PROJECT STORY 02

真空断熱材

熱を制御する技術で
物流現場に変革を起こす

研究開発職

ABセンター

2005年入社。研究開発センターに配属。次世代エレクトロニクス製品開発業務に取り組んだ後に、人財開発部に異動。大卒理系採用業務を経て、現在はABセンター第1本部にて真空断熱材用パウチ開発やモジュール開発に関するマネジメント業務に従事。

営業職

高機能マテリアル事業部

1996年入社。建材事業部(現・生活空間事業部)に配属。建材研究所で開発業務に携わった後に、本社研究部門である物性分析研究所に異動、物性評価、現場解析などに従事する。本社開発部門で開発担当した熱関連部材が事業化し、23年目より高機能マテリアル事業部営業第3本部に所属となり、開発のみならず営業まで担当している。

印刷技術から発展した熱を制御する技術は、電力を使わずに一定の温度を保つ真空断熱材をつくり上げ、それを活用した「DNP多機能断熱ボックス」へと発展を遂げた。
目指しているのは優れた製品を提供することではない。その製品や技術を通じて世の中を変えていくことだ。2人の目は、日本だけではなく世界に向いている。

  1. 暮らしの身近なものにも
    DNPの培ってきた技術が

    真空断熱材をはじめとするDNPの技術の強みについてまずは教えてください。

    印刷技術の進化とともに事業領域を拡げてきたDNPは多様な技術を持っています。大小の規模や種類を問わず、特許を取得したものを数えるとグループ全体でおよそ1万2,000種類ほど。情報セキュリティ関連からエレクトロニクス系の部材など非常に幅広い製品・サービスの中で、みなさんの暮らしの中で特に身近なものといえば食品や飲料、生活用品向けの包装材でしょうか。

    例えばスナック菓子の袋などがそうですね。あれは実は2~4層ものフィルムを重ねることで、充填した窒素が出ないように、また、外部からの紫外線や水蒸気・酸素が入らないようにして食品の品質をキープしています。元をたどれば、印刷の「塗る」「貼る」という工程の応用です。真空断熱材もそこから発展した領域のひとつです。レトルトカレーなどを入れる包装材をレトルトパウチと呼ぶのですが、パウチにグラスウールなどの無機材料を入れることで真空断熱材へと変化し、さらに中身を電解液にするとリチウムイオン電池用バッテリーパウチに変化します。

    食料品を密閉していたものを、中身を変え、内部を真空にする。そうして、断熱材として、いわば「魔法瓶」のような働きをするものをつくり上げました。すでにある素材や加工技術を応用、発展させ、さらに視点を変えて用途を拡げていくのは私たちが得意とする部分でもあります。

  2. 「光」の次は
    「熱」をビジネスに

    そもそも真空断熱材に取り組むきっかけはなんだったのでしょうか?

    世の中にはさまざまなエネルギーが存在しています。例えば、光や熱ですね。制御が難しいと言われている光について、DNPは高い制御技術を有していると評価されており、ある時、熱の領域でも価値を生み出せないか?と着想しました。

    光が制御できるのだから、熱もできるのではないか、ということですね。ある種の技術的好奇心のようなものですが。熱を切り口とした新ビジネスの創出に向けて動き出したのが数年前のことで、さまざまなチャレンジの成果が「DNP多機能断熱ボックス」でした。

    技術の応用。まさに得意とする分野ですね。

    もちろん得意分野ではありますが、技術の応用はあくまで手法。まずは熱に関するニーズを探るところからスタートしています。真空断熱の技術を必ず活かせるという自信はありましたが、そもそも世の中にどういった課題があるのか、どんなシーンで熱に関する技術が必要になるのか、ということにまずは目を向けました。

    断熱材と親和性の高い家電製品の領域での活用方法も検討しましたが、すでにメーカーが自社で作っているケースも多い。それならば、まるっきり違う世界に目を向けてみようと考えました。

  3. 物流業界の
    課題解決に勝機を見出す

    照準を合わせたのは、生活者からのニーズも多く、急成長しているその裏で、ドライバー不足や環境への負荷などさまざまな問題も山積する物流業界でした。そして、そこからさらに突き詰めていったのが「食に関する物流」でした。これは日本だけでなく、世界規模で関心が集まっている領域です。DNPが掲げる4つの成長領域のうちの「食とヘルスケア」「環境とエネルギー」にも合致していました。

    実際にどのようなことをしたのでしょうか?

    キーワードとなったのは「混載輸送」です。通常、食材は傷まないように冷蔵・冷凍ができる特殊なトラックで運びますが、一般的なトラックに混載(普通の荷物と食材を一緒に載せる)できれば、特殊なトラックは不要ですし、人手の確保も最低限で済みます。その答えとして形にしたのが「DNP多機能断熱ボックス」でした。

    「断熱性に優れた箱そのものが食材の温度をキープするので、トラック自体に冷やす機能はなくて良い」。発想は極めてシンプルですけれど、DNPの真空断熱技術があるからこそできることですよね。

    そうですね。私は元々技術者で、開発の段階から携わっていましたが、運送事業を担うグループ会社、DNPロジスティクスをはじめとする企業と連携しながら、本当に現場で役立つかという実証実験まで行いました。これは、実際に使う人の立場に立ってつくり上げるという、DNPの技術者が大事にしているマインドです。

    「DNP多機能断熱ボックス」の得意先からの評価はいかがですか?

    「電力がいらないし、折りたたみ式でコンパクトになるので取り扱いが楽」「特殊な操作や知識が不要で誰でも使える」。そういった声が多数寄せられています。簡単に言ってしまえば「非常に高い断熱性を持つクーラーボックス」です。マレーシアの飲料メーカーの例ですが、一定の温度で品質を保持する必要のある飲料などは、冷蔵トラックを利用するのが一般的です。しかし、冷蔵トラックへの改造費やメンテナンスなどで非常にコストのかかることもあり、なかなか冷蔵での運送が難しい環境でもありました。特に、気温の高い国でもあるため、普通のトラックで運び、高温で劣化してしまい、廃棄せざるを得なくなるといった状況もありました。そこに「DNP多機能断熱ボックス」を導入することで廃棄ロスが減少したという成果も耳に届いています。

  4. ビジネスの可能性を
    技術の掛け算で拡げる

    新たな取り組みにも着手されているのでしょうか?

    私が所属するABセンターは、社会課題やビジネスの現状、生活者や企業のニーズを踏まえ、技術などのDNPの強みをどのように活用、応用発展させ、新規事業を生み出すかまで視野に入れた組織です。ひとつの製品をリリースしたら終わりというわけではなく、そこからの発展への意識が強くあります。「DNP多機能断熱ボックス」を例にすれば、蓋を開ける際に侵入する外気がエネルギーのロスを生み出すことがわかっていましたので、最初から蓋を開けなくてもいいような仕組みにも目を向けています。DNPが事業展開しているICタグのソリューションビジネスを活用し、箱の外から中のICタグを読み取ることで、蓋を開けなくても中身を認識できるようにと、ハイバリア透明フィルムの活用などを進めています。実際に使用している得意先の声も参考にし、今も改善を続けています。

    今後の目標について教えてください。

    断熱技術で一定の評価と認知を得てきた今、食品物流以外の引き合いもいただくようになりました。今私が着目しているのは資源の輸送に関すること。例えば中東から輸送される天然ガス類は、輸送中に揮発して容量が目減りし、損失につながるケースも。この課題を、断熱技術を応用して解決できないかと試行錯誤していますが、新しい領域に展開することで、環境にやさしい社会づくりに貢献し、「未来のあたりまえ」を実現していきたいです。

    日本でも特に夏期の気温上昇などもありますので、物流に関しては多機能断熱ボックスを活用できる場面はたくさんあります。そもそも何に対して取り組むのか、コンセプトアウトの考えを持った上で取り組んでいく必要があります。そして、つくり上げる際には、1に1を足して2にするのはあたりまえで、掛け合わせなどの相乗効果で3にも5にもできるのはやはり長年培った基盤技術があってこそです。基礎、応用、そして新技術を掛け合わせていくことで新しい価値をつくることができる、DNPならではの取り組みを続けていきたいですね。

    ※掲載内容は全て取材当時のものです。