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Exhibition Reviews & Guide ..

  12/15〜25 品川区大井5-27-5
 
 
与平の家

大正期に建てられたという和洋折衷のモダンな大邸宅の解体を前に、その屋敷内で約20作家が作品を展示するアートプロジェクト。ほとんどはイラストや風景写 真など学芸会レヴェルの展示なのだが、なかには近藤基+久納鏡子による本格的なメディアアートもあった。先端芸術表現科1年の村山華子は、中庭の池に浮かべた造花や宝船を見に来た人に釣ってもらい、そこに書かれた俳句をヒントに、家中に隠した宝物を探し出すという作品を発表。なんとも邪気のないカワイイ作品だが(作者もカワイイ)、21世紀にはこーゆーのがアートの本流をなしていくのだろうか。
[12月23日〈土〉 村田真]

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  12/9〜1/28 伊丹市立美術館[兵庫]
 
 
ヘルマン・ヘッセ 50点の水彩 画は、文豪ヘッセが過ごした南スイスの村の近くの風景だ。明るい日差しを浴びた山の緑と家々の赤茶色の瓦から暖かな空気が伝わってくる。しかし、人がまったく描かれていない。同時開催されていた「シャガールの版画 死せる魂」展の出品作も制作年がほぼ同時期。ゴーゴリの『死せる魂』の挿画としてつくらたものだが、ここにはさまざまな人間模様がこってり描かれている。
ヘッセは家の前に訪問者を拒絶する看板を立てていたとカタログにあった。人との関わりを絶つことで平穏な暮らしをヘッセは本当に得ることができたのだろうか。
[12月24日〈日〉 原久子]
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拈華微笑
  11/2〜12/24 大倉集古館
 
 
拈華微笑
仏像や曼陀羅図などの仏教美術を、宗教的価値から離して骨董品として展示構成したもの。こうした態度はいうまでもなく美術館・博物館の基本姿勢にほかならないのだが、それを大倉喜八郎の個人コレクションから出発した日本初の私立美術館、大倉集古館があらためてやることに意義がある。仏像の陳列台に須田悦弘の木彫の花をあしらったりして、これまで古美術の保存(集古)に重点を置いていた同館が、企画展示に積極的に乗り出そうという前触れとも読み取れる。21世紀に再び注目すべき美術館になりそうだ。
[12月24日〈日〉 村田真]
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ダムタイプ「memorandum」大阪公演
  12/28〜29 シアター・ドラマシティ[大阪]
 
 
ダムタイプ 新作といってもすでに海外では方々で演じられてきた。日本では高知、東京に続き、大阪公演は3カ所め。私にとっても「memorandum」の本番を観るのははじめて。今回はとくにお茶目な部分が多くて、それでいてダムタイプのテイストというのか、“癖”みたいなものが自然と各所に出ていた。いいとか、悪いとかよりも、好きな作品だった。会場に向かうときの緊張感が、帰りにはなかった。気のせいか、開演前は眉間を押さえて前のめりだった人たちが、会場を後にする時には笑顔だったような……。日本で新作を初演することができない現実も憂うべきことだが、日本でつくらないからこそこういった作品がつくれるという事実も悲しいカモ。
[12月29日〈金〉 原久子]
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「黄鋭 百年記憶 百年の町屋と20人の作家の展覧会」
vol 18 Gozo Yoshimasu(吉増剛造)
vol 19 Marilya、吉増剛造+MARILYA+黄鋭
  12/30 黄鋭スタジオ[大阪]
 
 
吉増剛造
途中でいろんな解説を加えたりしながら詩の朗読をする吉増氏。この日はじめて使ったのだと言いながら、ペンライトで文字を一字一字照らしながら読んでゆく。文字がよく見えるから、なんだか書きながら読んでいるようで身体が動くんだ、と言って上下に身体を揺さぶりながらまた読む。Marilya夫人が歌う傍らで、吉増が床に正座をして、コンコンと銅板を打つ。この音が2人が一緒に呼吸をしているように聞こえきた。 蕪村が素晴らしいとか、道元の勉強をはじめたのだと話しているときの少年のような吉増氏のウキウキとした様子。慌ただしい年末の夜に、こんな穏やかな時間を過ごせたことに、100年前に建てられた家に、吉増夫妻に、黄鋭氏に感謝したい。
[12月30日〈土〉 原久子]
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