出版市場にも広がるサブスクリプションサービス運営のポイント 【前編】

今回は、過去に実施したセミナーでのアンケートで最も関心の高かったサブスクリプションビジネスについてご紹介いたします。サービスの定額利用ということで雑誌の定期購読とも親和性が高い“サブスク”ですが、運営にあたりどんなポイントがあるか参考にしてみてください。 前編では、“サブスク”の振り返り、会員登録前後のポイントをご紹介します。後編では、ユーザーとの長期的な関係を築くポイント(サービス利用の習慣化、エバンジェリストの育成)をご紹介します。

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【目次】

サブスクリプションビジネスのおさらい 特徴とメリット

まずはサブスクリプションビジネス(以下サブスク)を簡単におさらいです。サブスクは“一定期間の間、どれだけサービスを利用しても定額”というシステムです。毎月会員費を払いサービスを利用するフィットネスクラブがサブスクに該当します。
事業者にとってのサブスクによるメリットは2つあります。
1つ目は、安定した収益が見込めることです。サービスを利用した分だけ料金が発生する従量課金とは異なり、会員数×会費で毎月の収益を予測することができます。
2つ目は、顧客との長期的な関係により、クロスセル・アップセルがしやすいことです。新規会員の獲得に比べ、既存顧客は既に関係性があり、サービスに対する理解度も深いため、更なる付加価値を訴求し収益化するまでの手間、コスト共に少なく済みます。

会員登録はゴールではなくスタート

まず、サブスクを運営する上で忘れてはいけないのが『会員登録がゴールではない』ことです。サービスの申し込みが完了すれば、運営者側にとってはハードルの1つをクリアしたと考えられます。しかし、ユーザーにとっては、契約完了が“始まり”です。ここからサービスを利用し、月額の料金に見合うサービスか、継続する価値があるかを判断します。
ユーザーがサービスに満足し、継続的な利用をしなければ、サブスクのメリットである“安定した収益”が成立しません。また、市場のターゲットの数には限りがあります。永遠に新規会員の獲得を続ける、というのは不可能です。そのため、サブスクにおいては会員登録後の関係構築・維持が重要なポイントといえます。

カスタマージャーニーファネル図

売り切りの製品であれば、上記カスタマージャーニーのファネル図左側が重視されていました。しかし、サブスクにおいては、契約完了以降の右側が重要な要素をしめます。

会員登録前にできることは?

では、ここからカスタマージャーニーの各ポイントでの施策についてご紹介していきます。

カスタマージャーニーのポイント

会員登録直前の検討段階では、ユーザーは「本当に申し込みをしても良いか?」と最終判断を迷っています。ここで会員登録する意味、価値を訴求し、登録への後押しをしましょう。会員登録の価値を訴求するためには、以下の2つの方法があります。
①成功事例・体験談の紹介
提供するサービスを通じて、ユーザーが得たメリットや成功体験を紹介しましょう。ユーザーへのインタビューやアンケートの回答等を活用するのがおススメです。実際にサービスを利用している人に語ってもらうことで、サービスに対する信頼度や安心感が増します。また、体験談を語るユーザーも自分がモデルとして紹介されることで、サービスに対する愛着が強くなる=ロイヤリティの向上効果も期待できます。
②無料会員
サブスクにおいて無料会員=無料お試しは非常に重要な要素です。ユーザーは契約をして、料金を払う前にサービスのお試し利用ができるため、本当に価値がるものかを吟味することができます。そのため無料会員での体験によって、契約(=有料会員)をするか否かが変わります。ユーザーに良い体験を提供し「もっと利用したい、もっと楽しみたい!」と思わせることができれば有料登録の確立は高まります。しかし、あまり良い体験を提供できなければ無料会員のまま留まってしまいます。

百聞は一見にしかず 契約直後はとにかく分かりやすく

カスタマージャーニーファネル図

会員登録が完了した直後(ライト既存顧客)は特に手厚いフォローが重要です。有料の会員登録が完了した直後は、ユーザーも「本当に契約して良かったのか・・?」という迷いがまだ残っています。このタイミングでユーザーを丁寧にフォローして、改めて契約して良かったと思わせる工夫が必要です。登録直後の施策として有効な方法は3つあります。
①使用方法の共有
1つ目は、他ユーザーのサービス利用例や成功談(ビフォーアフター等)を紹介することです。この方法は登録前の施策としても記載しましたが、契約が完了した直後に改めて紹介することで、ユーザーのやる気やサービスに対する期待値を高めることができます。例えば、会員登録後は「こんなユーザーはこんな使用方法をしています」といった、登録前より深い事例を紹介することで、使ってみたいという気持ちを醸成できます。
②動画の活用
2つ目は、サービスの利用方法を動画で見せることです。百聞は一見にしかず、ということわざがありますが、Webメディアの世界でも同様です。サービスの利用方法の説明に動画を活用するとサービスに対する理解度が高まります。サービスの利用方法が分からなければユーザーの関心は薄れてしまいます。特に契約直後は、お金を払った直後なので「値段の割に使いにくいなぁ」という印象を与えかねません。もちろんしつこすぎるのはNGですが、初回は懇切丁寧なフォローを心がけた方がユーザーの安心感につながります。「動画のスキップボタン」を設けるなどして、視聴の選択を儲けるのも手段の1つです。
③ポップアップヘルプの活用
3つ目は、サービスの利用ガイドやよくある質問をポップアップヘルプとして表示することです。サービス利用中に不明点が発生した時、ユーザーが自分で解決方法を探しに行くのではなく、ポップアップヘルプを出してその場で解決することでユーザーの満足度は向上し、サービス利用の継続につながります。また、その時は困っていなくても偶然表示されたポップアップヘルプを通じて、新しい利用方法を学ぶ、サービスへの愛着を高めることが期待できます。

まとめ

以上、前編ではサブスクの振り返り、会員登録前後のポイントをご紹介しました。もちろん本コラムでご紹介した方法がすべてではありません。各メディアの特性に合った施策をトライし、ユーザー満足度の向上につなげましょう。
後編では、ユーザーとの長期的な関係を築くポイント(サービス利用の習慣化、エバンジェリストの育成)をご紹介します。

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