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プライバシーステートメント
展覧会レビュー
小吹隆文/福住廉
1/19〜1/22
戦争と芸術──美の恐怖と幻影 II
1/16〜2/16 Galerie Aube[京都]
戦争と芸術──美の恐怖と幻影 II
昨年、藤田嗣治の戦争画を展示して話題を呼んだ企画展の第二弾。中村研一の戦争画『神風特別攻撃隊の海軍機の活躍』のほか、細江英公、中西夏之、横尾忠則、太郎千恵蔵、トマス・デマンド、ダレン・アーモンドの作品が展示され、あわせて本展のために書き下ろしたというポール・ヴィリリオによるテキストが発表された。知識人によるテキストを盛り込んだ展覧会は、多くの場合、押しつけがましい知の強要や世界的な悲劇の知的な搾取に終始しがちだが、ヴィリリオのテキストも知的な言語ゲームの域を超えていなかった。中村研一の戦争画にしても、小さな油彩画を仰々しいガラスケースに展示して見せているせいか、「戦争」という文脈を過剰にフレームアップしているようで、どこか滑稽だった。こうした「ゆるい」展示が現在の戦争と芸術の「ぬるい」関係性を反映していると見なすこともできなくはないが、しかし本展の白眉は最後の暗室に用意された、細江英公の映像作品『へそと原爆』(1960)である。土方巽や大野慶人など当時の前衛芸術家たちが参加したこの実験映画は、前半こそいかにも前衛的な舞踏の身ぶりを見せているものの、後半になって砂浜で踊りながら遊ぶ子どもたちが映し出されると俄然面白くなる。全裸で芋のように転げまわる子どもたちは見ているだけで微笑ましいが、海からあがってきた男が子どものへそを強く捻じ曲げると、沖合いで原爆が爆発してしまうのである。楽園的な空間と暴力的な破壊が表裏一体にあること、そしてそれは「へそ」という人間の生命体の端緒に深く関わっていることを、じつに明快に示したこの作品こそ、「戦争と芸術」を語るにふさわしい。
[1月19日(土) 福住廉]
ビデオ・ランデブー:映像の現在
1/10〜1/20 大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室[大阪]
ビデオ・ランデブー:映像の現在
現在のビデオ・アートを見せる展覧会。イルコモンズや岩淵拓郎、亀井文夫、ヨハン・グリモンプレ、中村友紀などが映像作品を発表した。プロジェクターで見せる大きな空間がひとつだけ確保されていたものの、大半の映像作品は旧来のテレビモニターが使われており、その前のソファーでゆっくり鑑賞することができるように工夫されていた。興味深いものも、退屈なものも、それぞれだったが、なかでも際立っていたのは、詩人の谷川俊太郎が発表したシンプルな映像。画面に映し出されているのは透明な地球儀だけだが、音声ではその「地球」に扮した谷川と彼にインタビューする男性との掛け合いが流されている。地球にとっての幸福とは、と問いかけるインタビュアーに、「人類の絶滅です」とハキハキ答える谷川の「地球」は、じつに簡潔明瞭に真理を説いている。それは、詩人ならではの暗い笑いを含んだ映像作品だったが、どちらかといえば携帯やipodによるポケットムービーに近い、アマチュア的な魅力にあふれた作品だった。
[1月19日(土) 福住廉]
ムンク展
1/19〜3/30 兵庫県立美術館[兵庫]
ビデオ・ランデブー:映像の現在
ムンクといえば《叫び》であり、世紀末のイメージだが、本展を見ればそれだけの人ではないことが分かる。彼の作品が「生命のフリーズ」と題されたシリーズを形成していることは以前から知ってたが、同時に室内を彩る装飾絵画だったことは知らなかった。完成作だけでなく、習作やスケッチも織り交ぜて、大学講堂、工場、個人宅の装飾プランを再現しようとする試みは評価されるべきだろう。しかし、どうしても不完全な印象が拭えない。それは筆者の欲張り過ぎだろうか。
[1月19日(土) 小吹隆文]
アトリエ インカーブ展──現代美術の超新星たち
1/22〜2/3 サントリーミュージアム[天保山][大阪]
ビデオ・ランデブー:映像の現在
知的障害を持つ人々の芸術活動を支援しているアトリエ インカーブの所属アーティストを紹介する展覧会。印象的だったのは、額装をはじめとする作品の見せ方や、展覧会全体のコーディネートが非常にソフィスティケートされていたこと。グッズ販売も積極的に行なっていた。これは、作品やグッズの利益で作家の自立を支援しようとするアトリエ インカーブの思想に基づくもので、従来のアウトサイダーアートとは一線を画する展開とも言える。アウトサイダーアートに付いて回るピュアネスの押し付けやポリティカル・コレクトネスが煩わしい人には、むしろこちらの方がすんなり受け入れられるのかもしれない。ちなみに出品作家は、鉄骨とリベットをモチーフにしたオールオーヴァーな絵画と鉄骨の彫刻作品を作る寺尾勝広、格闘技をこよなく愛し、ダイナミックな絵画として表現する新木友行、建物や生き物をヴィヴィッドな色面分割で描く湯元光男、詩的で繊細な作風の吉宗和宏、雑誌の広告ページを描く武田英治の5人。彼らは2005年にニューヨークのアウトサイダーアート・フェアに出品し、高い評価を獲得。同地のプライマリー・ギャラリーとも契約を結んでいる。
[1月22日(火) 小吹隆文]
Index
1/7〜1/11
フジイ・フランソワ展
未知への投擲 V
1/12
ゆっくり生きる。 What Is Real Nature of Being?
ログズギャラリー展 827 DRIVES
目黒の新進作家──七人の作家、7つの表現
1/15〜1/16
石田尚志 展 海の壁──生成する庭
タナカカツキのマトリョニメ展
日本の版画 1941-1950 「日本の版画」とは何か
芳年・芳幾の錦絵新聞 東京日々新聞・郵便報知新聞全作品
1/19〜1/22
戦争と芸術──美の恐怖と幻影 II
ビデオ・ランデブー:映像の現在
ムンク展
アトリエ インカーブ展──現代美術の超新星たち
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