ヒートシンクの種類と使い方

電子部品の放熱対策の定番であるヒートシンクを詳しく解説

アルミニウム製ヒートシンクの例

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電子部品などが発する熱の対策として、まず検討される放熱部品がヒートシンクでしょう。発熱体の熱を受け取ってさまざまな形状のフィンに伝え、フィンからさらに空気に伝えることで放熱します。さまざまな素材で作られ、フィンの形状は発熱体の熱を効率よく空気に伝えるよう工夫されています。ヒートシンクはまさに放熱対策の定番として広く使用されています。

目次

ヒートシンクとはどのようなものか

ヒートシンクは、金属やセラミックスなどの熱を伝えやすい材料で作られており、大まかな構造としては、熱源に密着させて熱伝導により熱を受け取る部分と、受け取った熱を熱伝達で空気に逃がす部分からなる熱部品です。空気と接する部分は、基本的には表面積が広いほど効率が良いので、薄い板を何枚も並べたり、棒を何本も立てたりといった、特徴ある外見をしています。ヒートシンクの特徴ともいえる板状や棒状の放熱部は「フィン」と呼ばれます。熱源や発熱量の大小にあわせてさまざまな大きさのものがあります。放熱部品としては比較的低コストというメリットもあります。

アルミニウム製ヒートシンクの例、金や黒に見えるのは表面にアルマイト加工をしてあるため。アルマイト加工はさびや傷に強くなるとともに放射(輻射)を高める効果があります。

アルミニウム製ヒートシンクの例

ヒートシンクの種類

ヒートシンクの材料

ヒートシンクの材料(素材)としては、熱伝導性の高さと入手性のよさ(コスト)、加工性のよさから銅、アルミニウムがよく使われます。押し出し加工やダイキャストによる大量生産が可能です。電子機器に使用する場合は、配線が触れて回路に影響がでないよう、絶縁には注意が必要です。
金属以外ではセラミックスが使われます。熱伝導性では金属には及ばないものの、熱伝導性に優れたセラミックス材料も開発されており、電気的絶縁性と放熱性が要求される用途、例えば最近ではLED電球によく使われています。

フィンの形状とヒートシンクのバリエーション

熱を空気に伝えるフィンは、表面積が広いほど効率が良いと述べましたが、フィンとフィンの間隔が狭すぎると空気が流れにくくなり、結果として効率が悪くなってしまいます。つまり、「最適なフィンの間隔」というものがあります。フィン表面に触れて熱を持った空気の層が、他のフィンのそれと重ならない最小の間隔が最適です。

フィンから空気への熱の移動効率を高くするために、ヒートシンクと組み合わせてよく使われるのが空冷ファンです。フィン間の空気の動きを対流に任せるのではなく、ファンによって強制的に入れ換えます。フィン表面にできる熱を持った空気の層を薄くすることになりますので、空冷ファンを付けるヒートシンクの場合は、フィンとフィンとの間隔を狭くできます。強制的な空気の入れ換えと、フィンの間隔を狭めてフィンの数を増やすことによって、放熱効率が向上します。

比較的大型の電子部品向けのファン付きヒートシンク。ファンなしのヒートシンクよりもフィンの間隔が狭く、数や高さも多くなっています。

電子部品向けのファン付きヒートシンク

ヒートシンクの熱を逃がすフィンの部分は、スペースさえあれば大きくして放熱効果を高くすることができますが、発熱部品から受け取った熱以上の放熱はできません。ヒートシンクが熱源からの熱をより多く受け取るには、熱源とヒートシンクの接触面を大きくし、放熱グリスなどのTIM(Thermal Interface Material)などを使うなどといった対策をします。ただし、劇的な効果は望めません。また、フィンの中やフィンに伝わる熱の速さには限界があるので、フィンが大きくなれば、放熱効果は下がっていきます。

このため、ヒートシンクにヒートパイプと組み合わせて使われる場合もあります。ヒートパイプは、ある場所の熱を別の場所に非常に高速に伝えることができるので、熱源の熱をヒートシンクやフィンの隅々まで効率よく伝えて、ヒートシンクの放熱性能を最大化できます。

ヒートシンクをヒートパイプと組み合わせた例。発熱部品からの熱をヒートパイプでフィンに伝えています。これにファンを追加することでさらに放熱効果を高めることができます。

ヒートシンクをヒートパイプと組み合わせた例

ヒートシンクとの組み合わせでも効果を発揮するベイパーチャンバー

ヒートシンクと非常に相性のいいヒートパイプですが、弱点がないわけではありません。その弱点とは、設置場所の大きさと重さです。一般的にヒートパイプは金属のパイプでできていて、曲げると熱の伝導率が下がるため、熱源の周辺の空間が狭いところでは使いにくくなります。重いこともあわせて考えると、小型軽量の電子製品への適用は難しいと言えます。そのようなアプリケーションの場合ではベイパーチャンバーが力を発揮します。

ヒートパイプとベイパーチャンバーは同じ基本原理で動作し、熱伝導率もほぼ同等ですが、ベイパーチャンバーは1mm以下という薄さと軽さという長所があります。熱源の熱を面として伝える点も、ヒートシンクとあわせて使う場合の親和性が高いと言えるでしょう。

ベイパーチャンバーは、熱伝導率が高い金属で作った薄いシート状の放熱部品で、動作原理はヒートパイプと同じです。一般的な、メッシュを用いたベイパーチャンバーは、内部に微細に形成された毛細管構造(ウィック)があり、純水などの作動液が封入されています。一方DNPのベイパーチャンバーでは、内部の毛細管構造をエッチングによって極めて微細かつ精密に形成していることが特長です。ベイパーチャンバーの一端を熱源に密着させると、作動液が蒸発することで潜熱として吸収し、低温部に移動して、熱を放出して液体に戻ります。作動液は毛細管現象によってウィックを伝って熱源部分に戻ります。この動きは非常に短時間かつ連続的に起こり、外部動力は必要ありません。

DNPのベイパーチャンバー

DNPは、これまで培ってきた超微細精密金属加工技術を使って、厚みが0.20mmという熱伝導シート並みのベイパーチャンバーを開発しました。ある程度の柔軟性もあり、曲面や段差のある部分にも適用できます。
※2022年2月時点の情報です

DNPのベイパーチャンバー

DNPのベイパーチャンバー

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