2020/2/17

ピタッとわかる! 粘着フィルムのヒミツ

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モノとモノを接合する。工業製品の製造に欠かせないこの技術に、今、イノベーションの波が押し寄せています。それは、従来主流だったボルトや溶接を利用する「機械的接合」に加え、接着剤や粘着剤を利用する「化学的接合」の技術革新が進み、その利用シーンが大きく広がりつつあること。モビリティや電子機器の進化に合わせ、そのニーズはますます高まっていくとみられています。

注目が高まる化学的接合技術

そもそも、モノとモノを接合する技術には、どのような種類があるのでしょうか?
大きく分けると、ボルトやネジ、溶接やリベットを利用する「機械的接合」と、接着剤や粘着剤を利用する「化学的接合」の二種があり、それぞれに進化を繰り返しながら、接合すべき材料によって使い分けられてきました。
接着や粘着というと、紙の工作やプラモデルなどを想像する人もいるかもしれませんが、技術革新が進んだ現在では、自動車、航空機など、接着性能と耐久性が要求される工業製品にも数多く利用されています。

接合方法

では、なぜ「化学的接合」の利用シーンが増えているのでしょうか?
例えば、自動車業界では、二酸化炭素削減のため電気自動車が増加すると予測されています。電気自動車は、航続距離を伸長するため車体の軽量化が進み、金属だけでなくプラスチックなどの異種材料(マルチマテリアル)を接合する技術が求められます。異種材料の接合では、密着性に優れ、材料を破壊しない「化学的接合」が適しています。
また、運転支援システムや自動運転技術への技術も革新を迎えており、車載機器やセンサーなどが高度化・精緻化し、加えて薄型化・小型化の必要性も増しています。これらの車載機器やセンサーなどの製造工程では、すでにマスキングや保護用途などで粘着テープが使われており、またセンサーなどの部品を車体へ固定するために粘着テープや接着剤が多用されています。

接着・粘着製品は、材料開発の進展により耐久性や耐熱性の向上、軽量化といった多様なニーズに応えられるようになったり、接着強度の設計・検証技術の向上により信頼性が高まったりといった進化を遂げています。さらに、面接合であるため、強度の低い薄手の材料や微小部材においては「機械的接合」よりも強度面で有効である点も見逃せません。

さらに、形状としての進化もあります。もともと、市販の接着剤のような液状のものが中心でしたが、「テープ」や「フィルム」といった形状のバリエーションが増えたことで、貼付が容易になり、組立工程の負荷軽減にも貢献できるようになりました。一部の製造現場では、作業時間の短縮や臭気対策といったメリットも生まれています。

広がる「接着」&「粘着」の利用シーン

こうした「化学的接合」の代表が「接着」と「粘着」ですが、両者の特性には少し違いがあります。JIS規格(K6800)によると、「接着」とは、「接着剤を媒介とし、化学的若しくは物理的な力又はその両者によって二つの面が結合した状態」とされています。
一方、「粘着」は化学的な反応をせず、貼ったり剥がしたりすることができます。

粘着・接着の違い

近年、「接着」と「粘着」の特性を併せ持つ、「粘接着」という製品も登場しています。これは、「すぐにくっつき、貼ったあとに接着のように強く固まる」というもの。初期粘着力があるので仮固定することができ、作業の簡略化に貢献します。三者の特性をまとめると、以下のようなグラフになります。

各接着材料の強度イメージ

これら「接着」「粘着」「粘接着」製品は、主にどのような場面で使われているのでしょうか?
航空機の部材を構成するアルミ合金を接着したハニカムパネル(*)には、大きな面積を均一に貼れる「接着」フィルムが利用されています。

  • ハニカムパネル=正六角形または正六角柱を隙間なく並べた蜂の巣状のコアを、二枚の板で挟んだもの。軽量さと強度を併せもつ。

半導体ウエハからICチップを切り出すダイシングの工程においてウエハを固定かつ切り出し後のICチップのピックアップなどの作業性を向上させるために、剥離性がある「粘着」フィルムが利用されています。

新技術で新たな用途を開拓しつつある「粘接着」フィルムは、異種材料の接合や、組立工程の簡略化に役立つ特性を活かし、自動車の構造部材であるCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic:炭素繊維強化プラスチック)補強材と金属ボディの接合などに利用されています。

粘着・接着フィルムの活用用途

近年、サビ防止や軽量化を目的に家屋の梁を金属からプラスチックに代替する動きがありますが、この流れが進めば、部材の接合にも「接着」や「粘着」が多用されることが予測されます。いずれは、"釘やネジを1本も使わない家"が当たり前になるかもしれないのです。
このように、多彩な用途開発が可能な「接着」「粘着」技術は、被着体の進化にも対応が可能な次世代の接合方法と言えるでしょう。

印刷技術をベースに生まれたDNPの粘着フィルム製品

こうした社会的ニーズの高まりを受け、DNPでは現在、粘着フィルム及び粘接着フィルムを開発・販売しています。いずれも製造現場の特殊な条件やユーザーの使用条件に応える独自の特性を備えている点が特徴です。

耐熱性、耐薬品を有する「耐熱粘着フィルム」は、リフローなどの加熱工程で熱に弱い部品を保護し、工程後に容易に剥離できることから、スマートフォンの基板製造など多くの工場に導入されています。

粘着フィルムのラインナップ

これらの製品を生み出したDNPの強みは、印刷で培った技術やノウハウにあります。
印刷の版を作るためのエッチング加工や、賦形(凹凸形状を基材上に再現する)の技術から派生した微細加工技術と、印刷やコーティングの工程で培ってきた微細塗工技術など、印刷技術をベースに生まれ、豊富な実績のある「機能性フィルム」のノウハウは、多彩な機能を付与するフィルム基材の選定に大いに役立っています。これらの裏付けがあるからこそ、DNPはお客さまのニーズに合わせた多彩な製品開発を実現できるのです。

工程イメージ

 


【資料ダウンロード】粘着・接着フィルム製品ラインナップ(別ウィンドウで開く)




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次世代の接合技術として、各種工業製品から住宅設備、医療に至るまで幅広い分野で欠かせないものとなっている接着/粘着フィルム。あなたが普段利用しているこんな製品にも、使われています。

近年の技術革新によって、新たな機能や用途が次々と生まれている粘着・接着製品。製造現場における課題を解決したり、さらなる効率化を果たしたりしている事例の一部をご紹介します。

DNP熱溶着フィルム

金属、樹脂、ガラスなどの異材質を接着できるフィルムです。糊のはみ出し、残留溶剤、アウトガスの発生が少ないです。

DNP粘接着フィルム(熱硬化タイプ)

初期粘着力があるため、両面テープのように仮固定でき、加熱すると、ネジ止め並みに強固に接着できます。液状接着剤の配合やネジ止めなどが不要になり、工程の簡素化が可能です。

DNP耐熱粘着フィルム

電子部品の製造工程で加熱工程やエッチング、メッキ等の工程にも耐薬品性があり、 使用後は容易に剥離が可能で糊残りがない粘着テープです。

異種材料を接着する

熱や化学反応により溶融・硬化するフィルムの特性を活かし、2つの素材を接着することができます。 DNPは、リチウムイオン電池用部材のほか、モビリティ製品などでの利用・研究に取り組んでいます。