2017年8月7日

電気通信大学と人間のジェスチャーを学習する人工知能の研究を開始

相手の言葉や表情に合わせた最適な返答とジェスチャーを行う「表現AI」の開発に着手

大日本印刷株式会社
国立大学法人 電気通信大学

大日本印刷株式会社(DNP)と国立大学法人電気通信大学の長井隆行研究室および中村友昭研究室は共同で、AI(Artificial Intelligence:人工知能)が、人間の言葉や表情、ジェスチャーに合わせて、自動的にその返答とジェスチャーを生成する「表現AI」の研究を開始しました。この研究成果として、情報デバイス(ロボット、チャットボット*1、デジタルサイネージなど)が、ジェスチャー付きで会話を行う、「表現AI」のプロトタイプを2017年度中に開発し、その後、実際の情報デバイスを利用した自動プレゼンテーションの実証実験を行う予定です。今後、店舗での案内やECサイトなどでの顧客対応といった生活者とのコミュニケーションを支援するサービスへの展開を目指していきます。

【共同研究の背景】

労働生産性を上げる手法の一つとして、AIの活用による業務革新やイノベーションの創出が期待されています。それに対してDNPは、人間と多様な情報デバイスとの円滑な情報のやり取りを支援する「知能コミュニケーションプラットフォーム」*2の構築を2014年11月から進めています。これは、AIを活用した音声や映像を組み合わせた分析により、各種情報デバイスが相手の状況を推定して適切なコミュニケーションが行えることを目指しています。しかし、現在のAI技術では、音声(言語)や映像(動作や表情など)を個別に分析することが可能ですが、言語とジェスチャー・表情などの相関関係づけは、人間の判断(プログラマーによる設定)が必要でした。
一方電気通信大学は、AIが自律的に概念を学ぶ方法として、人間の成長過程と同様に、周囲の状況を観察・行動しながら異なる相手との相関関係を分析して自律的に成長していく「記号創発ロボティクス」*3の研究を進めています。これにより、人間の発する言葉やジェスチャーなどの意味を機械が理解し、より円滑なコミュニケーションを実現する基盤技術の確立を目指しています。
両者は、今回の共同研究を通じて、AIによる言語とジェスチャー・表情などとの相関分析の自動化を目指します。

【共同研究の概要】

AIが、人間のジェスチャーや表情、言語から相手の状況を自律的に分析し、返答するテキスト情報(言語)やジェスチャーなどを自動的に生成する「表現AI」を開発します。
1. 文章からジェスチャーを自動生成するライブラリの開発
大量の人間の映像情報から、自動的に返答する言葉とジェスチャーを合わせて抽出する教師なし学習*4の手法により、その相関関係を分析したモデルを構築することで、人手による設定がなくても言語に合わせた適切なジェスチャー表現を自動生成できるライブラリを開発します。
2. 1.で生成した「ジェスチャー情報」を形状の異なる情報デバイスで再現
コミュニケーションロボットをはじめとしたさまざまな情報デバイスのモジュールを調整することで、ジェスチャー表現の自動生成の実用化を目指します。

【今後の展開について】

今回の共同研究を元に、電気通信大学は、AIが自分という概念を持ち、どのように自分を表現するかという、より一般化した「表現AI」の研究を発展させていきます。ロボットの表現を、ジェスチャーだけでなく、発話やその意味内容、表情などを含めた総体として捉えることで、より生き生きと人に語りかけるロボットの開発に繋げていきます。
DNPは、「知能コミュニケーションプラットフォーム」の機能を向上させるとともに、本プラットフォームを搭載し、コミュニケーション機能の進化したロボットやチャットボット、デジタルサイネージなどを店舗や各種施設、イベント会場などで活用していきます。それにより、企業の店舗運営における業務の効率化を支援するとともに、企業と生活者とのコミュニケーションを深めることで、新商品開発や新規事業の発掘などに繋げていきます。
なお本共同研究は、電気通信大学人工知能先端研究センター(詳細は http://aix.uec.ac.jp/)が掲げる『人と共生して対応できる汎用性の高い人工知能システム』の実現の一環として取り組んでいます。DNPは同センターに参加し、出版、教育、およびマーケティング分野等においてAI技術の実用化研究や社会実装を促進するため、同大学との連携を強化していきます。 

*1 チャットボット : パソコンやスマートフォンの画面上でキャラクターなどがチャット形式で自動応答する仕組み。
*2 「知能コミュニケーションプラットフォーム」 : 音声認識機能のほか、発想や対話などのコミュニケーションに必要な知能処理機能により、対話を行う生活者の属性や反応、意図を分析して、生活者に最適な情報を発信することにより、人と様々な情報デバイスとの間で、自然で気の利いた対話の実現を目指すシステム。
*3 記号創発ロボティクス : 人間が成長過程で言語や運動能力を得るプロセスを視覚・聴覚・触覚センサとモーターを持つロボットで再現することで、人間の学びを工学的に実現し自律学習する汎用人工知能を開発する試み。
*4 教師なし学習システム : 膨大なデータを自動的に解析し、算出した特徴量から法則や傾向等を導き出す手法。

※記載している会社名・製品・サービス名は、各社の商標または登録商標です。
※ニュースリリースに記載された製品の仕様、サービス内容などは発表日現在のものです。その後予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
※大日本印刷株式会社   本社:東京都新宿区  社長:北島義俊  資本金:1,144億円
国立大学法人 電気通信大学  所在地:東京都調布市  学長:福田喬

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