ArtDiary
ArtDiary ||| 村田 真のアート日記
home
home
diary

2月14日(土)

今日はバレンタインデー&愛する妻のバースデー。妻は顔を直しにエステへ、夫はそそくさと逃げるように東京都現代美術館へ行ったとさ。美術館の講堂でNIPAF(日本国際パフォーマンス・アート・フェスティバル)のプレイベントがあるのだ。
 プレイベントは、NIPAF親分の霜田誠二による今年のNIPAFの説明と、ビデオによる紹介、それに中国文化研究者の牧陽一による中国現代美術のレクチャー。200席ほどの会場には5〜6人(関係者を除けば2〜3人か)が押し寄せ、水を打ったような静けさ。牧氏の話は興味深く、終わってから一緒に飲みに行きたかったけど、前髪を引かれるように銀座に出てプレゼントを買い、虎ノ門の青柳へ。ここで妻のバースデーパーティー。
 青柳は阿波徳島直送の魚を食わせるエクスペンシブな店だが、今日は義母がスポンサー。鯛のおつくりと鰆のにぎりがおいしゅうございました。

2月26日(木)

今日も、六本木の自宅(といっても愛する妻の実家だが)から渋谷の仕事場まで、約3.5キロを自転車で。以前は歩いていたが、PHスタジオにママチャリをもらったのだ。歩いて約40分かかるところを自転車だとその半分で行く。バスや地下鉄を使うのと変わらない。
 で、自転車で通うようになって改めて感じたのは、東京には坂が多いってこと。歩きではさほど苦にならないが、自転車だと四苦八苦する。もちろん下りはラクチンだが。そうか、この場合「四苦八苦」というより「楽あれば苦あり」だな。自転車だと楽あれば苦あり。いっそ「自転車だと坂あれば苦あり」、換言すれば「自転車だと楽なのは下り」。これで真理に行き着いた。なるほど、真理とは換言すれば還元されるものなのだ。ともかくこの真理はバスではあまり気づかないし、地下鉄だとぜんぜんわからない。問題はここからで、実はこの真理を探るヒントが地名に隠されていることを発見したのだ。
 まず六本木だが、この地名は文字通り6本の木が生えていたことに由来する、と愛する妻はそっと打ち明けてくれた。だが、昔はどこにでも木くらい生えていたはずだから、この6本の木はランドマークとしてよほど目立っていたに違いない。今みたいに高いビルも首都高もなかったし。ここから六本木は高台に位置していると推測できる。実際、六本木の交差点あたりは麻布や溜池方面から見ると、坂の頂上にクンニリングぢゃなくて君臨していることがわかる。
 その六本木から渋谷に向かうと、西麻布の霞町交差点でいったん谷底に下りる。霞町は、水気があって空気がよどんで霞がかかりやすい地域、つまり凹地を意味しているのではないか。ここから坂を上るとしばらく高台になる。これが南青山という山だ。そして渋谷という谷に向かって金王坂を下りる。この金王坂の表示板はしばしば「王」の字が「玉」に落書きされている。ジャンジャン。ここで終わりではない。
 ぼくの仕事場は代官山(これも山だ)寄りの桜丘町にあるので、渋谷から再び桜丘という丘を上らなくてはならず、さらにマンションは鶯谷町に隣接しているので、もう1度、谷に向かって緩やかな斜面を下っていく。小さな起伏はもっとたくさんあるが、大きな坂だけで片道3回ずつの上りと下りを繰り返すことになるのだ。つまりぼくは朝晩、東京の地名の由来を自転車で体感しているのだ。
 だからなんだ? どこがアート日記だ? といわれても困るが。

……前号アート日記
……次号アート日記

top
review目次review feature目次feature interview目次interview photo gallery目次photo gallery artscene97-98目次art scene 97-98





Copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 1998