2022年9月26日

文字の読み書きに困難がある人に見やすく読みやすい「じぶんフォント」を開発

「じぶんフォント」の読字体験ができるWebサイトを公開、さらなる改善や社会実装を目指す

大日本印刷株式会社(本社:東京 代表取締役社長:北島義斉 以下:DNP)は、国立大学法人東京工業大学、ファシリティジャポン株式会社、株式会社リアルタイプと連携し、文字の読み書きに困難がある人(ディスレクシアを含む)にも見やすく読みやすい「じぶんフォント」のプロトタイプを開発しました。このフォントは、東京工業大学の朱心茹(しゅ しんじょ)助教の「発達性ディスレクシアに特化した和文書体の研究」の結果をもとに、DNPのオリジナル書体である秀英体の「秀英丸ゴシック」をベースに開発しました。

今回開発した「じぶんフォント」の読字体験ができ、多様なフォントと比較しながら、自分に合うフォントを見つけられるWebサイトを公開します。さまざまな利用者からの意見を収集し、「じぶんフォント」の改善や社会実装、さらなる研究開発を目指します。

 

【開発の背景】

ディスレクシアは、知的能力に関係なく文字を読むことが困難な学習障がいであり、日本では学齢期児童の約8%*1、英語圏では約10~15%*2にこの症状があると言われています。ディスレクシアの人にとっては、フォントの変更が読み難さの軽減に役立つ場合があることが知られており、欧米では、ディスレクシア対応フォントに関する研究が進み、実用化されています。国内でも朱助教によるディスレクシア対応の日本語フォントの試作・評価が進んでおり、その有用性が確認されています。一方、日本語の情報処理で少なくとも必要とされる約7,000字(JIS第1・第2水準)のフォントの開発には、高い負荷がかかっていました。こうした課題の解決に向けてDNPは、秀英体の開発で培ったノウハウを活かして「じぶんフォント」の開発を開始し、朱助教、Webアクセシビリティ技術を有するファシリティジャポン、フォント開発やWebフォントの配信技術を有するリアルタイプとの連携による「じぶんフォントプロジェクト」を結成しました。

【「じぶんフォント」の特長】

1.“読み書き困難”の特性に合わせた、3種類の形状のフォントを開発

“読み書き困難”の症状はさまざまであり、「文字が躍る・動く・ねじれるように感じてしまい、どこにどの文字があるか分からない」「文字や単語の間が広い場合には読めるが、字間が狭いと誤りが増える」など、人によって症状が異なります。朱助教は、文字の読み書きに困難がある人の協力のもと、自身が開発したフォントの評価・分析を行い、(1)文字の下部が太い、(2)全体が細め、(3)全体が縦長で太め、といった3つの傾向のあるフォントが好まれることを発見しました。今回の「じぶんフォント」の開発に当たっても、これらの特徴を活かした形状としました。

2.秀英丸ゴシックをベースに開発した手書きに似たゆとりがあるフォント

「じぶんフォント」は、画線がシンプルで、先端や角が丸い「秀英丸ゴシック」をベースに開発しています。「じぶんフォント」のひら仮名は、形状や大きさを整え過ぎないようにしており、例えば「い」は平たく、「く」は縦に長くなど、手書きの形状に近いデザインで、字間にゆとりがあります。これらの特徴は、読み書きに困難がある人に好まれる形状であることが、朱助教の研究で判明しています。

【「じぶんフォント」のコンセプトと読字体験Webサイトの立ち上げについて】

文字の読み書きに困難がある人も含め、多様な見え方を持つ全ての生活者にとって読みやすく、一人ひとりに合ったフォントを提供したいという想いから、「じぶんフォント」と名付けて開発しました。4社の共同プロジェクトでは、多様な見え方の特性を持つ人々の協力を得て、より見やすく読みやすいフォントの開発・実用化に取り組んでいます。実用化に向け、誰でも「じぶんフォント」の読字体験ができ、多様なフォントと比較しながら、自分に合うフォントを見つけられるWebサイトも公開します。サイト上でアンケートを実施し、その結果から研究を進め、開発フォントのブラッシュアップを図ります。

*読字体験WebサイトのURLはこちら https://www.jibun-font.com/

【今後の展開】

DNPは「じぶんフォントプロジェクト」に参加する大学・企業とともに、「じぶんフォント」の評価と改善を繰り返し、より有用なフォントを開発する他、ユーザーが自分の読みやすい文字の形へ自由にカスタマイズできるフォントの開発や普及にも取り組みます。また、高齢者・情報弱者・非母語話者等にも配慮したコミュニケーション支援の技術やサービスの開発も進め、「DNPグループ行動規範」の一つに掲げている、多様な人々が暮らしやすい「ユニバーサル社会の実現」を目指します。


*1 Uno, A., Wydell, T. N., Haruhara, N., Kaneko, M., & Shinya, N. (2009). Relationship Between Reading/Writing Skills and Cognitive Abilities among Japanese Primary-school Children: Normal Readers Versus Poor Readers (Dyslexics). Reading and Writing, 22(7), 755–789.
*2 Vellutino, F. R., & Fletcher, J. M. (2005). Developmental Dyslexia. In M. J. Snowling & C. Hulme (Eds.), The Science of Reading: A Handbook (pp. 362–378). Blackwell Publishing.(p. 363)
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