【第6回】雑誌のWebメディア化における収益化

過去5回にわたってご紹介してきた雑誌のWebメディア化についてのコラムも今回が最終回です。 市場分析、STPの選定、サービスの設計とWebメディアを構築するまでの流れに沿ってご紹介してきました。 最終回の本コラムでは、Webメディア化における最も重要なポイントのひとつであるマネタイズについてご紹介します。どんなに、緻密な市場分析、最適なSTP、ニーズにあったサービス設計ができても、収益が得られなければ事業を継続することはできません。本コラムを通じて、雑誌メディアのWebメディア事業における3つのマネタイズ方法について検討してみましょう。

【目次】

Webメディア化のマネタイズとは?

雑誌のWebメディア化のマネタイズとは、Web上でのサービスを通じて収益を得ることを指します。
紙雑誌のみで収益化を図ることができた頃は、新刊発売のリリースなど、紙を補完するメディアとしてWebメディアは収益を生まなくても成立していました。しかし、紙雑誌の衰退が進む昨今においては、Webメディア上での収益化というのは重要な要素です。媒体によっては、紙とWebの売上構成が逆転している事例もあります。

マネタイズに重要な3つの基本モデル

雑誌のWebメディア化においては、大きく3つのマネタイズ方法があります。
1つ目は広告モデルです。雑誌メディアにおいて、広告収入というのは紙という媒体の中でも大きなウェイトを占めています。Webメディアにおいては、運用型広告販売とタイアップ広告販売の2つのモデルがあります。
2つ目はECモデルです。雑誌ならでは強みを活かして、Webメディア上で読者に既製品や雑誌オリジナルの商品を直接販売することで売上拡大を図ります。
3つ目は直接課金モデルです。従来の取次を介しての収益化ではなく、読者に直接サービスを届けて対価をもらうモデルです。

それでは、各収益モデルの詳細についてみていきましょう。

3つの収益モデル

収益モデル

雑誌メディアの2つの特性を活かす「広告モデル」

第1回コラムでも数値でご紹介しましたが、雑誌に対する読者の信頼は高いといえます。

情報の信頼度が高い、媒体によってターゲットがセグメントされている、という雑誌メディアの特徴は、広告クライアントにとっても魅力的な強みといえます。
広告モデルは、以下の2つに分類されます。

運用型広告販売=Webページ上の広告枠を販売し、収益を得る。
タイアップ広告販売=企業とのタイアップ記事や企画を掲載し、収益を得る

運用型広告販売、タイアップ広告販売、どちらにおいても利用者数(=PV数)が収益化のポイントです。PV数が多いほど「たくさんの人に見られる、認知されるメディア」とみられ、広告媒体としての価値が高まります。
PVの“数”を増やすことによる収益拡大の他、雑誌ブランドの価値を訴求し広告枠の“質”を向上させることで、収益拡大を図る方法もあります。
DNPは、出版社や媒体社が運営する優良なメディアサイトの広告枠を広告取引市場へ提供し、媒体社の収益最大化を支援するサービスを提供しています。

2つの広告モデル

2つの広告モデル

コアなファンとの関係を高める「ECモデル」

ECモデルでは、雑誌のWebメディア上で商品を直接読者に販売するモデルです。ECサイトの成功には「魅力的な商品」と「より魅力的にみせるコンテンツ」が必要です。
ECサイトが商品の訴求力を高めるために、コンテンツを制作する事例もあります。ECサイトには商品力に強みがありますが、サイトや商品を認知させる発信力・コンテンツの作成に課題があります。一方の雑誌には、第2回コラムでも触れましたが【高いクオリティで継続的にコンテンツを制作する編集力】と【コアなファン】という強みがあります。この強みを活かしたコンテンツ制作により、商品やサイトの認知には強みがあるのではないでしょうか。

そのため雑誌メディアにおけるEC運営では、“他の商品とは差別化された雑誌ブランドならではの商品”が収益化のポイントになります。

ECモデル

ECモデル図

収益と顧客の囲い込みを狙う「直接課金モデル」

直接課金モデルは、Webメディア上で直接読者にサービスを提供し対価を得るモデルです。
直接課金モデルにおいては、3つの課金システムがあります。

①従量課金制:サービスを資料した時間や量によって支払い額が決まるシステムです。日々のガス代、電気代、水道代が該当します。「使った分だけ払う」という点では、ユーザーにとっては、透明性の高い形態と言えます。一方、サービスを提供する企業側にとっては、毎月の収益の見通しが立ちにくくなるという面もあります。
雑誌メディアに置き換えると、読みたい記事にだけお金を払うモデルです。「コミック話=○○円」というサービスは多数ありますが、「1記事=○○円」というサービスの成功事例は少ないのではないでしょうか。

②サブスクリプション:毎月定額の料金を支払い、継続的にサービスを利用できるシステムです。スポーツジムの月会費や電車の定期が代表例です。サービスを多用するユーザーにとっては大きなメリットがあります。また、企業側にとっても定額制にすることにより毎月の収益の見通しが立ちやすくなるという面があります。会員数の確保・維持がサブスクリプションの成否を左右します。
このサブスクリプションモデルは、週刊誌などの雑誌メディアでも導入されている事例が多数あります。

③フリーミアム:ユーザー全員から対価を得るのではなく、一部の有料会員から対価を得て、サービスを成立させるシステムです。グルメサイトの有料会員やファイルクラウドの有料プランがあります。フリーミアムを導入する上で、重要なことは無料サービスと有料サービスの差を明確にすることです。この差に価値を感じないと、ユーザーは対価を払ってはくれません。
上記のサブスクリプションを導入している雑誌メディアでも、コンテンツの一部を非会員にも公開することで、フリーミアムの形態をとっているといえます。

3つの手法を効果的に組み合わせるには?

以上、Webメディア事業における3つのマネタイズについてご紹介しました。上記の中からどのモデルを選ぶかは、雑誌のブランドやターゲットによって変わります。正解はなく、最適なマネタイズを見極めることがWebメディア事業の成功に繋がります。
どのモデルを選択すべきか迷ったときは、もう一度市場分析、STPから振り返ってみるのはいかがでしょうか。

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