出版ビジネスは紙ビジネスからブランドビジネスへ。
D2Cだからこそ消費者の反応がリアルにわかる。
パンフォーユーの「三方良し」に学ぶ
”D2Cビジネスとサブスクの価値”

地域の人気パン屋さんのDXを推進し、パン屋さんと全国の消費者を独自の冷凍技術とITでつなぐフードテックのスタートアップ「パンフォーユー」。メディア事業においても広告、ECだけでなく、サブスク、SaaS化、ブランドビジネスなどにも領域を広げていく必要があります。事業開発力が一層求められる中で、メディア経験も豊富で、出版社の方々にも応用できるサービスを展開している山口翔取締役にお話を伺いました。

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山口 翔氏(株式会社パンフォーユー 取締役) 1987年生まれ。兵庫県宝塚市出身。神戸大学工学部卒業後、新卒でマクロミル入社。法人営業、人事を経験。2015年グライダーアソシエイツへ転籍し、キュレーションメディアantenna* の広告事業を立ち上げ。その後上席執行役員CMOとして、antenna* の事業統括や新規事業craft. の立ち上げを担当。2018年よりパンフォーユーをPR・マーケティング面でサポートしており、2021年1月に取締役として正式加入。

DNPは従来の受注型ビジネスへの依存から脱却すべく、運用型モデルのサービスを提供し、出版市場の推移、生活者のメディア接触時間の推移から出版社がこれから取り組むべき、デジタルトランスフォーメーションを支援しています。
雑誌DX(デジタルトランスフォーメーション) 支援サービス

具体例として、ゴルフダイジェスト社との共創ビジネス「MYゴルフダイジェスト」を立ち上げました。
【ニュースリリース】AIが読者の好みを診断して最適な記事を抽出する会員制のサービスを開発

【目次】

パンフォーユー・山口 氏:前職はキュレーションサービス「antenna」の役員をしていて、ブランド広告のアドネットワークなどを作っていました。その関係もあり出版社様とは大手をはじめ付き合いがありましたが、DNP様がここまでやられていたのは存じ上げなかったです。印刷に特化してやっていると思っていたので、出版メディアのDX支援を集客、会員構築、ビジネスモデルまでやられていたことには正直びっくりしました。

――ありがとうございます。どういった経緯や思いで、全国のパン屋さんと消費者をつなぐ、プラットフォームを構築したのでしょうか?

パンフォーユー・山口 氏:パンフォーユーは、独自の冷凍技術とITの力を使って、全国のパン屋さんとオフィス・百貨店・ご自宅などの消費者をつなぎ、パンを「作る人」「売る人」「食べる人」三方良しのプラットフォームサービスを提供している会社です。

現在のパンフォーユーに至るまではいろんな経緯がありますが、代表の矢野健太は群馬県桐生市の出身で、企業ビジョンとして「魅力ある仕事を地方に」を掲げており、「どんどん地方にいい事業を生み出していきたい、雇用を生み出していきたい」という思いが前提にありました。

そこで「地方にどうやっていい仕事を生み出したらいいか」と考えたとき、その選択肢の一つがパンでした。ここ数年日本では高級食パンブームと言われており、こだわりが詰まった美味しいものには相応の対価を払うというようなトレンドができていると気づきました。

一方で、例えば群馬県では同じクオリティのパンが半額以下で販売されており、都市と地方でのパンの販売価格の差にビジネスチャンスがあるのでは、と思ったのがパンを事業にした理由の1つです。

しかし、通常のビニール袋でパンを保存すると、時間が経つにつれて水分が抜けてパサパサになってしまい味が劣化するという課題に直面しました。「どうにかして、このおいしいパンを流通できないか」と悩んだときに見つけたのが現在国際特許申請中のパンフォーユー独自の冷凍技術です。独自開発なので、冷凍技術の開発秘話などよくご質問いただくのですが、何年もの歳月をかけて開発したわけではなく、偶然見つけて「こうやって冷凍すれば美味しいパンを届けられるんじゃない?」と思い、使用してみたところそれが最適な方法だったと後から判明したのです。

サブスク取り入れる上で、意識したこと

――サブスクを取り入れたのにも何か理由があるのですか?

パンフォーユー・山口 氏:ビジネスモデルの話でいうと、パンフォーユーではサブスクを提供していますが、サブスクの形態にもとても拘っていています。サブスクの形態でパンを楽しんでもらおうと思っていますが、もう一つの側面として、パン屋さんに対して安定的に売り上げを供給できるからという部分も大きいです。

パン屋さんがEC販売を始める場合、しっかりオペレーション構築しても、無数にあるECショップの中で認知を取ることは難しく、1円も売れません、みたいなことも結構あるそうです。しかし、サブスクだと一定の利用者を見込むことができるので、パン屋さんも安心してパンフォーユーと提携していただくことができると思います。

僕個人としては、パンフォーユーの独自の技術とITの力で、パン屋さんとできるあらゆるビジネスを行なっていることに魅力を感じましたね。これまでantenna* では、編集者やライターさんなどが作る、出版コンテンツにデジタル化に携わってきました。パンフォーユーに入っても、その相手がパン屋さんに変わっただけで、プラットフォーマーという立ち位置でデジタル化を進める、というのは共通すると考えています。

DXを進める上で意識したこと

―― パンフォーユーではパン屋さんとの関係を大事にしているとのことで、それがあって多くのパン屋さんが参加しているのだと思います。パン屋さんのネットワークを広げるために、どのような取り組みをされているんですか。

パンフォーユー・山口 氏:2021年1月に、ベーカリーコミュニケーション室を立ち上げました。すでに提携しているパン屋さんとのコミュニケーションはもちろんのこと、パンフォーユーに関心をもっていただきお問い合わせくださったパン屋さんと向き合い、しっかりコミュニケーションを取ることを目的としています。

パンフォーユーは若い会社ということもあり、パン屋さんにはまだまだ知られていません。そのため、パンフォーユーについてや冷凍パンについてを説明しご納得いただいた上で、提携に至ります。その際は、DXというワードは使わず「一緒に美味しいパンを全国に届けましょう」とお話ししています。

――その話を聞くと出版社の方々を口説くのと近いように思いますね。DNPでは営業部門、事業企画部門で、元々は泥臭い営業の要素が強いです。我々もスマートになりすぎていたのではないかと反省しますね。出版社さんでいうと、まだまだ紙という方も多いので、雑誌DXとお伝えしても反応が薄いこともあります。その言葉のチョイスは是非各営業部隊に伝えたいです。

パンフォーユー・山口 氏:大事なことですが、パン業界のDXと言っているのは投資家向けだったりで、パン屋さんに対しては基本的にはお話したことはないです。

もちろんパンフォーユーとしてパン業界のDX化を推進したいと考えていますが、決して今の業態をガラッと変えましょう!と言っているわけではなく、”パンを買う”という行動が店頭やECなど多様化しつつあるため、こういうこともやってみませんか、というあくまでご提案だと考えています。

先日、「パンスク」提携パン屋さんに満足度アンケートを取ったところ、なんと100%で、大変満足していると言ってくださっています。ビジネスに関わらず何でもそうだと思いますが、新しいことへは抵抗があると思いますが、一歩踏み出していただけると嬉しいですね。

――パンはよりデジタルに遠いイメージなので、すごい不安を感じる人たちは多かったんだろうな、と想像できます。そういった意味では出版業界と近いものを感じます。出版社様でいうと、紙なくなったら仕事どうしよう、みたいなことをいう人が社内にも結構います。

デジタル化して、紙から派生したもので新しい読者さんをつかまえて、紙に戻すみたいなものが理想だと思っています。ゴルフダイジェストさんでいうと、そもそも読んでいなかった人たちをWEBで会員化して、読者にしていく。それがやっていきたいことでもあり、パンフォーユー様と共通していることが多いな、と本当に感じています。

パンフォーユー・山口 氏:ゴルフダイジェストさんの話も面白いと思いました。ビジネスの真ん中にブランドがあり、その周りに紙媒体、WEB、といった形でビジネスが生まれ出している。出版ビジネスは紙ビジネスからブランドビジネスに変わってきているのではないでしょうか。

ゴルフダイジェストさんというブランド力があってこそ、雑誌もWEBも有機的に動くのだと思います。今後、ブランド力を保ち続けていくために、どういう取組みをされていくのか気になります。おそらくその戦略は出版ビジネスとは違うと思いますので。

ブランドビジネスとは?

――ブランドの維持でいえば、我々の取り組みとしては取り組めていない状況です。今はゴルフダイジェストに通じて、例えばゴルフという共通の趣味、読者でない人たち、ゴルフ好きの人たちにそういったビジネスを提供している段階で、ファンを喜ばせる状況です。ブランド自体、ブランドに集まる人に提供価値としてはまだまだ弱いですね。

しかし、そういうところが大事だとは思っています。特に女性誌はブランドがあるので、展開していく場合、ブランドは重要に感じています。

パンフォーユー・山口 氏
:例えば、ゴルフダイジェストというブランドに触れ続けることで、ゴルフが上手くなるだけではなく、人脈も広がるなどたくさんの付加価値があり、より人生が充実する。というような世界観やブランド体験を提供すると定義すると、ブレイクダウンしやすくなるかもしれません。

ゴルフダイジェストさんには、たくさんの競合もいるので、ゴルフダイジェスト自身のビジョンはとっても大事ですよね。

私たちでいえば、「パンスク」ではパンを売るのではなく、パン屋さんとの出会いを楽しんでもらう体験を提供していると定義しています。なので、試行錯誤しながらも、ブランド体験を大切にしています。

――私たちもどう読書を体験してもらうのか、試行錯誤しております 。本屋さんで本を買ってもらうだけでなく、どのように読書を体験してもらうか、という こと を実証実験している取り組みもあり、非常に注目している領域です。

関連ソリューション

DNPでは雑誌メディアの新たな可能性として「マッチング広告」や「タイアップ広告」「運用型広告」など出版社のウェブメディアの収益性向上、「読者起点の会員制デジタルサービスの構築」の支援を軸に、出版社のコンテンツを活かした多様なコミュニケーション体験を企業や生活者に提供しています。

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「出版社のウェブメディアの運用型広告の支援」「マッチング広告・タイアップ広告の推進」「読者起点の会員制デジタルサービスの構築」を軸に、出版社のコンテンツを活かして、多様なコミュニケーション体験を企業や生活者に提供します。新たな収益モデルの企画立案・設計・制作・運営等のトータルサポートを行い、出版社の収益拡大を支援するとともに、出版社と連携した共創ビジネスを推進していきます。 そこで、今回ご紹介するコラムでは出版社の方々に有益な情報提供をすべく、新しい事業モデルを構築し出版のDXを推進するために立ち上がったKODANSHAtech合同会社ゼネラルマネージャーの長尾 洋一郎氏にお話しを伺いました。

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