2019/5/24
働き方改革と情報セキュリティ(3) 成長するためのツール活用
企業の働き方改革担当部門や情報セキュリティ担当部門の責任者、企業改革に向けたコンサルティングファームの方々に、「働き方改革と情報セキュリティ」をテーマにお話を伺いました。お伺いした内容をまとめた冊子データは本ページ下部よりダウンロードいただけます。
本コラムでは、基幹システムからモバイル端末やIoTまで、幅広い開発を行っている、日本能率協会グループの株式会社ジェーエムエーシステムズ様にインタビューした内容を紹介します。
日本能率協会グループの株式会社ジェーエムエーシステムズ様は、今年創立47年になるシステムインテグレータで、基幹システムからモバイル端末やIoTまで、幅広い開発をされています。そこで、モバイルアプリケーションなど、ツールを活用した働き方改革についてお話を伺いました。
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株式会社ジェーエムエーシステムズ
事業企画部 プロダクト開発グループ
マネジャー
舟橋 尚哉 Naoya Funahashi
※所属・肩書などは、2018年11月取材時のものです
成長しつづけるために一人ひとりが変化する、そのために「ツール」を活用する
テレワーク、BYOD、フリーアドレス
ー 働き方改革のために、スマートデバイスの導入を検討する企業が多いですが、さまざまなシステムの開発を行っている貴社は、働き方改革として何か活動をしていますか。
舟橋: 特別なことは行っていませんが、業務改善はいくつも行っています。たとえば、モバイル端末の活用やテレワーク、BYODなどは7-8年前から取り組んでいます。また今年4月からはフリーアドレスの試験導入を行っています。
ー テレワークでは、どのようなことをされていますか。
舟橋: 取組みの1つではあるのですが、Web会議にSkype(スカイプ)を利用しています。社員同士での利用はもちろんなのですが、お客さまともSkypeを利用できるようにしています。
プレゼンテーションなど、訪問しなければならないシーンでは訪問するのですが、細やかなコミュニケーションを取って情報交換を活発に行う、という点では基本的にSkypeを利用しています。
ー BYODはどのような業務で導入しているのですか。
舟橋: BYODは申請制で、開発現場のプロジェクトリーダーや、お客さまとの会話が必要な責任者に多く、何かあったときに早急な判断をする、という限定的な使い方をしています。アプリでいうと、メーラーやスケジューラーがほとんどです。
導入する前に誰が何のために使用するか、そもそも社外で業務を行う意味があるのかを評価したのですが、メーラーやスケジューラーだけでも、非常に意味があると判断できたので、BYODを導入しました。
ー フリーアドレスの試験導入を行うにあたり、課題はありましたか。
舟橋: 開発部門の人たちには、とても反対されました。開発者の席にはたいてい、技術本があって、大きなディスプレイがあって、PCが置いてある。若手など少し力が足りない人の隣には、少し上の開発者がいて、いつでも相談できるようになっている。そういった、開発者にとって最適化された空間になっているんですよね。
また、サーバーやデスクトップPCなどは、毎日片付けられないものなので、マシン室を整備しなければなりませんでした。
ー 席が日々変わることで、人の交流に効果はありましたか。
舟橋: 私のグループに中途採用で最近入社した者がいるのですが、他のグループになかなか馴染めず、同グループの者がいないときに、孤立して作業が滞ってしまうことがありました。
ですが、フリーアドレスで他部門の人と隣になれる機会ができたので、他部門の人と交流を持つようになりました。
ー クリーンオフィスの観点で、効果はありましたか。
舟橋: 自席がなくなったので、必然的に片付けるようになりました。また、ロッカーから物を出したり、片付けるのが面倒なので、今まで紙に出力していたものも、だんだん出力しなくなりました。ペーパーレスになることが、結果的にクリーンオフィスにつながっていますね。
ー 在宅勤務の制度はありますか。
舟橋: たとえば、怪我や病気などの場合は在宅勤務の対象になります。実は私も、骨折して4-5カ月間在宅勤務をしていたことがあります。ほかにも、たとえば空気が綺麗なところでないと喘息の発作を起こしてしまう方も対象になります。
あとは介護ですね。制度を導入する前は、休職しなければならない状況だった人でも、介護をしながら業務ができるようになりました。
ー 情報漏洩を防ぐために、何か取り決めていることはありますか。
舟橋: 業務を行う場所や業務範囲、使用するツールは、整理してリスクアセスメントを実施しています。
セキュリティを担保するためとはいえ、利便性が無くなってしまうと意味がないので、セキュリティと利便性のバランスを取る、ということが非常に重要なのだと思います。
セキュアだからこそ気軽に情報を共有できる
ー 貴社の製品である、画像を安全に送信するアプリ、KAITOセキュアカメラ(以降、KAITOカメラ)についてお聞きしたいのですが、貴社では、KAITOカメラを業務に活用していますか。
舟橋: 会議で使用したホワイトボードの共有に使っています。会議のたびに議事録を作成すると、手間も時間もかかりますが、ホワイトボードを撮影して共有するだけなら簡単です。KAITOカメラなら、セキュリティが担保されているので、気軽に撮影して共有することができます。
ホワイトボードの書き方にも変化があって、今までは書きたいことを書いていたのですが、画像を共有するようになってからは、参加者や日時、決定事項など、必要な情報をホワイトボードに書くようになりました。
KAITOカメラの概要:
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ー どういった経緯で、この製品を開発したのですか。
舟橋: モバイル端末のシステムを開発していると、インタフェースは違えど、画像や位置情報を業務に取り込もうとする案件が多かったので、安全に画像や位置情報を送信できるものを作れば、ニーズがあるのではないかと考えたのが、KAITOカメラの始まりです。
また、画像を扱うKAITOカメラに対し、音声データを扱うKAITOセキュアレコーダという製品もあるのですが、こちらは、高齢者との金融取引などで、伝えなければならないことを、ちゃんと伝えたというエビデンスを取ろうとしたのが、開発のきっかけです。銀行の担当者が高齢者の家に行って金融商品の説明をするとき、エビデンスを取りながら説明しようとすると、2人行かなければいけないという状況になっていました。そこで、今まで通り1人の担当者が重要事項の説明をしていても、音声をエビデンスとして残せる、コンプライアンスを守れるツールを、我々が提供できないか、というところから始まっています。
業務の見える化
ー 最近、RPA(Robotic Process Automation)を使った業務改革への取組みが盛んに行われていますが、貴社ではRPA化に向けて何か取組みはされているのでしょうか。
舟橋: 社内システムを刷新するには、現状の業務分析が必要になります。そこで、ワーク・メジャメントを目的としてWorkReportというスマートフォン用のツールを、先日リリースしました。WorkReportを使って大まかな業務分析を行い、RPA化する業務範囲を短期間で決める。また導入後の効果測定にも活用する、というような用途を想定しています。
ー WorkReportはどういった目的で開発されたものなのでしょうか。
舟橋: もともとは製造現場での作業日報や生産日報を簡単に作成するためのツールです。日報は紙で作るか、そもそも作っていない、という現場が多いと思うのですが、そういった現場でも簡単に日報が作成できるツールとして開発しました。
ですが、ホワイトカラーにも利用できるのではないか、というお話をたくさんいただいたので、弊社でもWorkReportを使って業務の見える化を始めているところです。
利用者が時間の意識を持って業務遂行することができ、意識改革にも貢献できるという狙いもあります。
WorkReportの概要:
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ー どのようにして、業務を見える化するのですか。
舟橋: 画面に表示されている作業をタップすることで、作業の開始時間や終了時間の登録ができます。たとえば、私が今日16時から18時までインタビューを受けるという作業を登録しているとすると、作業を開始する16時に一度タップして、作業が終了した18時に再度タップすれば、実際の作業時間の登録ができます。
意識を変えなければ変化は継続しない
ー 舟橋さんが考える、究極の働き方の改革とは何でしょうか。
舟橋: 制度と仕組みと意識ですね。制度は、社内のルール。仕組みは、ソフトウェアやハードウェア。あと、各社員の意識が変わらないと、瞬間的な変化はできてもそれを継続することができません。
社員の意識を変えることは非常に難しいのですが、その困難な部分に画像や動画、音声を活用しています。画像などであれば、若手も投稿や反応をしやすいので、コミュニケーションが活性化します。コミュニケーションが変わり、結果的に社員の意識が変わるというところに弊社は到達しつつあると感じています。
たとえば、今までは落とし物があっても見て見ぬふりだったのが、写すだけなら落とし物があったことを教えてくれる。チラシのラックが空だった場合、今までは部署が違うと何もしなかったのですが、写すだけなら空だと伝えてくれる。画像や動画は非常に高いポテンシャルを持っているので、もっと活性化させることで、社員の意識を変えることにつながると思います。
そうなると、今日より明日、明日より明後日の方が業務が改善され、よりよい会社になっていくのではないかと思います。
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