出版社に聞いた『雑誌のデジタル化における課題』とは?

出版業界の変革が問われる昨今、多くの出版社がDXを推進し、新たなデジタルサービスを構築しています。DNPも各出版様のDXをサポートすべく、過去コラムやセミナーを実施してきました。 第1回目ではPianoJapan株式会社 江川様をお招きし「顧客ニーズをどうとらえ、可視化するか」「顧客が求めるサービス・価値をどう作るか」「提供するサービスでどう収益を得るか」についてディスカッションしました。 第2回では『暮らしニスタ』『散歩の達人』など出版社のWebメディア立ち上げをされてきたemy 代表金谷様、株式会社メディアインキュベート浜崎様をお招きし「ユーザー獲得とマネタイズのポイント」「Webメディア事業における雑誌の強みは何か?」等をテーマにお二人にお話頂きました。 そこでセミナーにご参加いただいた方を対象に「出版社の皆さまがどんなことにお困りなのか」についてアンケートをさせて頂きました。今回はその結果を公開いたします。

【目次】

Webメディアの取り組み実態と課題 第1位は・・・

Webメディア化関心度

Webメディア化取り組み状況

この項目では、「Webメディア化に取り組んでいる」「取り組みたい」という回答が90%以上を占めています。あらためてWebメディア化に取り組む必要性を確認できます。また「すでにWebメディア化に取り組んでいる」という回答のうち、67%が「取り組んでいるが、収益化に課題がある」、25%が「取り組んでいるが、PV獲得に課題」という結果になりました。実際に

「Webメディア事業に注力したいが、社内の既存部門や担当者との調整が困難」
「サービスの認知、拡散に課題がある」
「PVとタイアップ広告に依存している」

といった課題があるようです。
Webメディアを立ち上げ、収益化まで繋げることはそう簡単ではありません。少し歴史を遡ってみると、雑誌におけるWebの役割があくまで雑誌の販促ツールだったことに要因がありそうです。「最新号や新刊のリリースをWebで行い認知を広げるが、あくまで収益は紙の売上で」というスタンスでWebを開設したメディアも多いかと思います。しかし、時代の変化ととともに、Webメディアでも収益が求められるようになると、紙媒体とは異なる読者ニーズに応えていく必要がでてきました。同じユーザーでも、Webに求めているものと紙媒体に求めるものは異なります。Webメディアで儲けるためには、従来のWebでそのまま収益向上を考えるのではなく「読者・ユーザーがWebに何を求めているのか」から設計・検討してみるのもポイントの1つではないでしょうか。

最も関心のあるテーマ第2位は「サブスクリプション」 第1位は・・・

関心テーマ

続いて、Webメディア化において最も興味のあるテーマについてお聞きしました。
アンケートにご回答頂いた方の中で、最も関心が高いテーマは「会員獲得」についてでした。第2位は「サブスクリプション」、第3位は「広告収益の向上」といった結果となりました。回答頂いた方の中には以下のような意見がありました。

「紙と電子の有機的な関係を模索している」
「アドネットワーク広告、タイアップ広告以外の安定的な収入源の確保が課題」
「サブスク、会員サービスについて興味はあるが、手間、費用も考慮した収益性において自社雑誌において有益かどうかが分からない。」

ひとつ目の項目とリンクしますが、Webメディアで収益をあげるための方法としてサブスクリプションとその会員獲得、広告というテーマに興味をお持ちの方が多い結果となりました。実際に定額制サービスを導入している出版社は多く、各社さまざまなサービスを提供しています。

【参照】出版月報(全国出版協会・出版科学研究所刊)2021.11月号
※1はかつて紙で刊行していた媒体
※2はWeb媒体
※3は本誌の定期購読が前提のサービス 

サブスクリプション、広告収益については過去のコラムでもご紹介しましたが、どのモデルが、という絶対の正解はありません。雑誌のブランドやターゲットにとって最適なモデルを選択することが重要です。

しかし、雑誌のWebメディアでは紙雑誌からのファンというのが、他のメディアにはない特徴の1つです。「雑誌の読者はどんなサービスなら会員になって、月額費を払ってくれるか=サブスクリプションを利用するか」という視点で検討してはいかがでしょうか。

まとめ

以上、DNP主催セミナーのアンケート結果についてご紹介いたしました。多くの出版社がデジタル化を図り、どう収益を上げるかについて課題を抱えているかが浮き彫りになったのではないでしょうか。収益化の検討の前提として【適切な人に、最適なサービスが、的確に伝わっているか】を第三者の視点もふまえてサービスを見直してみるのも良いかもしれません。

アンケート調査概要

調査名: 「雑誌ブランドのDX推進セミナー」におけるアンケート
実査時期: 2021年11月17~20日、12月2日~3日
調査方法: セミナー終了後にアンケート
調査対象: 各社出版社 編集部・デジタル担当・販売部・広告部・ライツ担当他
回答者役職:代表取締役・執行役員・次長・部長・編集長・担当者
回答者数: 96人

関連ソリューション

DNPは運用型モデルのサービスを提供し、出版市場の推移、生活者のメディア接触時間の推移から出版社がこれから取り組むべき、デジタルトランスフォーメーションを支援しています。

関連コラム

未来のあたりまえをつくる。®