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10th Anniversary News Release
ハマトリニュース03/堀尾貞治|リチャード・ウィルソン
速報!「横浜トリエンナ-レ2005」
ハマトリレポート
堀尾貞治 インタビュー
「哲学がないと、こんなバカなことできへん」
聞き手:村田真

8月16日、横浜の旧関東財務局(現トリエンナーレステーション)で開かれたトリエンナーレ学校において、関西からかけつけた堀尾貞治さんがレクチャーを行なった。レクチャーでは、具体美術協会にいたころから、白内障の手術を受けて現在の「あたりまえのこと」シリーズにいたるまでの経緯を話し、ハマトリを前にしての抱負などを語ったのだが、なにしろコテコテの関西弁。聞きづらい部分もあったので、レクチャー終了後あらためて話を聞いた。


堀尾貞治
堀尾貞治氏
──1977年に目を悪くされたのが、いまの仕事のきっかけになったのですか?

堀尾:急性白内障なんですけど、原因がわからなかったんです。それでワラをもつかむ思いで新興宗教にも行ったんです。そこで神様に頼れば大丈夫やという話をされたんやけど、なんか信用できへんような感じやったんで、信者を食いものにしてるんやろといったんですよ。そしたら、君は神様はいないというのなら、この空気は見えるかと。見えまへんがないうたら、君は空気がないんいうのならそうしてもらう、鼻と口つまんでそこに1時間寝てろというわけや。なもん死んでまうがな(笑)。
自分は当たり前やと思っていながら、その空気の問題がずーっと突き刺さっていて、それが今日の「あたりまえのこと」になっているんです。空気を見えるようにするにはどないしたらええのか、ということで色塗りを始めました。それが20年続いて、今回のトリエンナーレにもつながってるんです。

──「あたりまえのこと」というのは堀尾さんの総合タイトルみたいなものですね。

堀尾:そうです。「あたりまえのこと」というのは生きてるということをいってるわけです。自分の存在するかぎり続きます。

──色を塗るというのは自分ひとりでやるんですか?

堀尾:色塗るのは自分の問題でやってるわけです。もう20年くらい前ですけど、友だちにこんなことやってるから手伝ってくれやと頼んだんです。そんなん簡単やからやったるわいうてやり始めたんやけど、3カ月もしたらもうできへんわと。結局、色を塗るという行為そのものは単純やからできるけど、コンセプトがなければ続かない。つまり哲学がないとこんなバカなことできへんわけですよ。だから色を塗るということは現象面ではなくて、その人の哲学の問題なんです。

──堀尾さんの作品は美術館にコレクションされにくいですね。

堀尾:コレクションというのは時代がつくっていくもんであって、コレクションされるためにつくるもんじゃないでしょ。30年前にグタイピナコテカ(具体美術協会の美術館)というのがあって、そこで個展したことがあるんですよ。そのときの作品は、家も小さかったし捨てるつもりだったんですが、たまたま友だちがその作品を預かってくれて、もうあげるわいうたんです。そしたらそれをある美術館が嗅ぎつけて、いまその美術館に入ってますよ。それは別にコレクションしてもらおう思ってつくったわけやなくて、時間がそうしてるだけです。そやから、いまやってることもいつかコレクションされるかもしれないけど、最初からそんなつもりでやってない。

──作品を売るわけじゃないし、どうやって食べてるんですか?

堀尾:ぼくは60歳で定年になるまで三菱重工で働いてたんですよ。社内ではものすごい虐げられて、ゴミあつかい(笑)。どんなひどい仕打ちされたかいうたら、ほんま、ええっ!?と驚きますよ。それを耐え抜きました。それでいまは年金暮らししてます。

──社内では堀尾さんがアーティストであることは知られていました?

堀尾:あのね、世の中うまいことできたもんで、売れる売れないはともかく、あっちこっちで仕事してるから名前だけは有名になりますやん。で、あの人は絵描きやいうことで上の人が便宜はかってくれたことはありますけどね。

──今回、トリエンナーレに選ばれたときはどのように思いました?

堀尾:いや驚きましたよ。だって世界中のアーティストがやってきはるでしょ。ぼくなんかコンクールで賞をとったこともないし。

──先ほどのレクチャーで、堀尾さんの作品のコンセプトは総合ディレクターの川俣さんが掲げるトリエンナーレのコンセプトと同じだといってましたね。

堀尾:川俣さんは大阪の国立国際美術館に、トリエンナーレのキャンペーンのために来たんですよ。そこでコンセプトやいろんなこと聞いたら、なんやぼくのいままでやってきたこととまったく一緒やねって。びっくりしましたよ。


「なんやかんや1年に100回くらい展覧会するんですよ、ハハハ」と、こともなげに笑う堀尾さん。トリエンナーレでは数十人もの現場集団「空気」を率いて現地入りし、トリエンナーレ開幕と同時に会場にしつらえた壁に絵を描き始め、会期中83日間ずっと描き続けるという。まさに川俣正の提唱する「ワーク・イン・プログレス」方式である。

(8月16日、旧関東財務局[現トリエンナーレステーション]にて)
堀尾貞治(ほりお・さだはる)
1939年、神戸市生まれ。神戸市兵庫区在住。1965年具体美術協会会員となり、72年の解散まで参加。芦屋市立美術博物館での個展「あたりまえのこと」(2002)をはじめ、年100回ほどの展覧会を開く。
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