eKYCとは?
オンラインで簡単に本人確認ができるシステムを解説!

あらゆる業界でデジタル化が進み業務の効率化が行われている昨今、その波はサービスを提供する際に必要となる「本人確認プロセス」にも押し寄せています。自社サービスにおいて、法的にも重要な本人確認工程を改善できないか、解決策を探している方もおられるのではないでしょうか。 そのような課題に対して有効なのが、eKYC(オンライン本人確認)です。このシステムは、金融機関に限らず本人確認が重要とされるさまざまな業界で取り入れられています。そこでこの記事では、本人確認業務の効率化を実現するeKYCについて、その定義や背景を含め詳しく解説します。

2022年6月30日公開

1.eKYCとは

eKYCイメージ

eKYCとは、従来の手法では手間と時間を要した本人確認を、オンライン上で済ませられる仕組みのことです。本人かどうかを確認する作業をKYC(Know Your Customer)と呼んでおり、直訳すると「顧客を知る」という意味を持つ言葉です。これまでは窓口や郵送による書類でのやり取りによって個人を特定していましたが、急速なデジタル化や法改正など環境整備が進んだことで、オンライン上で本人確認が可能になったのです。eKYCは、KYCの頭に「e」(electronic / 電子的に)が加わった用語になります。非対面かつ書類のやり取りや管理などの手間も少なく済むため、eKYCの導入は時代のニーズに沿う形で増えてきています。

2.eKYCの導入が進む背景

ここでは、eKYCの導入が進んでいる2つの事由について解説します。1つは2018年に施行された犯罪収益移転防止法(以下:犯収法)の改正により、オンラインでの本人確認が認められるようになったことです。

犯収法は、犯罪組織に資金が流れることを防止し、正常な経済を維持することを目的に制定された法律です。なりすましや不健全な取引を防ぐため、金融機関などの特定の事業者に対して取引相手の「本人確認」を義務付けています。

対面による確認イメージ

ただ、対面や書類の送付による従来の確認方法だけでは、書類を管理するサービス提供者や手続きを行う顧客にとって大きな負担といえます。その負担を軽減しつつ、「デジタル化に対応した金融サービスの実現と向上」という金融庁の方針も相まって、オンライン上で本人確認する方法が追加されました。

eKYC導入が進んでいる2つめの事由は、犯収法改正の背景にもなっているデジタル技術の急速な発展にあります。近年は金融サービスの効率化や改善を目的とするサービスが増えてきました。AI技術やビッグデータの活用が促進されていることが大きく寄与していると考えられます。

オンライン口座開設から始まり、キャッシュレス決済サービスの構築や信頼できるマッチングサービスの実現など、本人確認を必要とする場面は増加しています。安全かつ利便性の高いオンラインサービスを展開する上で、eKYCの導入が進むことは必然的な流れといえるでしょう。

3.eKYCの種類

ここでは、eKYCにおける本人確認方法を4つ紹介します。いずれも、犯収法の施行規則によって規定されている個人顧客に対しての手法です。

【1】「本人確認書類の画像」+「本人の容貌の画像」の送付

これは写真付きの本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)と、本人の実際の顔写真を送付してもらうことで本人を確認する方法です。

【2】「本人確認書類のICチップ情報」+「本人の容貌の画像」の送信

この方法では、書類の画像ではなく運転免許証やマイナンバーカードに搭載されているICチップ情報を利用します。本人の実際の顔写真が必要な点は【1】と同様です。

【3】「本人確認書類の画像もしくはICチップ情報の送信」+「特定事業者への顧客情報の照会」

こちらでは、本人確認書類の確認において【1】と【2】の方法(画像もしくはICチップ情報の送付)どちらかを取ります。次に、銀行などの金融機関やクレジットカード会社から顧客情報を提供してもらうことが必要です。【1】、【2】と違い、実際の顔写真は必要ありません。

【4】「署名用電子証明書」+「暗証番号」の送信(公的個人認証サービスの利用)

ユーザーのマイナンバーカード内の情報(署名用電子証明書)と、マイナンバーカード発行時の暗証番号を利用した本人確認方法です。【1】【2】【3】と比較して、スピーディかつセキュリティの高い方法といえます。

4.eKYC導入のメリット

eKYCを導入すると、どんなメリットがあるのでしょうか。ここでは、ユーザーにおけるメリットと事業者におけるメリットについて、それぞれの観点から解説します。導入するかどうかの判断材料となるでしょう。

ユーザーにとってのメリット

本人確認は、サービスを利用しようとするユーザーにとっては高いハードルといえます。書類を準備し窓口へ行くか、もしくは郵送するなど、これらの事務的な手続きは片手間でできるものではありません。その負担を大きく解消できるのがeKYCという手法です。

スマートフォンでの本人確認イメージ

ユーザー側のメリットとしては、以下が挙げられます。
・窓口や郵便局へ行く必要がない
・準備する書類は本人確認書類のみ
・書類の不備などで二度手間になりにくい
・サービスをすぐに利用できる

オンライン上で本人確認が完了するため、手間が格段に減ることは最大のメリットです。どのeKYCを取り入れるかにもよりますが、基本的にスマートフォンと本人確認書類を用意すれば良いため、多く方にとって利便性の高い仕組みといえます。

事業者にとってのメリット

eKYCの導入は、事業者にも多くのメリットをもたらします。業務の効率化につながることは想像できますが、恩恵はそれだけではありません。具体的には、以下のメリットが挙げられます。

・本人確認手続きの負担によるユーザーの離脱を抑えられる
・本人確認にかかる人的コストを抑えられる
・書類を送付するためのコストや書類管理コストを削減できる
・顧客がサービスを利用開始するまでの日数を減らせる
・コロナ禍における対面対応による感染リスクを軽減できる

このようにeKYCを導入することで、業務の効率化に伴うコストカットと同時に、サービスを利用してもらう機会の増加につながります。また、コロナ禍における対面リスクや不正利用のリスク低減にも役立つでしょう。

5.eKYCのデメリット

eKYCの導入にはデメリットもあります。ユーザーが顔写真付きの本人確認書類を所持していない場合、サービスそのものを利用できないのです。運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなどの取得には手間と時間がかかるため、ユーザーはサービスの利用を断念してしまうでしょう。

6.eKYCの導入例・利用シーン

デジタル化が進む多くの業界において、本人確認は重要かつ改善すべきプロセスとなっています。法的にも、信頼性を担保する上でも本人確認は重要です。ここでは、代表的な5つの業界を例にどのようなシーンでeKYCが導入されているのか、その背景とともに解説します。

金融業界

金融業界イメージ

犯収法の改正以降、金融業界ではeKYCの導入が進んでいます。銀行や証券会社などの金融機関での口座開設には、同法の規定により本人確認が必須です。インターネットバンキングが普及し、預金残高や取引明細がオンラインで確認可能となったように、口座開設のプロセスで必要な本人確認がデジタル化していくのは自然の流れといえるでしょう。

金融機関でよく導入されているeKYCの種類としては、「本人確認書類の画像」+「本人の容貌の画像」の送付です。ユーザーは専用の認証アプリをダウンロードし、画面の指示に従っていくだけで本人確認が完了します。

また金融機関では、口座開設における本人確認だけでなく、電子決済サービスを展開する際にもeKYCを導入しています。以下のリンクから、DNPのeKYC導入事例を確認できます。

ニュースリリース 本人認証アプリが横浜銀行で本採用
ニュースリリース 本人確認をオンラインで安全・安心に行うeKYCサービスをみずほ銀行の「口座開設&マイナンバーお届けアプリ」に導入

不動産業界

不動産業界イメージ

不動産業界においても、eKYCの導入が広がっています。宅地建物取引業者は、宅地の売買や仲介、代理業務において本人確認が必須です。金融機関と同様に、犯収法の対象となる特定事業者に入っているため、eKYCを活用できます。

不動産契約では、犯収法を含めた各種法律に対応しつつ、多くの業務をこなさなければなりません。業務効率化やペーパーレス化が推進されており、その仕組みのひとつとしてeKYCにも注目が集まっています。不動産売買の電子契約や駐車場契約、不動産クラウドファンディングなどの場面で採用されてきているのです。

人材業界

人材業界イメージ

人材派遣や人材紹介などのマッチングサービスは、犯収法の対象ではありません。しかし、eKYCを活用できる業界です。「人」を中心としたビジネスモデルのため、本人確認は当然のように行われます。

また、コロナ禍においてリモートワークが推奨され、オンラインで雇用契約や業務委託契約などを結ぶことも多くなってきました。オンラインで本人確認ができればコストカットや業務効率の改善になるため、人材業界においてもeKYCを取り入れるケースが出てきています。

実際にeKYCは、都市と地方を結ぶ形で人材をマッチングするサービスで採用されています。人を雇う企業にとって、マッチングサービス側が信頼性の高い本人確認を実施していることは、重要な要素です。こうした背景もあり、人材業界においてもeKYCの普及が見込まれます。

古物商

古物商イメージ

中古品やリサイクル品を売買する古物商でも、本人確認が必要です。古物営業法に規定されており、扱う物品によっては犯収法による本人確認義務も発生します。古物営業法も2018年に行われた改正により、非対面での本人確認方法が追加されeKYCが利用可能となりました。

改正により追加されたオンラインで完結する確認方法は、以下の2つです。
【1】古物商のソフトウェアを利用して、売り主が「容貌の画像」+「写真つきの本人確認書類の画像」を送信
【2】古物商のソフトウェアを利用して、売り主が「容貌の画像」+「本人確認書類のICチップ情報」を送信

これは、犯収法でも採用されている方法です。他の業種と同様に、eKYCを導入することでペーパーレス化や本人確認業務の効率化にもつながります。店舗経営においては、本人確認を行う現場の負担を大幅に減らせるでしょう。

通信業界

通信業界イメージ

通信業界でも、eKYCの活用が広まっています。大手携帯電話会社がオンラインに特化したブランドを展開する際にeKYCが導入されたのです。採用されている本人確認の手法は、容貌と本人確認書類の写真を用いたもので、eSIMに対応している端末(契約者情報を遠隔でも書き換え可能な端末)であればオンラインで契約が完了します。

通信業界においても、事業形態によって携帯電話不正利用防止法や犯収法の対象となるため、本人確認が必須です。回線を保有する大手携帯電話会社だけでなく、代理店や格安SIMサービスを提供する事業者にも当てはまります。

法改正やデジタル化の影響によって、対面で契約することがほとんどだった通信業界でも、非対面へとシフトしています。eKYCの導入は、契約に関する事務処理を短くでき、コスト面でも有利です。これらのメリットがあるため、通信業界においてもeKYCはさらに拡大していくことでしょう。

7.DNPのオンライン本人確認(eKYC)総合サービス

DNPは、お客様のサービス環境に合う形で導入可能な「オンライン本人確認(eKYC)総合サービス」を提供しています。Webブラウザで運用しているサービスやアプリで運用しているサービスでも、本人確認機能を追加可能です。

改正後の犯収法にも準拠しており、以下の2つの確認方法で本人確認サービスを提供しています。
・「容貌の画像」+「写真付き本人確認書類画像」の送信
・「署名用電子証明書」+「暗証番号」の送信(公的個人認証サービスの利用)

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)イメージ

また、申込情報の確認から審査までを一括で請け負うバックオフィス業務にも対応しています。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)拠点は全国にあり、24時間365日稼働も可能です。セキュアかつ素早い本人確認を実施することで、お客様の業務最適化に貢献します。

8.DNPの関連サービス

顔認証イメージ

eKYCでも活用されている顔認証は、あらゆる生活の場面で利便性を高められる可能性を秘めています。決済や各種契約、銀行などのサービスまたは公的支援を受ける際、「顔情報」のみをキーとしてこれらを利用できれば、シンプルで快適な生活を送ることが可能です。

DNPは真の利便性を追求すべく、業界を横断して顔認証が利用できる「顔認証マルチチャネルプラットフォーム®」の環境構築を目指しています。生活者だけでなく当プラットフォームの利用企業にとっても、業務効率化やセキュリティリスクの軽減など、多くのメリットを享受できます。

9.まとめ

eKYCはオンラインで本人確認が完結するため、サービス提供者とユーザー双方にメリットがあります。ユーザーにとっては素早くサービスにアクセスできる上、手間も抑えられます。サービス提供者は本人確認にかかるコストを削減できるので、自社のメインサービスにより注力することができます。

銀行口座開設用アプリイメージ

DNPのオンライン本人確認(eKYC)総合サービスでは、主に2つの本人確認方法を用いてeKYCを提供しており、事業者のサービスに合わせて対応可能です。2014年から提供を開始し、eKYC機能も搭載された「DNPスマートフォン向け銀行口座開設用アプリ」は、50社以上の金融機関での採用実績がございます。ぜひ、本人確認手続き全体の効率化にお役立てください。

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