OMO戦略を成功させるための、ポイント活用方法

オンラインを活用したマーケティングが普及し、オンラインとオフラインを統合させてマーケティング施策を行うOMO戦略(Online Merges with Offline)が注目を集めています。本稿では、OMO戦略の目的とその施策の成功の鍵となる「ポイントの活用」について解説していきます。

目次

1.OMOが必要とされる背景
2.OMOによるLTVの向上
3.OMOを取り組む上での課題とその解決法
4.OMO戦略でポイント施策を連携させるメリット
5.最後に

1. OMOが必要とされる背景

IT技術の発達とともに多くの人がインターネット・Webに接触する時間が増え、ECサイトやゲーム、教育など、オンラインにおける施策が普及しています。さらにこのコロナ禍の影響で、オフラインの役割や位置付けが激変し、企業にとってのオフラインとオンラインのチャネルの在り方や役割分担が改めて問われています。そしてこれまでオンラインをそれほど活用していなかった企業が、オンラインへ進出する場合には、チャネルが増加しタッチポイントが単純に増えるため、行える施策の幅が一気に広がります。
オンラインとオフラインを連携させる手法として、これまでもO2Oやオムニチャネルなどのキーワードがもてはやされ、多くの企業で取組みが進められてきました。O2OはOnline to Offlineの略で、主にオンラインストアからオフラインの店舗へと顧客を誘導・送客する施策を指します。一方オムニチャネルはあらゆる販売経路を統合し、顧客がチャネルを意識することなく購入できるようにする施策を指します。これらはいずれもオンラインとオフラインを切り分けて考えることが前提にあり、その上で連携や統合を行う企業目線の概念ですが、OMOはオンラインとオフラインを区別せず、顧客目線でCXを向上させることに重きを置いた新しい概念です。
このOMO戦略に取り組むことでチャネルの垣根を超えたサービス提供ができ、顧客に幅広い選択肢を与えられるようになります。例えばオフラインが使えない顧客にはオンラインでサービスを提供するといった柔軟なサービスを展開できるため、結果として顧客離れを防ぎ顧客の囲い込みに寄与することができます。

2. OMOによるLTVの向上

現在、多くの企業が参入しているEC市場はレッドオーシャン化が進んでおり、新規顧客の獲得競争は激化しています。新規顧客獲得にはコストがかかり、またその結果を保証することが難しいのが現状です。そこで企業はコストを抑えることができる既存顧客維持に力を入れ、顧客育成に取り組む必要がありますが、顧客育成を行うには新しい価値を提供しロイヤリティを高めていかなければなりません。ロイヤリティの向上にはリピート率増加、解約率低下、顧客単価増加などの指標があり、それらを総合的に満たす施策のひとつとしてOMO戦略が有効となります。

オンラインとオフラインを統合し、すべてのチャネルを一貫して扱うOMOでは、複数のチャネルを連携させた施策の実施が可能です。また、オンラインとオフラインの垣根なく顧客データをひとつにまとめられるため、顧客のニーズにあわせた商品提案の精度も上がります。このように、OMO戦略は打ち出す施策の幅を広げられることから、さまざまな角度から顧客にアプローチできるようになり、結果としてLTVの向上に繋がっていきます。

3. OMOを取り組む上での課題とその解決法

昨今、顧客の囲い込みやチャネルを横断した送客の仕組み作りを検討する企業が増えてきています。これは流通小売りだけではなく、不動産のような新たな業界にも広がっており、業種業界を問わず必要な取組みになりつつあります。

3-1. 課題

流通小売業界以外ではそもそもオンラインチャネルがない、またはチャネルはあった場合でもオンライン・オフライン間の顧客誘導の仕組みが整っていないことが課題として挙げられます。
オンラインチャネルを持っていても、オフラインチャネルとは別々に扱っているケースが多く、それぞれで顧客を管理するシステムが異なり、会員情報を一元管理できていない企業は非常に多いです。またそれぞれのチャネルの業務や施策の連携性も乏しく、他チャネルへの効果的な誘導導線や施策がなく顧客を逃してしまうといったことも頻繁に起こることになります。そのため、チャネル間の分断を解消し、チャネルを横断した施策を有効に行えるようにする必要があります。

3-2. 解決

チャネル間の分断を解消する手段のひとつとして、ポイントサービスを活用する方法があります。顧客を一元管理し、チャネルを跨ぐポイントサービスで誘導導線を作ることで、顧客をチャネル間で横断させることが可能になります。

4. OMO戦略でポイント施策を連携させるメリット

4-1. チャネルを横断した顧客の送客

ECや店舗への顧客の送客はポイント施策のサービス設計によっても変化します。例として、ECのポイントアップを行った場合、実店舗ではなくECでの購買を促すことができます。また、このECへの送客については、コロナ禍で実店舗機能が停止してしまったとき、同一サービスを提供できるECにシームレスに誘導したことで機会損失を防ぎ売上を維持できたという事例もあり、事業継続性という観点で今後より大切になります。このようなチャネルを柔軟に跨ぐサービス性は顧客目線で見ても利便性に優れており、これからますます重要度を増してくるため、今後のEC戦略において欠かせない要素のひとつといえるでしょう。
このようにOMOを意識したEC施策に取り組むことは事業継続性やリスクマネジメントという観点でもメリットがあります。顧客の送客は、事業者のサービス設計によってある程度コントロールすることが可能です。

4-2. 顧客の囲い込みによるLTV向上

ポイントの付与はチャネル分断の解消に有効ですが、そのほかにもメリットのある施策となっています。購入に応じて貯まるポイントは顧客の継続的なサービス利用へと繋がるため、顧客の囲い込みが可能になります。さらに、貯まったポイントの利用を促すことでポイント原資を回収でき、LTVの向上も期待できます。

4-3. 自社商圏での囲い込み

ポイントを貯めると、そのポイントを活用したいという意識が顧客に芽生えはじめます。これにより、オンライン・オフラインともに自社のサービスを活用してもらいやすい土壌が作られ、その結果、自社商圏での囲い込みが徐々に成立していきます。

5. 最後に

このコラムでは、OMO戦略の必要性とOMO戦略におけるポイントの活用方法に関して説明しました。ポイントを付与する目的は、チャネル横断を促して顧客購買体験を最適化することで、顧客の囲い込みを行うことにあります。
OMO戦略においてポイントをうまく活用するためには、ポイント活用がどのようにLTV向上に繋がってくるのかを理解することが重要となります。
自社でLTV向上に繋げるシナリオを描けない場合、サービス設計のコンサルティングからサポートできる外部ベンダーもありますので、そういった外部リソースをうまく活用するのもひとつの手といえます。

2021年9月時点の情報です。

おすすめコンテンツ


キャッシュレス時代の必須施策「共通ポイント」とは?
消費税率引上げに伴うキャッシュレス利用時の還元事業や、マイナポイントの還元施策など共通ポイントは行政施策でも活用され、利用は大幅に増加しました。また、コンビニでの「マルチポイント化」やキャリア決済の提携など、決済サービスとの融合が進んでいます。今やマーケティングの必須施策となった共通ポイントの概要についてご紹介します。


共通ポイント導入の課題は「マルチペイメントゲートウェイ」で解決
共通ポイントへの加盟を検討する企業が増加しています。しかし、導入・運用にかかる負担の大きさから、二の足を踏む企業も見受けられます。特にシステム面では、追加開発の必要性などが生じ、加盟店側の負担が大きくなりがちです。ここでは、共通ポイントサービスの導入・運用において、汎用性やコストメリットに配慮した仕組みを紹介します。


精算機や券売機のキャッシュレス決済に対応するためのポイント
国内の決済手段が多様化し、非接触決済や無人決済といったニーズも増加の一途をたどるなか、キャッシュレス化を検討している事業者は、どのようにサービス導入を進めていけば良いのでしょうか。増え続ける精算機や券売機のキャッシュレス化に対応するためのポイントを紹介します。

未来のあたりまえをつくる。®