DigitalVelocity@SanDiegoでみるマーケティングトレンド

昨今、Adobe社の「Adobe Experience Platform」の米国でのリリース、ORACLE社の「CX Unity」の発表など、マーケティングテクノロジー分野におけるメガベンダーがこぞって「リアルタイム」なCX(カスタマーエクスペリエンス)の重要性を謳ったサービスを提供しはじめています。

そのようなトレンドのなか、リアルタイムCDP(Customer Data Platform)領域において先駆け的な存在感のあるベンダーのTealium社が、2019年5月14日-15日の2日間にわたり開催したイベント「DigitalVelocity@SanDiego」にDNPスタッフが参加したレポートをお送りします。

1. Tealium Universal Data Hubとは

Tealium社の提供する『Universal Data Hub』は、タグマネジメントを中心にグローバルで1000社以上の導入実績を誇り、日本での導入企業も徐々に増えつつあります。

この『Universal Data Hub(UDH)』の特徴を簡単にご説明すると、下記の3つがポイントになります。

  • お客さま一人ひとりのリアルタイムな状態の検知が可能
  • お客さま一人ひとりの状態をトリガーとしたリアルタイムなアクションの実行が可能
  • 1000以上のツールと連携したリアルタイムなデータのやりとりが可能

ここではこれらの具体的な説明は割愛いたしますが、
今回はこれらの特徴をうまく活用していると思った事例を3つ、ご紹介します。

2. ケーススタディ(1) GAP社におけるグローバルレベルでのパーソナライゼーションへのチャレンジ

GAP社はGAP、OLDNAVY、BANANA REPUBLIC等のさまざまなブランドを持っているアパレル企業です。世界90カ国以上で3100以上の店舗を保有しています。

彼らはまず、ブランド側からのビジネスリクエストを収集することからはじめました。
その結果、各ブランドの共通テーマとして『パーソナライゼーション』の要望が非常に多く出てきていたことが判明し、いかにこれらのリクエストに応えられる基盤を構築するか、が重要なテーマとして位置づけられました。

このリクエストを現実のものにしていくために、彼らは『パーソナライゼーション』を実行するために必要な要素を洗い出すことからはじめ、

  • お客さま一人ひとりの識別をリアルタイムに行えること
  • お客さま一人ひとりの状態をデータから正確に把握することができること
  • お客さま一人ひとりに対しあらゆるタッチポイントから即時にアクションを実行できること

上記のポイントを押さえたデータ管理基盤を整備すること、つまりは、リアルタイムにデータを利活用できる状態を作り上げることが重要であると定義づけました。

一方、現行のデータ管理基盤でそれを実現しようとしても、データが利活用できる状態になるまでに、リアルタイムどころか「約2週間」ものタイムラグが発生してしまうといったことが判明しました。
データベースに蓄積されたデータをセグメント化したり、抽出したりするリードタイムがボトルネックになっていたのです。

リードタイムをいかにゼロにするか、
この課題を解決すべく、GAP社はTealium Universal Data Hubの採用をすることに決めました。

採用のポイントとなったのは、「タグ」を貼るだけでデータ統合をリアルタイムかつ個客単位で自動化できてしまう点でした。
お客さまがWebページを踏んだ瞬間に、Tealium UDHが『どのお客さまか』をIDで自動識別し、
タイムリーに発生している行動データから過去のデータまで、Tealium UDHが瞬時に紐づけをしてくれます。

Tealium UDHの導入により、データが利活用できる状態になるまでに手作業で「約2週間」かかっていたところを、お客さまがWebページで「2PV」行動しただけで、Webサイトにおけるパーソナライゼーションや、メール配信の最適化などをリアルタイムかつ個客単位で自動実行できるようになりました。

また、GAP社の今後のテーマとして「マーケティングタグの削減」にも注力するとコメントしていました。
Webサイトにあまりに多くのタグが入っているとhtmlの読み込みが遅くなってしまい、結果的にサイトが表示されるまでに多くの時間がかかってしまいます。

GAP社では、サイト表示速度の低下による顧客体験価値低下を抑制する目的で、Tealium UDHのタグマネジメントを駆使して他のマーケティングタグを集約管理し、Webサイトのhtmlの読み込みスピードを向上させる取り組みにも注力しているとのことでした。

3. ケーススタディ(2)SportsBet社におけるマーケティング戦略とリアルタイムマーケティングシナリオ

SportsBet社はオーストラリアのオンラインスポーツ賭博事業会社です。
自分の好きなスポーツの試合を選び、勝つと予想したチームへ掛け金を投じる、といったことをWebサイト完結型で実行できるサービスを展開しています。

冒頭では、アクイジションへの投資とリテンションへの投資のバランスを見極める事が重要であること、
そして、その見極めのためには、自社のビジネス特性をきちんと理解することが重要であると話していました。

まず、彼らは古くからこのサービスを運営している先駆け的な事業会社であるため、他の追随を許さないマーケットリーダーとしての高いブランド力があることが強みである、
すなわち「アクイジションに積極投資せずとも、顧客は自然と惹きつけられてくる状態にある」と分析していました。

一方、この業界はオンライン型のサービスであるが故にスイッチングコストが非常に低いことが特徴です。さらに、サービスの核となるコンテンツが「スポーツ」であるため、これだけで競合優位性を創り出すことも困難です。

アクイジション施策の成果が出たとしても、リテンション施策が機能していないとすぐにスイッチされてしまう、
すなわち「いかに競合優位性の高いリテンション施策を実行できるか」を戦略の大きなポイントとして据えている、というコメントでした。

SportsBet社にとって、この戦略のキーとなるチャネルはまさにWebサイトです。
WebサイトにおけるUIの使いやすさのブラッシュアップはもちろん、適切な情報の提供レベルを最大限に引き上げ、競合にスイッチされない状態を創り出すことに注力しています。

そして、この顧客体験の提供レベルの最大化にTealium UDHが一役買っているとのことでした。
オーディエンスデータにベッティング嗜好性データを統合したセグメントの基礎データを週次で生成しているところに、「直近30分」の個客行動データをTealium UDHで紐づけ、より緻密かつリアルタイムな情報提供の最適化を実施しているということです。
この取り組みにより、サイト直帰率の改善、ならびに年間セッション数が約900万増えるという成果がでたそうです。

また、デポジット(口座への入金)をしていないユーザーのWebサイトでの行動属性に基づき、
リアルタイムにパーソナライズされたメールやチャットでのコミュニケーションを実施したところ、
パーソナライズしなかったユーザ群に比べてメール経由では約2倍、チャット経由では約2.5倍ものデポジットに成功した、との導入効果も出ているそうです。

4. どんどん進むマーテックツールのエコシステム化

Tealium UDHはツールとツールつなぐ「Hub」というポジショニングであることもあり、Tealium UDH単体の機能紹介やTealium UDH単体でのアップデートの話だけではなく、Tealium UDH×異種ツールベンダーのコラボレーション型セッションも多数開催されました。

QuantumMetric社のツールは、Webサイトでの微細な行動ログを収集することができるツールで、メインではUX改善の為の分析に利用されているツールです。
特徴的な機能として「個客がどのようにマウスを動かしているか」の動画を保存することもできます。

このツールを使うと、Webサイト内でのフラストレーションが高い状態(例えば10回連続で同じボタン押しているが反応しない、サイトが重くてロードに時間がかかりすぎている、などの状態)だと予測されるユーザーを、個客ID単位でリアルタイムに把握することが可能です。

この「フラストレーションが高い状態だと予測されるユーザー」を検知した瞬間に、QuantumMetircからTealium UDHに個客IDをリアルタイムに連携、Tealium UDH側で当該個客のステータス(VIP等)を把握した上でリアルタイムにフラストレーションを下げるアクションを実行する、とういアイディアを発表していました。

このほかにもさまざまなベンダーがプレゼンテーションを実施していましたが、今後もベンダーコラボレーション型のユースケースが増えてくるのではないかと思います。

5. 最後に

顧客体験に向けたシナリオや施策を検討し、最終的に何のツールを利用するのか、という順番で考えることが重要ですが、マーケティングテクノロジー分野でのツールに好奇心をもって接していくことによって、思わぬ角度から顧客体験のアイディアが生まれてくる、といったこともあるのではないかと思います。

本レポートが、皆さまのデジタルマーケティング活動において、少しでもお役に立つ情報となれば幸いです。

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