LEDに必要な熱対策とは

LEDの性能や寿命に影響を及ぼす熱の対策方法について解説

LEDと熱

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1962年の発明以来、長い間赤色と緑色だけだったLEDは、1989年の青色LEDの発明とそれに続く高輝度青色LEDの開発によって光の三原色がそろい、白色が表現できるようになったことで、照明やディスプレイとしての利用が始まりました。その後、地球温暖化対策としてLED照明の需要が一気に広がったことは記憶に新しいところです。LEDは電気エネルギーを効率よく光に変えることができ、省電力で発熱も少なく寿命も長いのですが、高い温度にさらされると寿命が短くなってしまいます。そのため照明やディスプレイとして使用する場合は、熱対策が必要です。

目次

LEDと熱

LEDは消費電力が小さいので、発熱も少ない電子部品であることは間違いありません。ただし、半導体である以上、熱の影響を受けやすい特性があります。そして、LEDは白熱電球などと違って、発光部からの熱放射(赤外放射)がほとんどないため、損失による発熱は発光部に集中します。

LEDは使用時の周囲の温度が高くなると、LED素子の発光効率が落ちて輝度が低下します。また、長時間高温の状態に置かれることで、発光効率は少しずつ悪化します。こうして発光効率が落ちた分は、損失になるのでさらに発熱量が多くなってしまうのです。なお、LEDパッケージを構成している蛍光体や封止樹脂も、熱には弱く、動作補償温度の上限は80度から100度程度です。加えて、LEDを動作させるために必要な電源回路には、やはり熱に弱い部品であるコンデンサが使われているので、注意しなくてはなりません。

照明に使われる高輝度LEDを見ると、発光部の面積はかなり小さく、数Wの電力であっても単位面積当たりの発熱量は相当に大きいことが分かります。照明器具ではこうした高輝度LEDパッケージを複数並べたLEDアレイや、1パッケージに多数のLED素子を並べたCOB(Chip On Board)と呼ばれるモジュールで、必要な光量を得ています。LEDの性能の劣化を抑えて、長寿命という特長を生かすには、熱への対策が不可欠なのです。

LEDと熱

電子部品の熱対策

基板に実装された電子部品の熱は、放射(輻射)や部品表面から空気への熱伝達(対流)によっても放熱されますが、熱伝導によって基板を伝わっていくものが大部分です。電子部品が高密度に実装されていたり、基板自体が小さかったりすると、熱を発している部品とその周辺の基板との温度差が小さくなって、熱が伝わりにくくなり、だんだん温度が上がっていきます。

そのような場合は、電子部品が所定の機能を果たせるよう、放熱部品を使って放熱を補助する必要があります。ヒートシンクを付けて熱伝達の効率を上げたり、グラファイトシートやヒートパイプ、ベイパーチャンバーなど、非常に熱伝導の良い熱部品で熱を周囲に素早く逃がしたりすると効果的です。

LED照明の熱対策

LEDは放射(輻射)で伝わる(逃げる)熱はわずかで、部品サイズも小さいため熱伝達も期待できませんから、熱伝導の効率を高めるしかありません。

LEDチップと電源回路が小さなスペースに押し込まれているうえ、筐体も小さいLED電球を例に取ります。LEDチップからの熱を、まず熱伝導性の高いアルミ基板に逃がし、(電源回路の載った)そのアルミ基板と筐体の間は熱伝導機能のある充填剤で満たします。これによって、LEDチップの熱は、より広がりやすく、伝わりやすくなります。その熱は、ソケットを通じた外部への熱伝導や、LED電球の筐体表面からの熱伝達によって放熱される仕組みです。LED電球の筐体は、ヒートシンクのようなフィンを付けたり、放射効率の良い表面加工をしたりするなどして、熱伝達の効率が高まるよう工夫されています。

天井に設置して使用するシーリングライトなどは、筐体が大きいので熱を逃がすスペースはあるものの、LEDアレイやCOBモジュールが局所的に発する熱をうまく逃がさなければ、LEDの性能や寿命に影響が出るだけではなく、発火といった最悪の状況にもつながりかねません。狭い範囲で発生する熱をヒートパイプやベイパーチャンバーを使って素早く別の場所に伝え、そこでヒートシンクを使って熱伝達によって放熱する方法が考えられています。

熱を面で広げる効果の高いベイパーチャンバー

ヒートパイプとベイパーチャンバーは同じ基本原理で動作し、熱伝導率も同等ですが、ベイパーチャンバーは1mm以下という薄さと軽さという長所があります。また、ヒートパイプは、ある点(または線)の熱を別の点(または線)に伝えますが、ベイパーチャンバーは、ある点の熱を面的に伝えるヒートスプレッダーのような働きもします。そのため、ヒートシンクと組み合わせるには適していると言えるでしょう。

ベイパーチャンバーは、熱伝導率が高い金属で作った薄いシート状の放熱部品で、動作原理はヒートパイプと同じです。一般的な、メッシュを用いたベイパーチャンバーは、内部に微細に形成された毛細管構造(ウィック)があり、純水などの作動液が封入されています。一方DNPのベイパーチャンバーでは、内部の毛細管構造をエッチングによって極めて微細かつ精密に形成していることが特長です。ベイパーチャンバーの一端を熱源に密着させると、作動液が蒸発することで潜熱として吸収し、低温部に移動して、熱を放出して液体に戻ります。作動液は毛細管現象によってウィックを伝って熱源部分に戻ります。この動きは非常に短時間かつ連続的に起こり、外部動力は必要ありません。

DNPのベイパーチャンバー

DNPは、これまで培ってきた超微細精密金属加工技術を使って、厚みが0.20mmという熱伝導シート並みのベイパーチャンバーを開発しました。ある程度の柔軟性もあり、曲面や段差のある部分にも適用できます。
※2022年2月時点の情報です

DNPのベイパーチャンバー

DNPのベイパーチャンバー

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