2019/9/20

物理セキュリティ新時代 (3) 映像監視技術の進化

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あらゆるものにつながるカメラの仕組み

DNPは、企業がオフィスビルや工場などを新築、移転する際などに、オフィスや工場全体のセキュリティ対策の支援も行っています。セキュリティレベルに応じた必要な対策、入退管理システムや監視カメラ/監視システムなどのご提案から、ご要望や環境に合わせたソリューションの選定・提供まで行っています。

あるお客さまから、新工場の建設を機に、国内にある全工場の監視カメラの映像を、本社でもリアルタイムで確認できるようにしたいというご相談を受けました。新工場、既存工場ともに、複数メーカーのカメラが多数設置され、録画システムも工場ごとに異なるものが導入されていました。全ての映像を本社のシステムで見られるようにするためには、追加コストや工期が必要になるかと思ったのですが、「ArgosView(アルゴスビュー)」を使えば、お客さまの要望に容易に応えられることが分かりました。

本コラムでは、この「ArgosView」を開発したパナソニック ネットソリューションズ株式会社様と、「ArgosView」の販売を担当されているパナソニック インフォメーションシステムズ株式会社様にインタビューした内容をご紹介します。

パナソニック
ネットソリューションズ株式会社

常務取締役 
猪原 正敏 様 Masatoshi Ihara

パナソニック
インフォメーションシステムズ株式会社

エンタープライズソリューション事業部
施設空間ソリューション部
部長
横地 朋洋 様 Tomohiro Yokoji

パナソニック
インフォメーションシステムズ株式会社

エンタープライズソリューション事業部
スマートファクトリー担当
主幹
作本 直樹 様 Naoki Sakumoto


※所属・肩書などは、2019年7月取材時のものです。


メーカーの枠を越えて「つながる」

ー 基本的なことから教えてください。まず、「ArgosView」はソフトウェアなのですか。

猪原: はい。VMS(ビデオ・マネジメント・システム)と呼ばれるジャンルの製品です。VMSは、ビデオ・マネジメント・ソフトウェアとも言います。「ArgosView」は、ネットワークカメラで映像を収集・録画して、ユーザーに見ていただく仕組みをコントロールするソフトウェアです。国内ではハードウェアでコントロールすることが多いのですが、海外ではソフトウェアが多いように思います。


― なぜ国内と海外で事情が違うのでしょうか。

猪原: あくまでも印象ですが、国内では、電気工事の業者から、カメラとレコーダーのハードウェアをセットで買って設置することが多いのではないでしょうか。海外では、カメラのメーカーからして大小多数あり、1社の製品では、まとめて管理できないので、ソフトウェアで接続するマルチベンダー対応のものが中心になったのではないかと思います。


― マルチベンダーとは、「ArgosView」の場合、具体的にどういうことでしょうか。

横地: ごく簡単に言うと、インプットとアウトプット、どちらも自社製品だけでなく、多くのメーカーのいろいろな製品に対応することです。インプットはカメラですが、ソフトウェアを使うと、新しいデバイスが出てきても柔軟に対応できます。アウトプットについては、一般的なPCやスマートフォンなどにも対応できます。


― はじめから、ハードウェアではなく、ソフトウェアを使うことを考えていたそうですが、なぜですか。

猪原: 技術的に面白かったことがきっかけです。1996年の創業当時われわれのチームは、メール、ウェブ、ファイアウォールといった、オープン系のシステムをやっていた技術集団でした。そこに、偶然、ネットワークカメラを手に入れる機会があり、ウェブシステムと連携させてみたところ、自分たちがいつも使っている技術で映像が見えるのが、非常に面白かった。じゃあ、これを使って外から会社の中を見てみようとか、映像を録画してみようとか、最初は本当に遊び感覚でした。

少しずつその面白さが積み上がっていくと、これは実はもっと使えそうだという手応えが出てきまして、それで、他社製のカメラを使って、おそらく日本初だったと思いますが、その映像を録画するサービスを始めました。


ー 最初に使ったカメラが他社製ということは、最初からマルチベンダー対応だったんですね。

猪原: 当時パナソニックでは、まだネットワークカメラを作っていなかったのです。われわれがいろいろな場で発表していたら九州松下電器株式会社(現 パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社)から声がかかって、実はカメラを作るんだけど何か一緒にできないかという話になりました。

2000年頃には本格的に業務となり、それを1つにまとめようということで、2003年に「ArgosView」のバージョン1.0をリリースしました。


【 ArgosView コンセプト 】




ー 御社はもともと社内ベンチャーとして始まったそうですね。マルチベンダー対応という点から、創業した頃のことを教えてください。

猪原: いまのパナソニック ネットソリューションズという社名になったのは、今年の4月です。1996年に創業したときはヴイ・インターネットオペレーションズ株式会社(以下 VIO)という名前でした。

当時はインターネットが世の中に普及し始めた頃でしたから、インターネットを使って何ができるかやってみようというのも、VIO設立の動機の一つです。街中にカメラを付けるのも大変だった時代で、当然、メーカーもクローズドでやるほうが話は早かったと思いますが、私たちは、「つながるモノをつくる」という発想しかありませんでした。


ー クラウドコンピューティング全盛の今日から見れば、先見の明があったわけですね。とはいえ、仕様が異なる各社のカメラに対応するのは大変だと思うのですが。

猪原: 市場を立ち上げる時期だったからなのでしょう、カメラメーカーとしても、とにかく販路やソリューションを増やしたいという意識は強く持たれていたように感じます。そこで、こちらにはこういうソリューションがあるので連携させませんかと、具体的にお話させていただくと、それほど抵抗はなく技術情報も開示いただけました。簡単に教えていただけたわけではありませんが、当時、折衝で培った人間関係が今でも非常に役に立っています。


ーいまでこそクラウドサービスが一般的なものになりましたが、当時の、しかもハードウェアが強い分野で、他社製品をつなぐということは、パナソニックグループとして問題なかったのでしょうか。

猪原: そこはなかったです。実際の現場に録画システムを見に行くと、パナソニックだけではなくて、いろいろなベンダーのカメラが入っています。規模が大きくなるほど、それらも組み込みつつ、全体として、1つのシステムにしなければいけないシーンがどうしてもでてくるわけです。そういった場面に、「ArgosView」はとても適しています。


ー 全部パナソニック製品で固めようというわけではないのですね。

作本: カメラは7年とか10年とか長く使うお客さまが多く、まだ3年しか経っていないカメラを買い換えてくださいというのは無理があります。お客さまとしてもいろいろなお付き合いを持っていらっしゃいますし、この地域はこのメーカーでないと、なんてこともあります。

猪原: それから、初期の頃はネットワークカメラの売り上げもそれほどなかったので、グループの中では見過ごされがちでしたし、カメラに限らず当時はグループの中で競合している商品も少なくありませんでした。

そこから事業をまとめていくときに、それまでのパナソニックの録画システムだけではできない領域を、マルチベンダー対応だった「ArgosView」が補完する格好で進めていくことになりました。結果として、豊富な選択肢を持つ柔軟なシステムに成長できたと思います。


ー セキュリティ対策はどうでしょうか。特定のメーカーで固めた、いわゆるクローズドなネットワークとは事情が違いますか。

横地: やはり、映像をクラウドで貯めておくということは非常に気を遣うべきところですので、「ArgosView」では、録画データの暗号化、通信の暗号化、2段階認証、ワンタイムパスワードなどを、お客さまに選択していただけるようにしています。ただし、他社製品も含めてすべてを同じようにはできないので、そこは場合によりますが。


「ArgosView」のいまと、将来への取り組み

ー 工場ごとに録画システムがあって、そこに組み込まれたカメラも工場ごとに異なる。という環境であっても、本社などで、各工場の様子を見ることができるのですよね。

横地: リアルタイムでも見られますし、何かあったときに録画を見返すこともできます。将来的には、スマートフォンのチャットアプリに通知を送るとか、映像を切り取って関係者へ送付する構想もありまして、すでにベースの技術はでき上がっています。

遠隔地の映像を見る目的は大きく3つあると思っているのですが、ひとつは、何をしているのかをリアルタイムで見る、録画で振り返るというもの。もう一つは、何かが起こったときに通知を受けて、何があったのかを確認する。そしてもう一つ、何かが起こることを予測して、それに対応することです。


ー 何かが起こるのを予測するというのは、たとえば、どんなことですか。

横地: 工場の例で言いますと、映像以外のさまざまな数値データを「ArgosView」と連携して、解析し予測まで行うという実験をある製造工場でやっています。映像を撮って、その中で何らかの数値がアラートを発していたら、その場所を録画にマーキングして解析します。そしてさらにAIで解析して、予測を配信するというものです。

たとえばですが、カメラにサーモフィルターを付けると温度が分かります。それで工場内の温度変化を見て、保安や防災につなげる。機械が壊れるときには、だいたい熱を発します。そういうことを見える化して、さらに予測できるようにしていくわけです。

作本: 現在送れるのは映像と数値だけですが、それ以外の要素も必要と考えています。音声も送れるようにするとか。そうすると、工場は騒音があって普通のイヤフォンとマイクではダメだから、骨伝導がいいのかなとか、考えることがどんどん増えていってしまう。(苦笑)

技術をつなぎ、社会の期待に応えるプラットフォームへ

ー 遠隔で映像を確認して、予測してアドバイスして問題を未然に防ぐことができて、生産効率も上がるとなると、さまざまな問題を解決するプラットフォームに発展しそうですが、「ArgosView」の将来のバージョンについては、どのようなイメージをお持ちですか。

猪原: 
映像にはとても力があります。たくさんの情報を持っているからなのですが、これを活かせるカタチをもっと追及していきたいと、強く思っています。VIOを創業した頃から、あらゆるものがインターネットにつながるという仮説はありましたが、当時はまだ名刺にメールアドレスも書いていない時代です。インターネットは遊びだ、ブームはすぐに終わると言われながらも、あらゆるものにつながるカメラの仕組みをつくり続けてきましたから。

作本: 将来的に労働人口が減っていくという社会的に大きな課題がある中では、人の代わり、人の目の代わりといったものを、この仕組みで実現することも使命の一つと考えています。数値や、音や、それらを解析、統合していって、社会的な課題を解決できるようなプラットフォームにまで進めればいいですね。

私たちのポジションはちょっと面白くて、パナソニックという国内大手のカメラメーカーとデバイスメーカーがそばにいる。ソリューションをやっていて、ソフトウェア開発もやっています。技術があっても独立系のソフトウェアメーカーではできないことがあるので、そういったことを探しに行って、一緒にやりませんかと言える。IoTであらゆるものがつながっていく時代に、パナソニックグループだからできること、われわれだからできることを活かして、社会の期待に応えることができるといいなと思います。

■ArgosView 導入事例:
https://www.argosview.jp/case/

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