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大竹伸朗個展「Man is basically good」
毛利義嗣[高松市歴史資料館]
 
福島/木戸英行
東京/南 雄介
倉敷/柳沢秀行
高松/毛利義嗣

 展示されているのは、82年から2000年までの絵画31点と、90年のシップヤードワークスのシリーズ。絵画は今回新しくコレクションされたものだそうです。で、オープニング行ってきました。
 大竹さんの展覧会はけっこうあちこちでやっているんですが、こういった回顧展的なものはあまりなかったと思います。絵画は全部アトリエにあったものだそうで、多くの作品の中からキュレーターの秋元さんがチョイスしたという、まあ「極私的・伸朗のキモ」といった趣きでしょうか。
 大きめの絵はギャラリーに展示されているんですが、ほかにもカフェや図書室など館内外のいくつかの場所に作品があって、それぞれのサイトの間をトコトコ歩いて見ているうちに、ああ大竹さんの作品というのはこういう風に見るのがいいなと、思ったものです。つまり、そこに作品があることがわかっていて見に行くのではなくて、ある距離と時間を歩いているうちに「あっナニカアルヨ」という出会いのリズムの方が心地いい。もっといえば本当は美術館ではないところで出会いたい、そんな感じでしょうか。
 まあ想像でしかないんですが、大竹さんの場合、絵というかアートというかそういうのは自ら作るというよりもふいに訪れるもののような気がします。もちろん、来る日も来る日も描かなければ気がすまない人だということですから、じっと待ってるわけではない。描いたり生活したり夢をみたりする中で全身の感覚が何か世界の「ナマ」に触れた瞬間にそれは訪れ、それを最速で奪い取り、もっと豊かにしてそっと世界に戻す。作品はナマがいい、で、その「ナマ」がアメリカ南部の街だったり、日本の平凡なアルミサッシの窓だったり、カラオケだったり、大分のワニだったり、雑誌の写真だったりして、作品のスタイルや形態はさまざまでなんですが、それを表わす手つきはどれも変わっていないでしょう。だから具体的で強い。そのためなのかどうか、どうも彼の作品にギャラリーの白い壁は弱すぎるように見えてしまいます。その点では、昨年この美術館が企画した「スタンダード」展への出品作、昔ながらの雑貨屋さんを舞台にした「落合商店」は、作品と壁との絶好のコンビネーションだったなあとあらためて思いました。
 オープニングといっても、顔見知りの直島の人たちも多かったせいか、大竹さんが(たぶん)めずらしく、自ら熱心にギャラリートークをしていたのが何だか印象的でした。Man is basically good、ということで。

大竹伸朗02大竹伸朗01 大竹伸朗によるギャラリートーク

会期と内容
会期:2002年4月27日(土)〜9月8日(日)8:00〜21:00 休館日なし
会場:直島コンテンポラリーアートミュージアム 香川県香川郡直島町琴弾地 tel. 087-892-2030
URL http://www.naoshima-is.co.jp/museum/index.html
入場料:直島村文化村入場料に含まれる。一般1000円/3歳以上小学生以下500円(※宿泊者は無料)
問い合わせ先:tel. 087-892-2030

学芸員レポート

 はい。この職場に来てからはや1年がすぎました。4月5月は異動の季節というわけで、各地で学芸員の不可思議な配置替えの話が聞こえてくるこの頃です。私の職場でもまた一人学芸スタッフが減りました。どころか、公立美術館自体が消えていく噂話もちらほら。文化不景気まっしぐらという感じですが、景気のいい頃には見えにくくなっていたこの社会の地金が出ているだけかもしれませんね。美術館とかの施設が必要不可欠と感じている人が多数派だとはあまり思えませんし、一般にはまああればあったで、ぐらいな。で、もちろん行政は経費節減ということで、いきおい法人化・民営化へすすむわけです。法人や企業のマイナスのあれやこれやがさかんに伝えられているこの時期にもかかわらず、です。継続性のある運営を行ないつつ採算をとるのはとてもツラいことは十分にわかっているわけですから、まあ実際には切り捨てですね。損しないことだけしろ、ボランティアを使え、というようなことで。ボランティアということばの意味を間違えている気がしますが。ま、貧すりゃ鈍すというところです。
 この共同体では、特に公立の美術館や博物館が提供してきたようなかたちでの美術とか芸術とかが精神的な支えのほんの一端にさえ普通はほとんどならない、ということに本当は気づいていながら景気のいい雰囲気にのって何となくそのままやってきた結果がこれですから、地域差はあっても、全体的には必然のなりゆきかもしれません。まあそれでも文化遺産的なものに関してはある程度は象徴的政治的に維持されていくんでしょうが、現代美術と呼ばれているような活動に関しては、美術館側からいえば減少または消滅、少し引いて客観的に見れば別のシステムへの移行、という方向は変わらないでしょう。具体的には、アーティスト自身による、あるいは各地のアートマネージメントシステムのネットワークによる活動であり、地理的な傾斜では、ますます海外とのつながりを強めていく、といったところでしょうか。
 さて、こうしてみてみれば、これらはむしろいい傾向のような気もしてきました。できれば美術館とかが、「美術館」という今までのかたちではなく、そういった活動をサポートする拠点に変わっていくまたは分離していければよいとは強く思うのですが、いきあたりばったりの対応しかできようがない現状を考えれば、そのためにはまず一度分解するしかないのかもしれません。ではまた。

[もうり よしつぐ]

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