実習者、技能実習生、計画認定結果の報告、①認定申請、②技能実習計画の審査・認定、③認定通知書の交付、④在留資格認定証明書の交付申請(認定通知書を添付)、⑤在留資格認定証明書の交付、在留資格認定証明書の送付

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