業界別CXマネジメントのポイント【通販編】

業界別CX(顧客体験価値)マネジメント(以下CXM)のポイント第3弾は、通販業界についてご紹介いたします。DNPのCXMコラムを初めてご覧の方はこちらのコラムからご覧ください。

前回コラム:CXを向上させるためのPDCA実践編

1. 通販事業のCXマネジメント(CXM)の状況

ECを中心とした通販市場はコロナ禍の巣ごもり消費の影響により、全体的に成長傾向が続いていますが、化粧品などの一部カテゴリーでは横ばいからやや下降している業種も散見されます。そのような状況下においてEC企業では、商品での差別化はもとより、ユーザビリティを中心に顧客体験価値で差別化をはかるためにCXMに取り組む企業が増えはじめています。
一方で、コールセンターでの受注が多い単品通販、カテゴリー通販企業では一部企業では早くからCXMに取組み改善事例も出てきていますが、全体的に取組みは遅れていると言えるでしょう。

2. 通販事業におけるCXMのポイント

通販企業は顧客とのダイレクトコミュニケーションを通じ、さまざまな顧客情報を管理しています。購買履歴やコールセンターへ集まるお客さまの声(VOC)、最近ではWeb上での行動履歴などを管理し、それらを効果的に活用するためにデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させています。
CXで中心となる顧客の感情データ(CXデータ)を加える事により、顧客データはさらに深みを増し、さまざまな施策に幅をもたらせることになるでしょう。CXデータとその他のデータの違いを通してCXデータがなぜ必要なのかを解説いたします。

2-1. VOCの違い

CXMで収集するデータは顧客アンケートによるお客さまの声(VOC)になります。コールセンターを主な顧客コミュニケーション窓口とする通販企業では「VOCはコールセンターに寄せられるお客さまの生の声が収集できているから十分」という話をたびたび伺うことがありますが、それらは似て非なるものです。
コールセンターへ入る声はボーカルマイノリティ(モノ言う少数の顧客の声)であり、実際はコールセンターへ電話はしなくとも不満やストレスを感じている顧客の方がはるかに多く、これをサイレントマジョリティと呼びます。このサイレントマジョリティの声こそ普段目に見えない顧客の声であり、CXMで可視化することにより企業の持つ課題が浮き彫りになる可能性があるのです。

  • コールセンターVOCとCXM VOCの違い

※1 CXMシステムなど利用した場合
※2 NPS(ネット・プロモーター・スコア)指標などを用いた場合

ふたつのVOCはどちらとも重要ですが、それぞれ活用する目的が違いますので両輪で回していくことが重要といえます。

  • VOCの関係性

2-2. 購買データとCXデータ(感情データ)

購買データは過去の顧客行動の結果です。したがって、CRMにおける顧客ランキングで上位のお客さまでも実は不満を抱えているというケースも一定数存在し、何人かの優良顧客は次の日にでも競合他社へ離脱してしまう可能性すらあります。CXMではNPS🄬などの顧客ロイヤルティ指標を使うことで、ロイヤルティが低下している顧客を捉えることができるため、CRMで使う顧客ランクなどのデータと組み合わせることにより、顧客ランクが上位の優良顧客で離脱の可能性が高い顧客がどの程度存在するかを可視化することが可能になります。」(下図:◆顧客ランク×CXMロイヤルティ指標の組み合わせによる分析例参照)さらには、その顧客セグメントの課題を抽出し、事前に打ち手を打つことにより、優良顧客の離脱を防ぐことが可能となります。※3

※3 CXを向上させるためのPDCA実践編参照

  • NPS®はBain&Company, Fred Reichheld, Satmetrix Systemsの登録商標です
  • 顧客ランク×CXMロイヤルティ指標の組み合わせによる分析例

  • 課題抽出例(セグメントAにだけ現れる課題を抽出)

2-3. 行動データとCXデータ(感情データ)

近年Webの行動データの活用が盛んになり、さまざまな施策に活用されています。例えば、「ECサイトで買い物かごに入れる手前で落ちてしまった顧客へ背中を一押しするようなプッシュ配信を行う。」といった手法も見受けられるようになってきました。ただし、何故買い物かごに入れる手前で離脱してしまったのか、顧客の感情は行動履歴からだけでは読み取れません。落ちた理由がネガティブであった場合に、背中を押されるようなメッセージを受け取っても顧客には響かないどころか、かえってロイヤルティを下げる結果になる可能性もあります。
CXデータは、こういった顧客行動を補足するデータとしても活用できます。
CXデータで取れる行動履歴の裏側の感情(例)

  • ネガティブな理由でかご落ちするケース
    • 最終的な価格表示(送料を含めた価格、ポイントなどの有無)
    • 自分にあった決済手段の選択肢がない
    • 配送日時が希望どおり選べない
    • クーリングオフの規定が見当たらない(見つけづらい)
    • ユーザビリティが良くない(見づらい、入力項目が必要以上に多いなど)

3. 通販事業におけるCXデータ活用法

前述のとおりCXデータはそれ自体に重要な意味がありますが、さまざまな顧客データと組み合わせ、補完することが可能です。ここでは、いくつかの活用方法を紹介します。

3-1. 事業全体での課題を抽出

顧客は購入するモノやサービスだけでなく、あらゆる接点(タッチポイント)における体験を総合的に判断して評価をします。例えば、飲食店のレビューサイトで味がすごく良くとも、店員の態度が悪かったり、待ち時間が長かったりすると評価が下がってしまうというケースがそれに該当します。そこでCXMはまず事業全体における顧客体験を俯瞰で見て、どこに課題があるかを抽出します。さらに抽出した課題に対して改善PDCAを回すことにより、顧客ロイヤルティを向上させることが可能となります。

  • 通販事業における顧客体験を俯瞰で見る場合のCX設計例

3-2. CRMとCXMを両輪で回す

通販で顧客データを活用するというと真っ先に購買データを活用したCRMがあげられますが、CRMでは上位優良顧客を優遇し、クロスセル、アップセルで購入頻度、単価を上げる。もしくは、リピートの少ない顧客へアプローチして購入頻度を上げていくといったプロモーション施策が中心となります。一方、CXMでは顧客が離脱していくような体験を改善していくことにより、離脱を防ぎ長い付き合いができる環境を作りあげるという施策が中心となります。この両施策が回ることにより、はじめてライフタイムバリュー(=購入単価×購入頻度×エンゲージメント期間)をあげることが可能になるのです。

3-3. 離脱客の課題を探る

通販のビジネスモデルの重要なポイントのひとつは「顧客の離脱を防ぎ、リピート率を高める」ことにありますが、離反客は何かしらの不満があり離脱するケースが多いため、仮にこういった顧客にアンケートで理由を聞いたとしてもなかなか回答は得られません。CXMでは顧客アクションのたびにアンケートをとることを推奨しているため※4、顧客が潜在的にもっている不満(課題)を抽出することが可能です。結果的に離脱してしまったお客さまに対する課題をCXデータから抽出することで離脱防止策を打つことが可能となります。

※4 業界別CXマネジメントのポイント【流通小売業編】2-2. 調査頻度の違い参照

4. まとめ

顧客とのダイレクトコミュニケーションが日常的に実施されさまざまな顧客データを駆使している通販企業では、CXデータを活用することで手薄であった離脱防止策を展開できるとともに、CXデータを加えることで現状のデータに深みが増し、さらにきめ細やかな施策が打てるようになるでしょう。

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