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開演は9月28日──「アートサーカス」の展望
暮沢剛巳
スケールの大きな作品を手がける内定アーティスト
Cerchi nell'aqua
ダニエル・ビュランの作品
"Cerchi nell'aqua", works in situ, Ponticelli,
Naples (Italy), 2004. Détail © D.B
Buren Cirque
Buren Cirque
Buren Cirque
 期待と不安が相半ばする今回のトリエンナーレだが、すでに参加の内定したアーティストたちは、まだまだ未知の要素が多いこの国際展の輪郭を予見させてくれる貴重な存在である。すでに述べたように、今回の記者会見には計8組のアーティストが列席していたのだが、そのなかで最も著名なのが、70年代以降日本でも多くのプロジェクトを手がけているダニエル・ビュランであろう。実はビュランは、ディレクターに就任した川俣氏が真っ先に参加要請を思い立ったアーティストだそうで、正月早々にパリで面会、旧知の間柄である川俣氏から受けた唐突な申し出に驚くと同時に、敢えて国際展のディレクターを引き受けた意気込みに感服して出品を快諾したという。ちなみに、ミニマリズムやパブリックアートの問題意識を潜めたストライプのインスタレーション作品で知られるビュランだが、今回は近年彼がコラボレーションし、会場や公演内容などすべてにわたってリ・デザインしたサーカス「Cie ETOKAN Buren Cirque」を出展する予定とのこと。トリエンナーレの全体テーマである「アートサーカス」が、このビュランのプロジェクトから強くインスパイアされたものであることは説明の必要もあるまい。なお他に列席していたのはETOKANのメンバーのほか、ジル・クデール、西野達郎、ルック・デルー、ヨープ・ヴァン・リースホウト、マリア・ローゼン、リチャード・ウィルソンといった面々だが、配布された資料を見た印象としては、いずれも屋外でスケールの大きなインスタレーションを展開するその作品群は、海に臨む会場で大いに映えるように思われた。準備期間が短いこともあって、全員が完全新作を出品するのは難しそうだが、それでもその作品群は「アートによる街づくり」に期待を寄せる主催者の意向にも大いに沿ったものと言えるだろう。また当日の会見出席者以外にも、池上慶一、キム・ソラ、ナウィン・ラワンチャイクン、桃谷恵理子、奈良美智+graf、ヴォルフガング・ヴィンター+ベルトルトホルベルト、米田知子といったアーティストの参加がすでに内定している。「アーティストがアーティストを紹介する」ネットワーク型の運営が掲げられている今回は、いちはやく参加が決まった彼(女)らにはその起点としての役割も期待されているだろう。

西野達郎 ルック・デルー ヨープ・ヴァン・リース・ホウト
マリア・ローゼン リチャード・ウィルソン
参加が内定した作家のこれまでの作品。上段左から
西野達郎の作品/TAZRO NISCINO, Engel photo by Serge Hasenböhler
ルック・デルーの作品/Exhibition "Luc Deleu" at open air sculpture museum Middelheim, Antwerp, 2003 Photo : Jan Kempenaers (copyright : SOFAM) Copyright : SABAM
ヨープ・ヴァン・リースホウトの作品/Bonnefantopia
下段左から
マリア・ローゼンの作品/Sonsbeek 2001: Locus/Focus'
リチャード・ウィルソンの作品/Richard Wilson, 20:50, Saatchi Gallery, County Hall, London

これから問われる真価
 最初のハードルだった記者会見を終えた現在、川俣氏は連日横浜市内の事務所でスタッフミーティングを行ない、アーティストの人選や企画の細部を煮詰める作業に励んでいる。今後は調査や交渉のため、内外の各地に出かける機会も増えるに違いない。とにかく絶対的に時間が不足していることは否めないが、困難な条件下での奮闘によって、「現在進行形の新しいアートとの新鮮な出会い」が生まれることを期待したい。また開催が1年遅れるなど、今後の継続を危ぶむ声も聞かれる横浜トリエンナーレだが、記者会見の席上で委員会関係者は「次もやります。3回目は2008年に開催します」と明言した。とすれば、独立行政法人に移行して間もない国際交流基金にとっても、あるいはBankARTなどの事業を通じてアート振興を図ろうとする横浜市にとっても、迷走の末にようやく針路の定まった今回のトリエンナーレの成否は、今後の展望を決定的に左右する大きな試金石と言えるだろう。ともあれ、まだまだ多くの課題を残していることは事実だが、日本から世界に向けてメッセージを発信するこの巨大国際展が成功を収め、今後も定着していくことを願わずにはいられない。

[ くれさわ たけみ ]
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