2022年11月29日

ディスプレイのぎらつき現象の測定精度を高める「ぎらつきコントラスト評価手法」を考案

世界的に権威のある論文誌「Journal of SID」の「Best of IDW2020特集」に掲載

大日本印刷株式会社(DNP)は、光の映り込みを防ぐ「防眩(ぼうげん)フィルム」を貼ったディスプレイ表面のぎらつき現象の測定において、測定評価に含まれる誤差を簡易に確認できる「ぎらつきコントラスト評価方法」を考案しました。この方法では、1件のディスプレイ画像から2つの異なる画像を抽出し、その2つの画像データの差分を統計処理することで、測定技術者の知見に依存せずに、データ間の誤差を簡易かつ定量的に推定できます。その結果、より適切なデータ比較が可能となり、評価結果の精度の向上につながります。

毎年行われるディスプレイ技術の国際会議「IDW(International Display Workshop)」にて、2020年に、DNPが講演したこの手法が学術的にも高く評価され、世界的に権威のある論文誌「Journal of the Society for Information Display(Journal of SID)」の2022年9月号「Best of IDW2020特集」に論文が掲載されました。

DNPが考案した測定画像からの2画像の切り出し例。1件のディスプレイ画像から抽出した2つの画像データの差分を統計処理する。

【「ぎらつきコントラスト評価方法」の背景とDNPの取り組みについて】

パソコンやスマートフォン等のディスプレイでは、外光や照明等の反射・映り込みを低減するため、ディスプレイ表面に防眩フィルムを貼るなどの対策を施しています。しかし、防眩フィルムの表面にあるミクロな凸凹の形状と光を発するディスプレイの画素が重なり合うことで、不規則な粒状ノイズが発生し、観る人の目には「ぎらつき」現象として知覚されることがありました。近年は、ディスプレイの高精細化にともない画素サイズと防眩フィルムの表面構造が近づくことで「ぎらつき」がより目立ちやすくなり、ぎらつき防止技術のニーズが高まっています。このような現象に対して、防眩フィルムメーカーのDNPは、顧客である最終製品メーカーとの測定データを介した円滑なコミュニケーションと開発速度の向上を図るため、2015年に、ぎらつき測定の光学測定原理についての研究を本格的に開始しました。2020年には、ディスプレイ表面に発生するぎらつき現象に関して、異なる測定装置や測定条件での信頼性の高い客観的データの取得に必要な光学測定原理を解明しています。今回DNPは、撮像したディスプレイ画像の測定領域の取り方や、ディスプレイ自体の輝度ムラ等に起因するさまざまな誤差を簡易的かつ定量的に評価する手法を考案しました。

防眩フィルム有無での画像比較例。(左)ディスプレイ(防眩フィルム無し)、(右)防眩フィルムを重ねたディスプレイ黒色の微細な濃淡部分が「ぎらつき現象」。

【DNPが解明した「ぎらつきコントラスト評価方法」について】

従来の測定評価手法では、撮像したディスプレイ画像のどの部分をどのサイズで評価するかについての明確な指針がなく、誤差の考え方も含めて測定技術者の経験値に大きく依存していました。また、評価結果に含まれる誤差の推定には、測定条件や測定領域をさまざまに変えて検証する必要があり、膨大な検証データに基づいて、最終的な測定条件を決定していました。

こうした状況に対して、DNPが考案した「ぎらつきコントラスト評価方法」では、ディスプレイ画像上のぎらつき構造のランダム性に着目し、1件のディスプレイ画像から2つの異なる画像を抽出し、その画像の差分処理と統計処理を組み合わせることで、測定評価に含まれる誤差を指標化することに成功しました。その結果、ぎらつきコントラストの計算領域の取り方に起因する統計誤差や、その領域内でのディスプレイの輝度ムラの影響度などを指標から推定することが可能となり、測定の精度や再現性の向上が期待できます。

【今後の展開】

DNPはスマートフォンやTVモニターなどさまざまなディスプレイの高精細化により誤差のない評価が重要になるなか、今後もぎらつきコントラストに関する最新技術の開発に取り組み、学会などで発表していきます。また、これらの研究開発で培った技術をDNPが開発・提供するディスプレイ用の防眩フィルムの性能向上に展開していきます。


■掲載された論文情報

“Error Analysis of Sparkle Contrast by Applying Image Subtraction Method”,

Makio Kurashige, Gen Furui, Kazutoshi Ishida, Shumpei Nishio, Mitsuhiro Kuzuhara, Hiroko Suzuki, Jun Tsujimoto, Masayuki Tsunekawa, Yukimitsu Iwata, Norinaga Nakamura,

J. Soc. Info. Display 30/9, 680-689 (2022)

https://doi.org/10.1002/jsid.1109


■DNPのディスプレイ用の防眩フィルムについて

DNPは、1999年からディスプレイのぎらつきの目視による官能評価試験を数値化する評価方法を独自に構築し、学会での報告や特許取得などを行い、その技術に基づく「ぎらつき防止防眩フィルム」を開発してきました。DNPの「ぎらつき防止防眩フィルム」は、ディスプレイ表面のぎらつきを防ぐとともに、外光や照明などの映り込みを低減します。高精細で高コントラストな画像表示に優れており、2000年代初期から現在まで、さまざまなメーカーの各種ディスプレイに採用されています。その寄与もあり、DNPは、ディスプレイ表面処理フィルムで世界No.1のシェアを獲得しています。(「2022年版ディスプレイ関連市場の現状と将来展望」(株式会社富士キメラ総研)2021年実績)


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