Webメディア化を考える今、改めて問いたい3つの質問

前回、印刷会社視点でみた雑誌ビジネスの“もったいない”についてご紹介しました。今回は、出版イノベーション事業部の会員ビジネス創出担当者が改めて考えたい3つの質問をご紹介します。雑誌のWebメディア化を検討している方、Webメディア化に向けて既に動いている方は是非、本コラムを通じて自社のWebメディア化を振り返ってみてはいかがでしょうか?

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【目次】

なぜWebメディア化するのですか? 読者起点で価値を設計する

過去コラムでも何度か触れてきましたが、Webメディア化を考える上で欠かせないのは“読者起点で価値を設計する”ことです。

“価値設計”というと少し硬い表現になってしまいますが、つまり『紙の雑誌をWebメディア化することで読者にどんな価値があるか』を考えるということです。紙の雑誌をWebメディア化するのは「読者にとっての価値を増やし、拡大するため」であり、出版社が「時代の流れに乗り遅れないため」「収益を増やすため」ではないのです。
そのため、雑誌ブランドの特性によっては紙の雑誌をWebメディア化することが、読者にとっての価値にならない場合もあります。このスタート起点を明確に意識することが重要です。
また、「読者にとっての価値は何か?」を探る上で、読者へのグループインタビュー等があります。ここで意識しておきたいのは、顕在ニーズと潜在ニーズについてです。顕在ニーズとは、ユーザー自身も気づいている困りごとや課題です。一方、潜在ニーズとはユーザー自身も気づいていない困りごとや課題です。読者は顕在ニーズとして「スマホでも雑誌が読めたら楽だよね」と認識していますが、潜在ニーズとして「スマホで雑誌が読みたい」と思っている訳ではない可能性が高いです。
顕在ニーズに応えることはもちろん、潜在ニーズにまで踏み込み、Webメディアを構築することで読者にとっての価値は大きくなり、「自社メディアが選ばれる理由」になります。

読者にとっての価値を起点にWebメディア化を考える

【読者にとっての価値を起点にWebメディア化を考える】

紙とWebの違いって何ですか? サービスの整合性

2つめはサービスの整合性です。サービスの整合性とは『自社が提供しているサービスの1つ1つがうまくかみ合っているか?』という考え方です。雑誌のWeb化においては、“紙とWebの補完性”がうまくマッチしているかがポイントです。読者にとって、雑誌が紙からWebに移り変わることでどんなメリットがあるのかを整理しましょう。
2つの補完性を考える上で、Webメディア化の重要性を優先してしまいがちですが、改めて紙の価値を振り返ってみましょう。過去コラムでもご紹介した「JJ」が分かりやすい事例です。

「JJ」では、
Webメディア:一次情報をSNSにアップし、まとまったものをWeb上に記事化=スピード重視、テスト的
紙の雑誌:世界観がまとまった最も贅沢な(ロイヤルな)コンテンツ
として位置づけ、メディアごとに明確な役割を持たせています。ユーザーも目的に合わせてメディアを選択し、課金する理由に理解・納得ができます。
サブスクリプションサービスありきでWebメディアを立ち上げ、「バックナンバーが読み放題」と雑誌をPDFにして掲載しただけでは、紙とWebの価値がバッティングしてしまいます。それでは、後発のWebメディアにお金を払う理由がユーザーには伝わりづらいのではないでしょうか。
上述の通り、メディアの特性によってはWebメディア化しないという選択肢もあり得ます。“読者にとっての価値”を起点に、紙とWebで相互補完しながら価値を実現・提供していくことが理想的です。以下、マトリクスをベースにしながら、一般的なWebの強み・弱み、紙の強み・弱みを整理し、2つの補完性を見直してみましょう。

【Web】
●強み
修正が容易にできる
発信のコストが低い
掲載する情報量に制限がない
発信の領域が広い
施策効果や記事の価値(PVなど)を可視化できる
動画、図、音声など表現方法が豊富
●弱み
離脱がしやすい、ロイヤルカスタマーの育成が難しい
競合(他サイト等)が多い

【紙】
●強み
情報の信頼度が高い(情報元の確からしさ)
一目で全体を確認・認識できる
手元に残して置ける
●弱み
情報量の制限
コスト、時間がかかる
一度発行(校了)すると、修正が困難
閲覧の結果を数値化しにくい

Web・紙の強みと弱み

【Web・紙の強みと弱み】

変化するニーズに対応できているか? サービスの再設計

最後のポイントはサービスの再設計についてです。Webメディアを展開する上で重要なことは、実施⇒検証⇒改善の繰り返しです。上述の通り、掲載した情報の修正やサービスの再設計を顧客の反応に応じて柔軟に変更・修正できることがWebの強みです。一度サービスが完成したからといって、そこで完了ではありません。常に施策 ⇒ 検証(反応のチェック) ⇒ 改善を繰り返し、臨機応変に顧客ニーズに対応していくことが重要です。
もちろん改善を繰り返す中で“成功要因”が見えてきます。しかし、その成功要因も永遠に同じという訳ではありません。人気のコンテンツやサービスも、どんどん変化していきます。Webメディアは“永遠のプロトタイプ(試作品)”ともいえるのではないでしょうか。

サービスの再設計

【サービスの再設計】

以上、Webメディア化において押さえておきたい3つのポイントをご紹介しました。どれも言われてみればごく当たり前のことかもしれません。今一度振り返ってみるのはいかがでしょうか。時には第三者の視点を交えて見直してみることも有効な方法の1つです。

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