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共に未来をつくる
EXPOストーリー

第8話 ショップの運営・商品開発

―DNPの新たな挑戦― 住友館グッズショップの設計から商品開発・運営まで

DNPは、住友グループと共に住友館オフィシャルグッズショップ「UNKNOWN FOREST SHOP」の設計・運営および商品開発を手掛けました。ショップの設計から、販売する商品の企画・開発・調達、そして店頭での販売まで、一連のプロセスを一貫して担っています。住友グループの理念やパビリオンの世界観を反映したショップや商品を展開し、その魅力を来場者に伝えています。この共創の経緯や開発時の苦労、商品への想いなどを住友館の館長とDNP担当者が語り合いました。

住友館オフィシャルグッズショップ「UNKNOWN FOREST SHOP」

住友館は、「UNKNOWN FOREST」という森の中をランタンを手に“冒険”し、森に息づく生き物たちの「いのちの物語」に出会う体験型パビリオン。冒険のパートナーとなるランタンはDNPが特別協賛企業として開発を手掛けました。「UNKNOWN FOREST SHOP」は住友館に併設されており、数世紀にわたって受け継がれてきた「住友の森」の木々を活用したグッズ、パビリオンでの感動体験を凝縮したグッズ、住友グループの最先端技術を取り入れたグッズなど、この場所でしか出会えない数々のオリジナル商品を取り揃えています。

プロフィール

住友館 館長 西條 浩史(さいじょう ひろふみ)

住友グループ19社で構成する住友EXPO2025推進委員会の事務局長も兼任し、同グループの万博での取り組みを統括する。

住友 EXPO2025 推進委員会 事務局に出向中 倉内 智(くらうち ともし)

大日本印刷 情報イノベーション事業部から2024年5月、同委員会 事務局​に出向。住友グループ各社との調整や広報活動などを担当。

大日本印刷 情報イノベーション事業部 金谷 真千子(かなや まちこ)

プロジェクトマネージャーとして、設計から商品の企画・開発、運営まで全工程に従事。店頭で接するお客様の声も運営に活かしている。

住友館での感動を深く心に刻んでもらいたい

――「UNKNOWN FOREST SHOP」は、どのような発想で創設したのですか?

西條

住友館での体験をその場限りで終わるものにしたくなかったんです。商品を家に持ち帰っていただくことで、当館での感動を折に触れて思い出すような、深く心に刻まれる体験になる手助けになれば、という想いがありました。当館での体験で、自然との向き合い方や未来を考える大切さに気づいてもらい、そしてショップの商品がその気づきを深めるきっかけになっていればうれしいですね。

――ショップの開設・運営、商品開発のパートナーとしてDNPを選んだ理由を教えていただけますか?

西條

パビリオンでの重要アイテムであるランタンの開発にあたって、DNPに特別協賛をいただいたことが始まりです。DNPの事業領域は幅広く、多様なソリューションを持っているため、ランタンに留まらず、ショップ全体を安心してお任せできると考えました。

金谷

ありがとうございます。パビリオンで使うような高機能なランタンの開発は、私たちにとって初めての経験でしたが、企業の店頭販促什器の開発やノベルティの製造などは多く手掛けてきており、高い品質保証の体制のもとで開発ができるとの確信がありました。

――ショップの内装でもパビリオンの世界観が表現されています。内装のデザインもDNPが手掛けたのだとか。

金谷

はい、そうなんです。ショップの空間デザインにも、DNPの店舗設計の実績を活かしています。「UNKNOWN FOREST」の世界観を再現した森の山小屋風の店舗は、特に夜はランタンの光とマッチして、とても趣深い空間になっていると思います。

パビリオンの世界観と住友グループの技術力を活かした商品を

――ランタン以外にも、「UNKNOWN FOREST」に登場する動物のぬいぐるみや、Tシャツ、日傘、ポストカードなど多彩な商品が揃っていますね。商品の企画・開発は、どのように進めたのでしょうか?

販売しているランタンはパビリオンで持ち歩くものと同じデザインで、照明インテリアとして使用できます
金谷

「UNKNOWN FOREST」を巡るときには、必ずランタンを手にしますよね。ランタンを持って巡るからこそ、その体験が心に残り、響き、感動につながる。そのように感じたので、商品ラインナップはランタンを中心にして発想を広げていきました。

倉内

一方で、私が出向している住友グループでは、その技術を発揮したグッズや、住友館の建築過程で生まれた木材を用いたグッズの商品化を構想していました。その具体化に向けて、住友グループの各社と打ち合わせを重ねました。

――建築過程で出た木材をアロマオイルやマイボトルの開発に活用しているのですね。「住友の森」をオフィシャルグッズにする際の開発のコンセプトは?

倉内

住友館は、住友発展の礎となった「別子の嶺」(愛媛県新居浜市)を想起させる外観で、実際にその森から伐採した木材を建設に使用しています。木材を無駄にせず商品開発に活かすことは、これまで長年にわたって森に寄り添ってきた同グループの、とても重要な取り組みだと思いました。例えば、建築材の一部から抽出した「ひのきアロマオイル」は、数世紀にわたる年月が凝縮された物語としてお客様の共感を呼び、早々に売り切れとなりました。また、廃材を利用して製造した「森のマイボトル」も人気です。環境に対するお客様の意識は、非常に高いと感じています。

西條

DNPは、「UNKNOWN FOREST」の世界観や住友グループの技術をよく理解したうえで、商品を選定・デザインしています。特にアロマオイルは、住友館らしさを最も表現できた商品です。1本1本の「いのち」を大切にしたい、その想いを形にできたなと。

――住友グループ各社の最先端技術を取り入れた高機能Tシャツや日傘、トートバッグなども人気があり、売れ行きは好調だそうですね。

倉内

はい。例えば、住友化学株式会社と共同開発したTシャツは、調温機能がある独自の糸を使い、裏地には冷感プリントを施してあり、肌触りや着心地がすばらしいというお客様の声を良く聞きます。こうした新技術を使った商品の発売にあたっては、いろいろと試行錯誤しました。まだ世に出ていない商品ですし、その価値をどのように伝えるのか、プライシングはどうするのかと――。幸い、いずれもお客様に好評で、手応えを感じています。

金谷

住友館のすべてを網羅した「コンセプトブック」も人気の商品です。住友館に関わるクリエイター等が英知を結集してきた開発プロセスが細かく記載されており、これを読めば、住友館の全容を知ることができます。実は、この「コンセプトブック」にも、DNPの印刷技術を活かしているんです。住友大阪セメント株式会社が開発されたCO₂再資源化人工石灰石※1を使った紙で印刷されている世界初の製品でもあります。

「UNKOWN FORST」のコンテンツやメイキングなどが掲載され、住友館の全容を伝える商品です
西條

商品開発にあたってDNPは、住友グループ各社とのやり取りや調整に苦労されたでしょう。技術者は、デザインよりも技術や品質を重視しがちなところがありますから。ただ、顧客(生活者等)の目線での販売戦略を考えると、デザインは重要な要素ですよね。その点でDNPは、「それでは買ってもらえない」「もっとこうすべきだ」などと、臆することなく、的確に指摘してくれました。おかげで、技術者の想いと顧客の期待とをつなぐ、とても良い商品を生み出すことができました。DNPの皆さんの優れた調整力には、本当に感謝しています。

金谷

住友グループ各社の技術を活かしたショップオリジナルの商品はまだ世に出ておらず、認知度も高くなかったため、住友館を体験した方々にどういった“余韻”を提供できるのか、どんな商品であれば来場者の方々に喜んでいただけるのか、といったことをじっくりと考えて昇華させ、デザイン性にもこだわって製作を進めました。各商品は、機能がすぐれており、住友グループの技術力の高さも反映したものとなっていて、それをショップのメンバーが来館者にしっかりと伝えてくれています。結果として、来館した皆さまの共感を得られ、購入につながっているのでしょう。

カルシウム源を含む廃棄物とCO₂を反応させ、⽯灰⽯に変化(鉱物内に閉じ込める)させて製造。この技術は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)​の「GI基⾦事業」の成果を活⽤したものです。

――メンバーの接客対応も含め、ショップの運営もDNPが担っているのですよね。

金谷

はい。DNPは、平素はメーカーや小売業といった得意先の販促支援を行っていますが、今回は自らの主体事業として、すべてDNPの責任のもと、ショップの開設・運営という一連の業務を担っています。運営面では、接客もPOSレジ操作も初めて行いましたし、在庫管理についても従来のDNPの商品管理とは異なる、小売業に即した運用が求められて苦労しましたが、研修で学んだ知識や専門家のアドバイスなどをもとに、あとは実践で力を磨いていきました。

強固なリレーションで、さらに新たな共創につなげていく

――今回の共創を振り返って、あらためて実感したことや今後についてお聞かせください。

倉内

住友館という大きなプロジェクトに参画させていただいた経験と、住友グループと強固なリレーションを築けたことが、大きな財産になりました。この関係を活かして、今後、DNPから住友グループへの営業活動も展開し、新たな共創につなげたいですね。

金谷

今回は、ショップの内装をはじめ、モノづくりや運営全般まで、DNPの自主事業として展開することができて、経験値を高められました。DNPのソリューションの幅をさらに広げられたと思います。

西條

DNPは事業領域の幅が本当に広いですよね。今回の万博でも、住友館以外にもさまざまなプロジェクトに携わり、着実に実績を築いています。いずれは、万博規模のプロジェクト全体をDNPが仕切る時代が来るのではないか――。そんな想像さえしてしまうほどです。今後も、いろんな場面でお世話になると思いますが、よろしくお願いいたします。

ランタンはDNPが2年をかけて作り上げた自信作

今回のランタンの開発は、DNPにとって初めての挑戦でした。何十通りものデザイン案を提案すると同時に、振動・音声・調光など、ランタンに実装する様々な機能やプログラムを検討し、音透かし※2の技術をセンサー代わりに使うことに。2年をかけて完成させた自信作です。
ランタンは、パビリオンで来場者が手にするものと、ショップで販売するものの2種類があります。どちらも外形は同じですが、販売用は調光機能のみを装備しています。パビリオンで体験を楽しんだ記念として買って帰られる方が多く、その場で電池を入れて明かりを灯し、さっそく夜の万博会場で楽しんでいる方もいらっしゃいました。

音に情報を埋め込む技術のこと。特定の機器に音楽や効果音を連動させて演出の一部として活用することで、よりインタラクティブな体験を可能にする。

ショップでは住友グループの技術を活かしたグッズを多数展開

吸熱と放熱の特性を併せ持つ温度調節樹脂「コンフォーマ®」を⽤いたTシャツ
バイオマス由来の新しい環境配慮型インディゴ染料を使用した「バイオインディゴ マルチツールバック」
原料の⼀部に CO₂再資源化⼈⼯⽯灰⽯を⽤いた樹脂製品「クリアファイル」