広がるキャッシュレス決済と進化する決済端末
キャッシュレス決済はニューノーマル(新しい生活様式)のひとつとして消費者の間に定着しつつあります。消費者側の利便性はもちろん、キャッシュレス加盟店側としても業務の効率化や生産性の向上など、キャッシュレス決済の導入メリットは多くあります。
本稿では、キャッシュレス決済を検討する事業者さま向けに、キャッシュレス化推進において大きな役割を担う決済端末に関して、どのような機器や構成があるのか、それぞれの特徴を比較、解説します。
市場動向
日本政府は、キャッシュレス比率を2025年6月までに4割程度、将来的には世界水準の80%をめざす方針を打ち出しており※1、キャッシュレス決済市場は約153兆円まで拡大すると予測されています。※2 労働人口の減少に加え、政府によるキャッシュレス促進施策やインバウンド施策なども後押しする形で、キャッシュレス化は今後ますます進むと思われます。この流れのなか、決済手段は多様化しており、キャッシュレス加盟店としても、さまざまな決済手段(クレジット、電子マネー、QR・バーコード)*への網羅的な対応が迫られるようになりました。
2018年にPayPayのサービス開始から急速に普及したコード決済は、マイナポイント事業や自治体の還元事業の影響もあり利用率が60%を超えたという発表※3がありました。クレジットカード決済も、タッチによる決済ができるカードと決済端末が普及することで、今後少額決済などのシーンで利用されることが想定されます。これから新たに普及する決済手段に対しては、大きな改修コストを伴わず、外部システム(決済端末、決済ゲートウェイ)によって対応できる構成の検討も必要となります。
また利用環境を見ると、スーパーマーケットでのセルフ精算レジの設置率が75.1%※4となり、精算シーンも変化してきています。このような無人精算機の導入は、スーパーマーケット以外でも進んでおり、消費者は無人精算機・決済端末を操作することに抵抗が無くなってきました。
昨今は屋内の店舗スタッフがいる場所だけではなく、店舗スタッフがまったくいない屋外の駐車場精算機や証明写真機・券売機などへのマルチ決済端末の導入が増えています。
屋外(半屋外)で利用するのであれば決済端末を選ぶ際に、さまざまな点※5に配慮して検討する必要があります。
(この記事は2023年4月時点の情報です)
*クレジット:接触IC/非接触IC<br>
電子マネー:交通系IC、楽天Edy、iD、WAON、nanaco、QUICPay、PiTaPa<br>
QR・バーコード:Pay Pay、楽天 Pay、d払い、メルペイ、au PAY、J-Coin Pay、WechatPay、Alipayなど
決済端末の種類・特徴
①「専用決済端末」と「マルチ決済端末」
数年前まではクレジット決済のための専用端末や、電子マネー決済のための端末がそれぞれ必要であり(交通系や流通系などブランドごとに別の端末の場合もある)、複数台の決済端末がPOSレジ周辺に並んでいるのが普通でした。
しかし現在、コンビニエンスストアやスーパーなどで使われている決済端末では、1台の決済端末でクレジットや複数の電子マネーを利用できるのがあたりまえになっています。
キャッシュレス化が進み顧客のニーズや決済ブランドも増えていく中で決済端末のマルチブランド化が進んでいます。
「専用決済端末」
クレジット単体やひとつの電子マネーのみが利用可能な決済端末です。複数の電子マネーやブランドに対応するには、それぞれの端末が必要です。
「マルチ決済端末」
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クレジットや電子マネー、コード決済、共通ポイントなどを1台で処理可能な決済端末です。
複数の端末を1台にできるため端末コストを抑えられるうえ、POSレジ周りの省スペース化や店舗スタッフ・顧客の操作もシンプルです。また専用決済端末ではPOSレジに接続する際、端末ごとの開発が必要ですが、「マルチ決済端末」は各決済手段やブランドを1台で処理することを前提に設計されているため、開発負荷やコストの削減が見込めます。
②「スタンドアロン端末」と「上位機器(POS)連動型端末」
「スタンドアロン端末」
決済端末単体で動作するため比較的導入が簡単なことから、個人経営の店舗や中小規模の商業施設で、必要な決済手段・ブランドに絞って導入されることが多いです 。既存のPOSレジなどと連動しないため、売り上げ処理の際、POSレジと「スタンドアロン端末」の両方への打ち込みや、売り上げの2重管理が必要となり店舗スタッフの負荷は大きくなります。
「上位機器(POS)連動型端末」
POSレジや精算機と連動しているため、店舗スタッフや顧客が操作する際の負荷が少なくスムーズな対応が可能です。また売り上げも連動しているため日々行う締めの作業も簡単です 。
※新規に上位精算機と決済端末を接続する場合は開発が必要です。
③電子マネー利用における「リッチクライアント端末」と「シンクライアント端末」
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「リッチクライアント端末」
端末で決済処理を行うため、決済処理速度が比較的速いとされています。また、処理結果をバッチでセンターへ送れるため、電波の届きにくい場所に設置されることもある、自動販売機やモバイル型端末などで採用されています。端末が高価なことと、導入後の遠隔での保守やアップデートができないものもあることがデメリットです。
「シンクライアント端末」
決済情報をサーバーへ連携しサーバーで処理を行った結果を連携する端末です。端末が比較的安価で、遠隔でのシステムのアップデートや決済種別やブランドの追加、保守対応が行えるサービスもあり、導入後もニーズに合わせてさまざまな使い方が可能となることがメリットです。決済処理の速度はサーバーにて処理を行うため、リッチクライアント端末に比べ遅く感じられることがあります。
導入にあたって検討すべきサービスプラン
決済端末を利用するにあたっては決済端末と各決済手段や各ブランドへ決済情報を連携するためのゲートウェイサービスの申し込みが必要となります。
提供するサービスに関しては各社特徴があり、初期の端末費やサービス利用料を決済手数料に乗せるモデルや、初期の端末費・サービス利用料・決済手数料を切り分けるモデルなどさまざまなものが存在します。
初期費やサービス利用料がかからないように見えても、ひと月の決済端末利用の決済金額が多い場合、ブランドごとの手数料が高いサービスを契約すると、コストが高くなるケースもありますのでサービスプランは十分検討する必要があります。
※1:「経済産業省ウェブサイト」経済産業省 商務・サービスグループキャッシュレス推進室 「キャッシュレス更なる普及促進に向けた方向性 2022年9月公表」より
※2:株式会社矢野経済研究所「国内キャッシュレス決済市場予測」より
※3:株式会社インフキュリオン「決済動向2022年12月調査」より
※4:一般社団法人 全国スーパーマーケット協会 2022年スーパーマーケット年次統計調査報告書
※5:決済端末の防水・防じん性能(IP65以上が推奨)や完全無人環境で利用する端末(TerminalType:Un-Attended)の認定取得、通信にあたってのLTEモジュールの搭載の有無、無人精算機への組み込みを考慮したサイズ感、通信仕様(Windows,Linux,JVMA,)なども比較し端末選定をすることも重要です。
このコラムで紹介した製品・サービス
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加盟店に求められるキャッシュレスインフラの共通化、キャッシュレス提供事業者との決済中継、決済情報の一元管理機能を提供。クレジット、電子マネー、QR・バーコードといった多様な決済サービスや共通ポイントサービスなどをワンストップで提供するクラウド型サービスです。
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