“金箔上への印刷”を実現し、文化財保存の新たな道を開拓した高精細複製「伝匠美®」の制作フロー

文化財を所有する社寺等では、自然災害や人災、紫外線の影響による「劣化への対策」と、貴重な文化財を広く外部へ伝える「公開性の担保」という相反する課題に直面しています。DNPの高精細複製「伝匠美®」は、こうした課題に応える画期的な文化財複製ソリューションで、多くの社寺でご採用いただいています。

本ソリューションの特徴のひとつが、これまでは難しかった“金箔上への印刷(特許取得済)”を可能とした点にあります。一般に、日本画の手法のひとつである金箔には、印刷インキが定着しないため、複製の際は、描画部分のみを印刷した後で周囲に金箔を貼り、その上から古色を手彩色する必要がありました。そこでDNPでは、精細な画像データを過不足なく印刷再現するべく、金箔上に直接印刷する技術を開発(特許取得)。金碧障壁画はもとより、精緻な戴金細工の再現も可能にしました。

本記事では、この「伝匠美®」の高精細複製を支える製作フローをご紹介します。

文化財のデジタルアーカイブソリューション_伝匠美_制作フロー

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伝匠美®制作フローのイメージ

文化財のデジタルアーカイブ_伝匠美_制作フロー

調査・基本設計

初めに、原本の状態や複製展示予定の建築空間などを、現地に伺って調査させていただきます。ここで、複製製作の目的を再確認し、監修者起用の必要性、撮像方法や印刷媒体(和紙、絹、板など)の適切性などについて協議を行ない、複製方式(「画像修整」項に説明)を設定します。
この協議を踏まえ、最適な製作工程や時間、費用の設計を行います。

文化財のデジタルアーカイブ_伝匠美_制作フロー_調査・基本設計

文化財のデジタルアーカイブ_伝匠美_制作フロー_調査・基本設計

撮像

原本を原寸で忠実に再現できる高精細画像データを取得できる方法としては、2種類あります。基本的には「スキャニング方式」で撮像しますが、原本のサイズが小さかったり、壁絵のように設置場所から移動が不可能な場合や複数のアングル・照明条件で画像データを残す必要がある場合などは、「デジタルカメラ方式」を使用します。

文化財のデジタルアーカイブ_伝匠美_制作フロー_撮像

スキャニング方式撮影

文化財のデジタルアーカイブ_伝匠美_制作フロー_撮像

デジタルカメラ方式撮影

画像修整

文化財のデジタルアーカイブ_伝匠美_制作フロー_画像調整

「調査・基本設計」で設定した複製方式を念頭に、適切な色相・濃淡・階調再現を行なうべく、高精細画像データを修整します。修整したポイントについては次項「印刷」初期の校正段階で監修者・所蔵家に確認を取ると同時に、修整ログを残して行きます。なお、複製方式は下記の3通りです。

◯現状再製
現状をそのまま再現することに徹するので、校正段階での微修整以外は行ないません。

◯標準再製
襖絵・屏風・複数の掛軸など、同じ画題であっても保存状態に乖離が大きい場合、最も保存状態の良好な部分を基準とし、その基準に合わせて他の作品群の画像を修整します。

◯復元再製
画法・顔料・基底材・美術史的背景などの分析に基づく監修者の指示に従い、作品が描かれた当初の状態を復元すべく画像を修整します。

印刷

まず原本と照合する校正のために印刷を行ないます。この際、展示予定の場所で原本と照合できることが望ましく、太陽光が入る環境の場合は時間帯や天候も考慮に入れた校正実施が望まれます。

和紙・金箔地・板材・絹本など基底材も多様です。設計段階で決められた基底材に適切な下地処理を行なった素材を、伝匠美®の基底材といたします。必要があれば、胡粉による盛り上げ画法の立体性表現なども行ないます。

文化財のデジタルアーカイブ_伝匠美_制作フロー_印刷

文化財のデジタルアーカイブ_伝匠美_制作フロー_印刷

表装

伝匠美®専用の和紙や金箔地に関して表装経験豊富な国宝修理装潢師(そうこうし)や伝統工芸士の技により、国宝・重文レベルの文化財仕様にて仕上げます。

文化財のデジタルアーカイブ_伝匠美_制作フロー_表装

完成

高精細複製「伝匠美®」によって複製されたものであることを示すため、完成物の外面に「伝匠美®」を明示した金属プレートを貼付しています。また、内面に端(みみ)を、折り返し部分にクレジット等の基本情報を印刷しています。

文化財のデジタルアーカイブ_伝匠美_制作フロー_製作クレジット

文化財のデジタルアーカイブ_伝匠美_制作フロー_製作クレジット

高精細複製「伝匠美®」を支える技術開発の歴史

ご紹介してきた高精細複製「伝匠美®」製作フローは、DNPが15年余にわたり取り組んできた技術開発の集大成でもあります。

例えば、最も基本的な基底材である和紙は、メーカーと共同して専用和紙を開発。和紙としての耐久性を担保しつつ、印刷適性の高さを追及しました。併せて、天井画に使用する板材の開発や絹本複製における最適な基底材の検討も手掛けています。また、本ソリューションの特色でもある金箔上への印刷に関しては、さまざまな検証・実験を重ねた結果、金箔上に描画部分や古色を直接印刷して再現する技術の開発も成功しました(特許取得済)。近年では、デジタル技術の進化に合わせ、撮像から印刷に至るプラットフォームの最適化も進めています。

貴重な文化財を後世に伝えるため、私たちDNPは、常に“当代最高の技術”を目指して挑戦を続けてきました。高度な印刷技術と豊富な実績で今なお進化を続けるDNPの高精細複製「伝匠美®」を、ぜひご活用ください。

  • *高精細複製「伝匠美®」の最新事例や詳細については、こちらをご覧ください。

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