2026年7月28日
100年以上続く長寿企業の経営実態を調査
持続的成長の秘訣は「守り続けること」ではなく「時代にあわせて変化し続けること」
大日本印刷株式会社(本社:東京 代表取締役社長:北島義斉 以下:DNP)は、企業の持続的成長について「長寿企業に関する経営意識調査」を実施しました。本調査は、創業100年以上かつ売上高100億円以上の企業を対象に実施し、314社から回答を得ました。
2026年は「昭和100年」にあたる節目であり、日本企業の成長の軌跡やその経営戦略が改めて注目されています。また、社会や市場の不確実性が高まるなか、企業には変化に対応しながら価値を創出し続けることが、これまで以上に求められています。こうしたなか、2026年10月に創業150周年を迎えるDNPは、100年以上続く企業の経営の秘訣やイノベーションの源泉を明らかにすることを目的に、本調査を実施しました。
調査サマリー
- 約5割の長寿企業が、長寿の理由として“社会や時代の変化に応じた事業の見直し”を挙げた。持続経営の秘訣は、変化への対応力。
- 約8割の長寿企業が、創業時の強みを現在も継承している。また約7割が、経営層から社員へ日常的にビジョンを発信する文化が根付いている。
- 6割を超える長寿企業が、“顧客基盤・顧客との信頼関係”を強みとしている。また、顧客は単なる販売先ではなく、イノベーション創出の起点の一つである。
- 長寿企業を6つのタイプに分類。業績が伸長傾向にある企業には“挑戦が評価される組織風土”がある。
■約5割の長寿企業が、持続経営の要因に“社会の変化に合わせた事業の変革”を挙げた
「100年以上事業を継続できた理由」として最も多かったのは、「時代や環境変化に合わせた事業内容・構成の見直し」(46.6%)で、「ブランド力・企業としての信頼性」(37.9%)、「安定した顧客基盤」(34.7%)を上回りました*1 。社会や時代の変化に対応し、変化し続けることが、持続的な成長を支える重要な要素であることが分かりました。

■約8割の長寿企業が、創業時の強みを現在も経営の基盤に
「企業の強みの変化」という設問に対し、「創業時の強みを基盤に、現在は内容や形を変えながら発展している」(61.9%)が最も多く、次いで「創業時から現在まで、強みはほぼ変わっていない」(17.9%)となりました*2 。この結果から、約8割の長寿企業が創業時の強みを現在も経営の基盤として活かしています。

前項の結果もふまえると、長寿企業は「強みを変えない企業」ではなく、「変わらない強みを軸に、その活かし方を進化させている企業」であることが分かりました。
■約7割の長寿企業で、経営層が日常的にビジョンを伝える組織文化が定着
「理念やビジョンが、経営層の発信や日常のマネジメントを通じて、社員に具体的に伝えられているか」という設問に対し、「そう思う」(53.3%)、「とてもそう思う」(18.5%)と回答した企業が7割を超えました*2 。この結果から、多くの長寿企業は、「理念やビジョン」を掲げるだけでなく、経営層の日常的な発信やマネジメントを通じて社員に浸透させていることが分かりました。トップが継続してビジョンを示すことが、社会や時代の変化に対応し、持続的な成長を支える重要な要素の一つと考えられます。

■顧客基盤・顧客との関係は、長寿企業の強みであり、イノベーション創出の源泉でもある
自社の強みとして最も多く挙げられたのが「強固な顧客基盤・顧客との信頼関係」(66.5%)で、次いで「技術力・ノウハウ」(35.1%)、「営業力」(31.0%)が続きました*1 。
また、「イノベーションを生み出し続けられた原動力」として最も多かった回答は、「顧客ニーズ・顧客課題」(42.5%)でした。これは、多くの長寿企業にとって顧客は単なる販売先ではなく、次の成長機会を見いだす「共創のパートナー」であることがうかがえます。また、「顧客ニーズ・顧客課題」に次いで「トップのビジョン発信」、「現状に対する問題意識・危機感」が挙げられました。顧客との対話を通じて社会や時代の変化を早く捉え、経営層が方向性を示すことが、イノベーション(新たな技術や事業の創出)の源泉になっていることが分かりました。


*1 複数回答可(3つまで回答可能な設問) *2 単一回答
■長寿企業は6つのタイプに分類。業績伸長には「挑戦への評価」がカギ
アンケート結果をもとに因子・クラスター分析を行い、「理念浸透」「ガバナンス」「価値創出」「挑戦・学習」「非属人」の5つの観点(因子)から、長寿企業を以下の6つのタイプに分類しました。
(1)理念・挑戦型 (2)行動・成果型 (3)職人・慎重型(4)自律・分散型 (5)統制・堅実型 (6)独自価値・安定型
このうち、(1)理念・挑戦型と(2)行動・成果型では、直近5年間で業績が伸長傾向にある企業が特に多く見られました。
<6つのタイプと特長>

■業績が伸長傾向にある企業は、挑戦を評価する風土がある
直近5年間の業績について、「(1)理念・挑戦型」「(2)行動・成果型」に分類された長寿企業の約70%が伸長傾向にあると回答しました。これらの企業では、新しい取り組みや従来と異なるやり方への挑戦を、前向きに評価する傾向が強く見られました。社員一人ひとりの挑戦を促し、行動へと結びつける組織ほど、業績が伸長する傾向が見られました。


有識者からのコメント
■ジェフリー・ジョーンズ氏/ハーバードビジネススクール教授
この調査報告書は「過去からの学びの活用」と「企業の業績」との相関関係を実証的に示した貴重な資料です。学界でも長寿企業をテーマとした論文や報告書などが発表されていますが、これほど多種多様な企業を大規模に調査した報告書は見たことがありません。ここに記載されている定量的なデータセットは、世界の経営史研究に大きく貢献するものです。
また、この報告書は、学術的にも意義深いものとなっています。注目すべきは、従来の学説を裏付けるだけではなく、定説を覆すような結果がいくつも掲載されていることです。
たとえば「理念・挑戦型企業」と「行動・成果型企業」の6割以上が「小さな試行が日常的に行われている」と回答し、8割以上が「失敗経験を次の改善や判断に活かそうとしている」と回答しています。これらは「起業家精神は新興企業の特長である」という既存概念を打ち破るものです。
さらに、市場・競争変化の危機に直面した際、42.9〜66.7%の企業が「新事業領域への進出・多角化が危機を乗り越える上で重要であった」と回答しています。これもまた「日本企業は総じて保守的だ」という見方に一石を投じるものです。
学者だけではありません。この報告書は世界のビジネスリーダーにも重要な示唆をもたらしていると思います。特筆すべきは次の3つの点です。1つめが、時代・市場が変化したときに、何を変化させて、何を変化させなかったのかを明確に示していること。2つめが、「顧客との対話と共創の深さ」と「理念・ビジョンの日々の業務への浸透」の両方が成長の原動力となっていること。3つめが、市場の変化に対し「攻め」の姿勢で乗り越え、長く存続してきた企業が多いこと。これらの分析結果はビジネスリーダーに新たな気づきを与えることでしょう。
最後に、この報告書はハーバードビジネススクールの学生たちにとっても、格好の教材になると思います。私が教えている選択科目「起業家精神とグローバル資本主義」で「起業家精神と企業の創業年数との関係性」などについて議論する際に活用すれば、学生たちは、日本の長寿企業がいかに革新的で起業家精神に富んでいるかを知り、驚くことでしょう。
ジェフリー・ジョーンズ(Professor Geoffrey Jones) ハーバードビジネススクール教授。専門は経営史。同校の経営史部門長。MBAプログラムの選択科目「起業家精神とグローバル資本主義」を担当。経営史の視点から日本人経営者や日本企業を分析した教材や著書を多数執筆。ハーバード大学ライシャワー日本研究所の兼任教授も務める。主な共著書に『グローバル資本主義の中の渋沢栄一』(東洋経済新報社)。最新刊は『Underdog Capitalism』(2027年刊行予定)。

©Evgenia Eliseeva
■佐藤智恵氏/作家・コンサルタント
どんな企業が長く存続するのか。どうすれば企業は持続的に成長できるのか。行き過ぎた株主至上主義やショートターミズム(短期的な利益の追求を優先すること)を見直す機運が高まる中、いま世界中の経営者や投資家がこの問いに対する答えを知りたがっています。そこであらためて注目されているのが日本の長寿企業です。
世界最高峰のリーダー養成機関、ハーバードビジネススクールの教員の間でも、研究対象として長寿企業に関心を持つ教員が増えてきています。和菓子メーカー「虎屋」(16世紀初頭創業)や総合商社「伊藤忠商事」(1858年創業)の事例が教材化されているほか、2024年に33人の教員が研修で来日した際には、多くの長寿企業を視察しました。
この報告書は、こうした世界の経営者、投資家、教員の問いにストレートに答えるものです。
報告書の中で興味深いのが、「レジリエンス」(回復力)が「存続」や「成長」の鍵であることがわかったことです。現在、多くの企業にとって重要な経営課題となっているのが、AI技術の進展に伴うパラダイムシフト。これにどう対応し、自社の成長につなげていくのかを議論する上でも、この報告書は貴重な指針となるはずです。
また調査結果によれば「成長」と「停滞」を分ける重要な要素の1つが、「失敗経験を前向きにとらえる企業文化」であることが明らかになっています。これはすなわち「いかに社員が失敗から早く立ち直って、次に挑戦できる環境をつくるか」「レジリエンスを育める環境をつくるか」が成長への鍵となるということです。自社の未来に危機感を抱いているビジネスリーダーにとって、この報告書は現状を打破するヒントとなることでしょう。
佐藤智恵(さとう・ちえ) 1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。NHK、ボストンコンサルティンググループなどを経て、2012年、作家・コンサルタントとして独立。『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『ハーバード日本史教室』(中公新書ラクレ)、『世界のエリートの「失敗力」』(PHPビジネス新書)などベストセラー多数。近著に『なぜハーバードは虎屋に学ぶのか』(中公新書ラクレ)。2017年より日本ユニシス(現・BIPROGY)社外取締役、2024年より伊藤忠エネクス、ハピネット社外取締役。

調査概要
- 調査名:長寿企業に関する経営意識調査
- 実施期間:2026年1月28日〜2026年2月22日
- 調査手法:郵送調査およびWeb調査
- 有効回答:314社(創業100年以上で、売上高100億円以上の企業)
■大日本印刷株式会社(DNP)について
DNPは本年、創業150周年を迎えました。1876年の創業以来、幅広い事業分野で多様な製品やサービスを提供する世界最大規模の総合印刷会社です。独自の「P&I」(印刷と情報:Printing & Information)の強みを掛け合わせるとともに、社外の多くのパートナーとの連携を深めて、社会課題を解決し、人々の期待に応える「新しい価値」を創出しています。DNPは、150年にわたり受け継いできた「挑戦のDNA」を原動力に、新たな技術を開発し、その時代に求められる価値として普及させることで、”未来のあたりまえ”を創ってきました。これからもP&Iの強みを活かして、新しい価値を創出するイノベーションカンパニーを目指します。
※記載されている会社名・商品名は、各社の商標または登録商標です。
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