キリンホールディングス株式会社 様

目指したのは、MAの運用支援に留まらない
“自社の組織力を高める”パートナーとしての業務支援

キリングループ様は、2027年までに「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV(Creating Shared Value/共通価値の創造)先進企業となる」ことを目指す長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」(KV2027)を策定し、2019年からスタートしました。
この「食から医にわたる領域での価値創造」の実現に向けて、既存の「食領域」「医領域」のさらなる成長は勿論、次世代の成長の柱となる「医と食をつなぐ事業」の立ち上げ、育成を中期経営計画における重要課題としています。

この新たな事業の育成のなかで欠かせない、社会の変化・お客様の変化への対応や組織のイノベーションのキーとなるのが“デジタルマーケティング”。そこで今回は、キリンホールディングス株式会社デジタルマーケティング部 主査 宮入 一将氏、中嶋 直樹氏に、MAツールの導入、運用する体制づくり、業務の平準化、そして意識改革と、着実に前進し続けている取組みの詳細や、そのなかでのDNPによる支援とその効果などについて詳しく伺いました。

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キリンホールディングス株式会社 デジタルマーケティング部
主査 宮入 一将氏(左) 中嶋 直樹氏(右)

クロスブランド、デジタルシフトに対応するための組織力を高める

まず、新たなビジネス領域においてデジタルマーケティング部が果たす役割についてお聞かせください。

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キリンホールディングス株式会社 デジタルマーケティング部 主査
宮入 一将氏

当グループの戦略的枠組みは、健康・地域社会・環境などの社会課題への取組みを通じた価値創造と、お客様一人ひとりとのつながりを強化し、お客様の期待に応える価値創造です。2つの価値創造を実現するための基盤が「イノベーションを実現する組織能力」。その取組みによる事業拡大の一端をデジタルマーケティング部が担っています。

具体的には、社会の変化・お客様の変化に対応するため、組織でイノベーションを起こし、新しいビジネスチャンスを創造していくことです。標榜している「お客様主語のマーケティング力」「確かな価値を生む技術力」「多様な人材と挑戦する風土」「価値創造を加速するICT」のもと、お客様起点を大前提に特定ブランドでコミュニケーションするのではなく、クロスブランド、デジタルシフトに対応できる組織力で事業領域の拡大を目指しています。

SMC(Salesforce Marketing Cloud)はシステムを知っているだけでは運用できない

今回、DNPの「DNP MA運用支援サービス」を依頼するに至った背景をお聞かせください。

既存のコミュニケーションでは足りない、デジタルを意識した接点拡大のために導入したSalesforce Marketing Cloud(以下、SMC)の運用におけるスキル向上にむけ、DNPのMA運用支援サービスを要請しました。

2014年に発足したデジタルマーケティング部は、デジタル化が加速し「多様性によるお客様の変化」「コミュニケーション接点の増加」「求められるスピード感」などに対応するため、当時から「お客様主語のマーケティング力」を標榜して活動していました。オウンドメディアの管理をデジタルマーケティング部に集約し、リソースをデータ管理部門とメディア統合部門に分けて、顧客情報の収集とコミュニケーションの接点強化に費やしました。

部内の体制を整え、データを蓄積することに注力した後は、実際にメールやSNSでコミュニケーションを出し分けていく作業となります。この際に重要なのは、従来のような不特定多数の方に向けたマス・コニケーションではなく、しっかりお客様を理解したうえで、お客様ごとに最適化したコミュニケーションを行うOn to Oneマーケティング。まさに、「お客様主語のマーケティング」です。このOn to Oneマーケティングを実現するためにはMAツールが不可欠であり、SMCの導入に至りました。

ちなみにSMCを選択したのは、今後メディアが増え、さらに複雑化した際にスケールアップできる基盤の拡張性、そして組織体制であることを求めた結果です。グローバルで高い投資力を有しているセールスフォース・ドットコム社のSMCは、当グループが求めるMAに合致していました。

発足時から、データ蓄積後はMAが必要になることは想定通りのストーリーでした。ところがSMC導入後、思わぬ苦戦を強いられました。

思わぬ苦戦とは、どういうことでしょうか?

本格的な運用は自社で内製化したいという思惑があり、まずは「どんなことができるか」を模索するためスモールスタートを実行。SMCに知見がある技術スタッフやオペレーションに詳しいスタッフ、コミュニケーション設計ができるスタッフを入れてどこまで運用できるかを試しました。

SMCの作業を分解していくと、分析が必要であること、KPI設計を行ってPDCAサイクルを回すこと、そのための部内調整など、さまざまなスキルが必要になることが分かりました。SMCのシステムを知っているだけでは運用しきれないということです。

実際、現場では以下のような課題がありました。

・ひとつ一つの課題を解決していくのに時間がかかる
・目の前の業務対応に手一杯で、ほかのメールマガジンなどにスケールする作業に十分なリソースがない
・スケールする作業が属人化しやすい
・シナリオ設計はブランドごと異なるため標準化が難しい
・多様なパターン、セッティングが発生する
・SMCを一気通貫で見渡せる人がいない

スモールスタートで多くの課題が見つかりましたが、実際にSMCに触れたことで何をすべきか分かったという点では収穫がありました。とはいえ、まずは課題解決が先決。SMCの知見があるベンダーに運用支援をお願いすることにしました。

「自社の組織力を高める」支援が可能なパートナー企業を選定

SMCの運用支援のため、委託先に求めた要件を教えてください。

要件は大きく分けて以下の2つです。

SMCのリテラシー向上
ひとつはSMCを運用するスタッフのリテラシー向上です。SMCを運用するうえで、仕組みやオペレーションといった基礎知識を取得し、スムーズに運用できることを要件としました。

One to Oneへの対応
MAを導入した理由は、「お客様主語のマーケティング力」を実現するためです。そのためのOne to Oneマーケティングをしっかりレクチャーいただけるベンダーを求めました。

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キリンホールディングス株式会社 デジタルマーケティング部
中嶋 直樹氏

ベンダーを選定する経緯をお聞かせください。

SMCの経験値の有無で選別し、最終的にはDNPを含む3社に絞ってミーティングと提案書で選定しました。我々は単に運用支援をしてほしいわけではありません。前述した要件のもと、「自社の組織力を高める」ことに協力していただけるかどうかが最大のポイント。その提案をしていただいたのがDNPでした。具体的なポイントは以下となります。

ノウハウをオープンにできる
SMCの経験値、つまり蓄積してきたノウハウは、簡単には社外に出せないのは分かります。
しかし、DNPは我々の要望を汲み取り「パートナーとして一緒に取り組んで行きましょう」といっていただきました。我々の「自社の組織力を高める」への積極的な協力姿勢に感銘を受けました。

SMCの経験値が高い
ミーティングと提案書で話を進めていくなか、DNPの経験値が高いのが分かりました。自社でMAツールの導入や運用支援をサービスとして提供する部門を持っており、それをノウハウとして蓄積できる体制が整っていました。

従来からの強い信頼関係
飲料のマーケティング部門を中心に、これまで印刷物はもちろん、キャンペーンやプロモーション、さらには働き方変革に至るまで、DNPには共同パートナーとして支援いただいていました。そうした信頼もあって、選定から依頼に至るプロセスをスムーズに進めることができると考えました。

このように、キリングループが目指す最終ゴールを十分に理解し、自立・安定したMA運用体制の構築のために、伴走型で柔軟な支援サービスをご提供いただけたことが、他社では成しえないDNPの価値であると言えます。

研修とマニュアル化で「自社の組織力を高める」支援を実施

SMCの運用支援という要望において、具体的にDNPが行った施策を教えてください。

DNPによる支援内容を大きく分類すると、研修とマニュアルの整備です。具体的には以下を行っていただきました。

フェーズ1 実践適用レクチャー
期間 2週間
施策 ・既存の手順書からSMCの実画面ビューを含むマニュアル兼教育資料を作成
・Webセンター(デジタルマーケティング部内のSMC運用部門)スタッフに対し、
5日間(2~4時間)の研修を実施
フェーズ2 SMC運用の標準化と高度化(統合メール)への対応
期間 約4ヶ月
施策 ・SMC設定品質基準の作成
・One to One化に対応した統合メールの新規手順書の作成
・SMC設定ドキュメントのリプレイス
・統合メールで標準化した手順に合わせて既存手順を修正
・レクチャー用のマニュアル作成
・統合メールおよび既存メールに関するWebセンタースタッフへの研修の実施
・既存運用課題の潰しこみ

「お客様主語のマーケティング力」が一歩前進

DNPのSMC運用支援によって効果は得られましたか。

以下の点について、大きな効果を得ることができました。

属人化の防止
フェーズ1の研修およびゼロベースでも作業ができるマニュアルの作成により、属人化することなく、誰が担当してもSMCの効率的な運用が行えるようになりました。

トラブルの減少
SMCの運用支援をお願いする前までは、オペレーションミスが度々発生していましたが、現在は大きなミスはなくなりました。安心してスタッフに運用を任せることができます。

統合メールからOne to Oneメールを配信できる
フェーズ2の統合メールの標準化により、我々がもっとも行いたかったOne to Oneメールの配信が可能になりました。

統合メールとは、いままで会社やブランドごとに縦割りで動いていたワイン、洋酒、ビール、ソフトドリングなどの顧客情報をひとつにまとめたクロスブランドを意味します。従来であれば、ワインの顧客とソフトドリングの顧客は会社やブランドごとに管理されていましたから、クロスブランドで運用することはできませんでした。

現在はお客様の関心カテゴリーごとにフラグを付けて一元管理。ワインのカテゴリーで配信したメールからお客様がワインのキャンペーンサイトにアクセスし、そこからソフトドリングのサイトにアクセスしたら自動的にソフトドリンクのフラグが付与される仕組みとなっています。フラグの設計次第ですが、たとえば、ソフトドリンクのフラグが付与されたら、そのお客様はソフトドリンクのカテゴリーにも分類することが可能です。

つまり、フラグの設計によって、ひとつの統合メールからお客様ごとに最適化された情報を出し分けることが可能。しかも、クロスブランドでは、フラグの付け替えでお客様の反応を確認・分析し、お客様の宣潜在的なニーズに合わせてコンテンツを出し分けられます。これにより、「お客様主語のマーケティング力」に一歩前進したと感じています。

組織改革に貢献
DNPのSMC運用支援は組織改革にも貢献しています。以前までは作業効率・品質重視で、メールの安心・安全配信がスタッフのゴールになっていました。「お客様主語のマーケティング力」やクロスブランドの必要性を説いても、なかなか理解してもらえませんでした。

しかし、フェーズ2の研修で、ひとつの統合メールからお客様一人ひとりの潜在ニーズに沿ったOne to Oneメールができることが分かると状況は変わりました。クロスブランドのイメージの具体化、標準化によって作業が属人化しない点などがスタッフに浸透し、積極的に取り組むようになりました。しかも、手を出せる領域が広がったことで、マニュアルに記載がない施策でも「整理すればできるようになるのでは」という意識に変わってきています。現在は、スタッフからの提案も期待できるまで成長しています。まさに、「自社の組織力を高める」効果といえるでしょう。

最後にDNPへの期待をお願いします。

お客様との接点は、今後もっと増えてくることが予想されます。我々としてはオペレーションのレイヤーに留まるのではなく、コミュニケーションの設計、データ分析、基盤の運用などに、より多くのリソースをかけていかなければならないでしょう。そうなると、オペレーションの部分をDNPにアウトソースすることを含め、ツールの機能拡張の支援や、戦略設計・価値創造の領域といった新たな取組みへのご提案など、DNPとはより深いパートナーシップが必要になります。

今後もデジタルを活用してお客様に最適なサービスを提供していくために、継続的な資産となる「自社の組織力を高める」ご支援をお願いします。

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キリンホールディングス株式会社 デジタルマーケティング部
中嶋 直樹氏(左) 主査 宮入 一将氏(右)

※2020年1月時点の内容です。

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