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プライバシーステートメント
展覧会レビュー
小吹隆文/福住廉
7/17-7/18
牛島光太郎展
7/17〜29 ギャラリーwks.[大阪]
牛島光太郎展
文章を刺繍した布と、セロファンテープで出来たドアや机、割れたグラスなどで出来たオブジェを組み合わせた作品5点が配置されている。文章とオブジェ、また各作品は関連し合っているように見えるのだが、それぞれが微妙にずれており、すんなり納得できない空気が会場に満ちている。文、オブジェ、作品の隙間に観客の主観が入り込み、見る者それぞれのイマジネーションによる物語を発生させるユニークな表現だった。
[7月17日(月) 小吹隆文]
ジダン 神が愛した男
7月15日〜 シネカノン有楽町[東京]
「頭突き」でみずからの現役生活にピリオドを打ち、世界中のサッカーファンの度肝を抜いたジネディーヌ・ジダン。この映画はサンティアゴ・ベルナベウでのレアル・マドリード対ビジャレアル戦の試合をもとに、ロナウドでもベッカムでもフィーゴでもラウルでもロベカルでもなく、ただジダンの動きだけを追い続けた、きわめて類稀な映像作品だ(ベッカムでは軽すぎるし、フィーゴではもったりしすぎている。映画の被写体としてはやはりジダン以外に考えられない)。
監督はコンテンポラリーアーティストのダグラス・ゴードンとフィリップ・パレーノ。そのせいか、ジダンの「サッカー映画」を期待していた観客は肩透かしを食らうことになる。ジダンの瞬間的な美技の数々を目にすることはできるものの、その映像は通常サッカーファンが見慣れているテレビ番組のそれとはまったく異質なものだからだ。ここではボールの動きを中心にしてゲーム展開を理解させる俯瞰のショットは最低限に抑えられているし、一瞬のプレイをもう一度味わうためのスロー再生はまったく使われていない。むしろカメラは彫刻のようなジズーの顔ににじり寄り、あご先から滴り落ちる汗や息づかい、左手首に巻きつけられたあのリング状のテーピングをとらえ、そしてスパイクの先で芝生をトントンと叩く独特の癖をはっきりと写し出す。サッカーの歴史に名を残すこのスーパースターの一挙一動を、17台ものカメラがストーカーのように執拗に追い続けるのである。
もちろん、こうしたディテールをフレームに収める映像がテレビ映像ではとらえきれないジダンの隠された一面を浮彫りにしていることはまちがいない。だがその一方で、クローズアップを多用した映像をいくら見続けてみても、この寡黙なサッカー選手の表情から何かしらの情感や内面を読み取りにくいのもまた事実だ。試合に集中しているといえばそれまでだが、一言でいえば「何を考えているのかよくわからない」のだ(ベッカムやロナウドはわかりやすい)。それは、ちょうど森のなかで突然カモシカと対面してしまったとき、その眼球が何を語っているのかを把握することの難しさに似ているのかもしれない。実際、ジダンは動物的だった。空間的な認識能力に長けているとか、複数の選択肢のなかからベストを一瞬にして選択するとか、そういった合理的な理性によって動いているとは到底考えられない。ジダンのしなやかで力強いボールさばきは、動物的なセンスによっているのであり、だからといってそれが「獰猛な野性」というわかりやすいクリシェと相容れないことは、ボールに触れていない時間のジダンの静かな佇まいを見れば、すぐに了解されるはずだ。たとえばロナウジーニョの子どもじみた奇術は人間の所業にすぎないが、難しいことを簡単にやってのけるジダンの身体運動は、まちがいなく動物のなせる業である。そして、かつて「難しいことを簡単にいうのが芸術家だ」とブコウスキーが喝破したように、本来、芸術はこうした動物的な能力や感覚と重なり合っていたはずだった。
思えば、あのイタリアの「モミアゲ野郎」に食らわしてやった「頭突き」も、カモシカが敵を一撃で仕留めるかのような、いかにも原始的で動物的な運動性にもとづいていたのであって、だからこそあの身ぶりは美しかったのだ。現代アートからは決して見出すことのできないこの動物的な美しさを、客観的にとらえるのではなく、主観的に肉迫するやり方で観客の目前に示してくれるのが、この映画である。ジダンがピッチを去った今、この「美学」を再び見せてくれるプレイヤーが現れる保証はまったくない。サッカーファンならずとも、しっかりと目に焼きつけておくべきだろう。
[7月17日(月) 福住廉]
菊池学 錆着尺
6/16〜7/17 Gallery éf[東京]
「錆染」という独自の技法によって着色された着物の展覧会。金属の粉を酸化させて生じた錆が文字や文様を描いている。「錆」ということからおのずとマルジェラの「黴」を思い出してしまったけれど、ここでは着物を前提にした上で錆が装飾的に用いられているせいか、「衣服」という既成概念を根底から覆すようなマルジェラの「身もふたもなさ」は見られなかった。
[7月17日(月) 福住廉]
スズキコージのGARDEN展
7/18〜30 SELF-SOアートギャラリー[京都]
スズキコージのGARDEN展
京都の町家ギャラリーとスズキコージのマッチングはいかに?と思って出かけたが、すんなり馴染んでいたことに驚いた。天井の高いおくどさん(土間の台所)や格子窓、庭など多様な空間を持つSELF-SOアートギャラリーだが、そのことが作品が持つアニミズム的性格を一層引き立てているのだ。出品点数は、壁一面を覆う大作絵画1点と、中小サイズの絵画&コラージュ約80点。たっぷり時間をかけて見たい人にとっても、畳敷きの空間で座ってくつろげるのはありがたいだろう。
[7月18日(火) 小吹隆文]
Index
6/20-6/24
いまふくふみよ展
末藤夕香展
西野達 天上のシェリー
山崎史生『静かな隣人』
城戸孝充 水
Tokyo East Perspective 「墨東写真展」「すみだ職人列伝」
町田久美
6/26-7/6
三つの個展 伊藤存×今村源×須田悦弘
雨宮一夫「EARTH WORKS」
Project 629 ♯6 BLOOD
夢をみる夢──13月の日記──
國府理展
小橋陽介展
パンタロンのアトリエ訪問
7/7-7/14
スヌーピー ライフデザイン展
ジョナス・メカス『リトアニアへの旅の追憶』上映会
劇写真団「第二回劇写真団展」
丸尾直子個展 [The openings in the city]
JAALA 第15回日本アジアアフリカラテンアメリカ交流美術展
寺田就子展
日下部一司、手持ちの言葉展
7/14-7/16
澤田知子展 MASQUERADE
福本歩 秘密実験007 擬物館
權五信
申寿赫
相原慶樹
岡本太郎 明日の神話
美のかけはし──名品が語る京博の歴史
7/17-7/18
牛島光太郎展
ジダン 神が愛した男
菊池学 錆着尺
スズキコージのGARDEN展
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