大学時代は物理化学を専攻していました。もともと実験が好きで、社会に出てからも技術系の仕事で自分を高めたいと思い就職活動に臨みました。さまざまな企業を見る中で、自社内に研究チームを有し、印刷領域にとらわれることなく多様なテーマのモノづくりを追求するDNPに関心を持ち、入社にいたります。
最初の配属先はディスプレイ関連の研究を行う部署でした。大学時代の研究内容とは直接的な関連はありませんでしたが、自分自身がもっと深く研究してみたい分野として希望したのです。配属されて驚いたのが実験を行う環境でした。「学びを高める机上の研究」を大学の環境とするならば、DNPは「多様なモノづくりをゴールとする実践的な研究」。社会貢献やビジネスという具体的な目標が研究の向こう側に明確に見えているのです。研究用の機材はいい意味で使い込まれ、在籍するメンバーもプロの研究者という様相。私自身も身が引き締まりました。
研究対象はモバイルの画面などに使われるカラーフィルターでした。私を含む部署のメンバー全員で最先端の技術領域に取り組んでいました。新しい製品につながっていく研究は時として前例のないことに踏み込むことも要求され、決して一筋縄ではありません。メンバー間で意見を交わし、最適解を探すのに必死でした。しかしながら、まだ誰も見たことのない製品の輪郭が少しずつ見えてくると素直にうれしいものです。そしてその喜びはメンバー全員が共通のものとして持っていました。
技術者として5年目を迎えた頃に第一子を出産します。そして育休からの復帰。その際には「あなたの技術者としてのキャリアはまだまだ続いていく。それならば知的財産のノウハウを吸収してみては?いずれ新製品開発の場面でプラスになるから」という上司の勧めで研究職から知財管理業務へと活躍の場を拡げます。少し寂しい気持ちもありつつも、研究の現場から離れたことで自分自身のこれからについて考える良い機会となりましたし、知財管理業務を通じて、たくさんの社員と接点が持てたことも良かったです。それから数年後に第二子を出産します。子育てと仕事の慌ただしい日々でしたが、努力や成果を認めてくれる組織風土や上司や仲間の計らいもあり、気負うことなく頑張ることができました。