2019/9/27

物理セキュリティ新時代 (5) 社員食堂は変わる - 支える技術 -

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DNPは、オフィス・工場セキュリティと併せて、オフィスや工場の社員食堂や売店向けに、キャッシュレス精算システムなどをご提案しています。その中で、ここ20年程度の間に社員食堂のイメージが大きく変化していることを実感してきました。そこで今回は、社員食堂の在り方について考えてみたいと思います。社員食堂の運営・管理を手掛ける企業、食堂運営に関連するシステムの開発に携わる企業の皆さまに、社員食堂が変わってきた理由や今後どう変わっていくのかなど、お話を伺いました。

本コラムでは、社員食堂にも採用されている キャッシュレス精算システムやセルフ精算システム、バイキング形式で食べたいものを食べたい量だけ取って精算できる量り売り型のグラムデリ・システムなどを開発されている、株式会社寺岡精工(以下 寺岡精工)様にインタビューした内容をご紹介します。

寺岡精工様は、人から受託してモノをつくるのではなく、新しい常識を自分たちでつくっていこうという社風の技術者集団で、創業以来今日まで、新しい常識を創造することに積極的に取り組みつづけています。



社員食堂は変わる -支える技術-



株式会社寺岡精工
ホスピタリティソリューション事業部
事業部長
千田 和明 様
Kazuaki Senda


※所属・肩書などは、2019年7月取材時のものです。



POSレジもクラウドも自前でつくる技術者集団

──貴社は、いまでは全国の店舗を繋ぐクラウドソリューションも提供されていますが、始まりは量り売りで使うバネ秤の製造だったそうですね。どのような変遷があったのでしょうか。

千田: 創業以来、主なクライアントは流通業、とくにスーパーマーケットでした。成長する業界に需要を感じて「電子秤」を生み出しました。電子秤が当たり前になると、マーケットの常識を打ち破り、量ってパックしてラベルを貼る「自動包装機」を生み出しました。最近では、「セルフレジ」の販売を国内で開始するなど、ソリューションのプロとして、現在ある常識に縛られずに、お客さまの期待に応えるお役立ちを追究し続けております。

外食産業では、「POSレジ」や「セルフオーダーKiosk」に参入してきました。外食産業は流通業と違って短期間に多くの店舗を展開するので、それらをまとめて管理するシステムが必要になります。そこで、2001年にASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)サービスを始めました。自前で開発したPOSレジの上位にクラウドを作り、ネットワーク接続には専用線ではなく普通のインターネット回線を使いましたが、そのような形態は業界の中でもかなり早かったと思います。


──まだクラウドという言葉が普及していなかった頃ですね。当時はセキュリティ面でクライアントの不安は大きかったのではないでしょうか。

千田: 一番懸念されていたのは、他人のデータベースに自分のデータを置くことでしたが、それに対してはこう申し上げていました。家で牛乳を飲むときは牛乳パックを買ってきますが、牛を買い育てることはないですよね。同様に、データも人に預けておいて、必要なときに必要な分だけ買えばいいのではありませんか、と。


──セキュリティ対策について特徴的な仕様はありますか。

千田: クラウド側のセキュリティ対策をしっかりやるのは当然として、特徴としてはPOSのOSも自前で用意したことです。市場にはWindowsベースのものも多くありますが、弊社ではセキュリティ対策をしっかりと行うため、われわれでカスタマイズしたLinuxを使っています。カーネルにも手を入れ、ドライバも自前で作りました。


───LinuxベースのOSを自前で用意されたということですが、そのことによる利点や苦労されたことはありますか。

千田: セキュリティ対策もありますが、処理速度でも有利なのです。最終的にクライアントやお客さまのためになることであれば、そこに資金と人員を投入するのは必然的なことであって、大変だと思ったことはありません。もとから我々は技術者集団の会社です。技術の人間としてはWindowsよりもLinux、C#よりもC++が、むしろとっつきやすい。そのように自前で手を掛けていくことが、セキュリティ、スピード、さらに安定性の担保にもつながっていくと考えています。



決済方法の多様化にも迅速に対応

──近年は新しい決済手段が次々と登場していますが、投資と開発工数を理由に対応を限定してしまうケースもあるようです。貴社のレジはとても多くの決済方法に対応していますね。

千田: 決済には専門の部署を置いています。精算や会計に関するものをすべて担保することが、ベンダーとしての使命だと思っています。

いまは、業態や業種によって会計方法がさまざまで、駅ナカはSuica、郊外へ行けばEdy、国際空港ではアリペイやWeChat Payが主流です。しかし6~7割は現金ですし、クレジットカードもあります。一つのレジがポータルとなってそれらのすべてを管理することが、ユーザーへの貢献になるでしょう。そういった環境の中で、弊社のPOSや、お客さまにセルフで使っていただくタッチ注文KIOSKは、UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)が最重要で、しっかりと取り組み開発する必要があると思っています。



寺岡精工本社のカフェに設置されたセルフオーダーKiosk「Lio」: セルフでさまざまな決済方法に対応




スピードこそがホスピタリティ

──セルフ精算を重視されるのは、お客さまに作業を代わってもらうためだけなのでしょうか。

千田: いえ、そうではありません。私が所属するホスピタリティソリューション事業部には、スーパーマーケットでは常識となってきた「スピードこそホスピタリティ」という発想があります。

かつてスーパーマーケットではレジで延々と待たせられた記憶があると思います。この待ち時間を減らすために、弊社は、バーコードのスキャンから精算までお客さまに操作していただくセルフレジを開発したのですが、初期は受け入れられませんでした。理由の一つは、バーコードをスキャンする操作が難しかったことです。バーコードがどこにあるかなんてお客さまは意識したことがなく、店員さんの何倍も時間がかかってしまい、結果、お買い物の時間は以前と変わらなくなっていました。理由のもう一つは、店員さんが「ありがとうございます」と言ってお客さまにレシートを渡すという、サービス業の慣習でした。これが重要なんだ、それをなくすなんて寺岡さん分かってないなと言われてしまいました。(苦笑)


──なるほど、それが流通業に必要なことなんですね。

千田: 
しかし社内では、改めて、「スピードこそホスピタリティ」を追求したんです。バーコードをスキャンするのはお店のチェッカーさんが一番速い、ならば、スキャンはチェッカーさんに任せて精算だけをセルフにすればいい。この方式で、レジ待ちの行列も精算の時間も圧倒的に短くできました。これが、セミセルフ方式と呼ばれるものです。

このスーパーマーケットでの経験を活かして、外食産業でも、大手回転寿司チェーンで業界を先駆けたセルフ精算を実現することができました。店員さんがお皿をスキャンしてお客さまに会計札を渡し、お客さまがその会計札を持って自分で精算するという方式です。会計スピードを短縮し、お客さまをお会計の行列から解放したわけです。

さらに、外食産業の人手不足の課題やユーザエクスペリエンスに応えるソリューションとして、精算だけでなく、注文接客・厨房へのオーダー伝達・レジ会計までを1台でこなせるセルフKiosk「Lio」を開発するなど、​​​​​​店舗運営の効率化とユーザーエクスペリエンスを両立する新しい常識の創造、次世代型店舗構築のお役立ちを追究し続けております。



社員食堂におけるキャッシュレス、セルフ精算のメリット

──セルフ精算は、企業内の社員食堂でも運営の効率化やユーザーエクスペリエンスに効果がありますね。

千田:
 そうですね、スーパーマーケットや外食の体験からみても必ず効果があるでしょう。
社員が現金を持ち歩いて精算することにはさまざまな課題があります。お店側は釣り銭を用意し、閉店時に金銭集計する手間もある。ユニフォームへ着替えるような工場では、財布を持って歩くのも難しい。そういった問題もキャッシュレス決済やセルフ精算で解決できます。従業員さんのストレスの解消や、オペレーションの単純化にも貢献できます。


──とくに日本企業では昼休みの時間が非常に短いので、「スピードこそホスピタリティ」という方針は重要ですね。

千田: しっかりと食事と休憩の時間を取っていただくことは非常に重要ですし、外食と同様に、精算のために急いで席を立つようなことはできる限り減らすべきと思います。そのために我々のソリューションを広く使っていただけるのは嬉しいことですね。


──料理の注文もセルフで行う案件が増えているのですか。

千田: そうですね、ここではスマートフォンの登場が大きいです。昔はレストランへ入ってから食べるものを決めていました。今は、まずスマホで食べたいものを選んで、クーポンを探してから今日行く店を決める人が増えてきました。そのスマホから精算もできれば厨房にも伝達されるので、調理時間に余裕ができます。弊社が手掛ける社員食堂や定食屋などでも、前会計で注文を取るスタイルが増えてきています。ファストフードが典型的ですが、最初にお会計をして、食べ終わったら好きなときに出て行くのは、いまの生活では当たり前のスタイルと言えるでしょう。



24時間365日、現場経験7年以上のスタッフがサポート

──貴社のエンドユーザー様からは、修理や消耗品の提供も含めたサポート体制が非常に好評と聞いています。

千田: サポートは、全国で同じレベルのものを提供しています。外食では24時間営業の店舗もあるので、深夜の閉店処理で不具合が出ても対応できるよう、コールセンターが24時間365日のヘルプデスクとして機能しています。


──それもクラウドだから実現できたことでしょうか。

千田: はい、一次応対者が診断できるので問題の切り分けが早く、ソフトウェア的な問題は、その場でリモートで直します。ハードウェア的な問題ですと実際に出掛けますが、それについても深夜対応のサービスがあります。センターのスタッフは現場で7年以上の経験を積んだ者に限っているので、電話でも状況を頭の中に描けるわけです。単に電話がつながるだけでなく、ヘルプし解決できるのが強みですね。

寺岡精工のコールセンター 2018年稼働実績



──サポートにおいても、スピードこそホスピタリティという方針が生きているように感じますね。そういった貴社の将来のビジョンについて教えてください。

千田: 我々は技術者集団と申し上げましたが、人から受託してモノをつくるのではなくて、新しい常識を自分でつくっていこうという会社です。技術こそが会社を成長させてきた歴史がありますから、新しいことに対して積極的な社風です。セミセルフのレジにしても、こういうものがほしいと言われてつくったわけではありません。そして、つくったものをクライアント様へ伝えていくことでクライアント企業のビジネスを支え、ひいては生活者であるお客さまによい体験を提供できると考えています。

社員食堂は今後も企業にとって重要なものと思います。医食同源と言うように、食堂は元気の源でもありますね。食べると体も心も元気になる、みんなの明るい顔が本当の源だと思いますので、食品を安全においしく食べることは、企業にとっても考えるべきテーマの一つであるはずです。そのためには、我々の分野を究めつつスーパーマーケットと手を結んできたように、コントラクト企業や料理をつくる方々、それを提供するクライアント企業とも情報交換し、社員食堂の世界でも、しっかりとした地位を獲得していきたいと考えています。


寺岡精工様のホスピタリティ関連ソリューション:
https://www.teraokaseiko.com/jp/business/hospitality/


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