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「ニブロール」「コンドルズ」
毛利義嗣
[高松市歴史資料館]
 
札幌/吉崎元章
埼玉/梅津 元
東京・三鷹/荒木夏実
東京/南雄介
名古屋/拝戸雅彦
神戸/木ノ下智恵子
高松/毛利義嗣
郡山/木戸英行
岡山/柳沢秀行
福岡/川浪千鶴

ニブロール「駐車禁止」
 
今回はダンスです。
 ニブロールの公演、初めて見てきました。ニブロール、というのはむかーし流行ったイケないお薬の名前だそうです。で、何でしょう、とても暴力的で性的です。というより「的」の抜けた性とか暴力そのまんまが突発的に現われます。もちろん舞台でのことなのでフィクションにはちがいないのですが、それがリアルです、つまり抜き身です。たとえば冒頭のシーン、小柄な女性に男性が近づいて両腕でヨイショと抱え上げるのですが、たったそれだけの動作にまるで犯罪行為を見ているようなヤバさを感じてしまいます。性的な舞台とか映画とか小説とかたくさん世の中にありますが、たいていはお約束の中のお楽しみといったところで、本当に性な感じがするものはあまりない、というかそん
ニブロールチラシ
なナマものは要求されないわけですね、普通。
 暴力、については、ハリセンみたいなので人を叩いたり、素手で叩いたり、倒れてる人を蹴ったりとか、こういうシーンがまた本当に痛い。犯罪映画やスプラッタ映画の暴力とは質がちがいます。確か北野武監督の「3−4×10月」で、ガダルカナル・タカ演じるスナックのマスターが酔っ払った女性客の顔をいきなり灰皿で殴る、というポカーンな場面があったと思いますが、あの発作加減にやや似てるでしょうか。
 あと、とにかくよく走ります。人が走っている姿というのはただただ感動的です。鍛え上げられたスポーツ選手が走るのもそれはそれで感心はしますが、そうでなく、普通の人が何のためか知らないけれど駆け出す姿というのは体に直接うったえる緊張感があります。そしてちょっと怖い。自分がいま生きていることとか、いずれそれが止まることを思い出すせいかもしれません。以前、珍しいキノコ舞踊団の公演でダンサーの伊藤千枝さんが軽く走り出した瞬間に戦慄を覚えたことがありましたが、今回のニブロールの舞台でも同様のヒリツキを何回か感じました。
 暴力とか性と生とか、見てない人にとってはどうも重くて前衛な雰囲気を想像してしまうかもしれませんが、実際はそんなオドロオドロなものではなくて、情緒とかお話を持続させない、乾燥した舞台だと思います。無機的、とか評されることもあるようですが、むしろ 清潔 ということばをあてたいです。ワイドショーの対岸にあるような清潔なパフォーマンス。
 構成としては、ダンスのような動き、ダンスのようでない動き、セリフ、プロジェクターなどを使った映像、音楽、歌(途中、上から降りてきたブランコに乗った女性が歌う子守歌のような鎮魂歌のような妙に達観した歌は、脳ミソにささります。ただし歌詞は聞き取れず、残念)などを組み合わせたものでしたが、それぞれが密に結びついているというよりも、適度にかかわり合いながら並行して進んでいる、という感じです。動きと映像の組み合わせとか、いちおうリーダーはいるものの参加者が基本的に同格で舞台を作っていくというやり方など、ダムタイプを思い起こさせます、ていうかポストダムタイプとかいってる人もいるようです。で、無理して比べてみるというと、ニブロールはもっと「メッセージ」が少ない、もっと「ダンス」である、同時にもっと「ダンス」から離れようとしている、というところでしょうか。ダムタイプというのは、「ダンス」する肉体とは正面からは向き合ってないと思います。
 公演後、ニブロールのメンバーと、この日のもうひとつの舞台を行なった舞踏舎天鶏(今回の「うさぎのダンスは新作初演。昨年は高松市美術館で「女中たち」を公演してもらったのですが、さすがに、だてに30年やってるわけじゃない底力をあらためて感じます)の鳥居えびすさんによるトークがありました。司会の人は、二つのカンパニーを対照的に見てたようですが、確かに動と静とかそういう側面もあるんでしょうが、むしろ公演を見ながら思っていたのは、意外なほどに近いものであるなあということでした。それはいわゆる「ダンス」との距離です。ダンスを否定するわけじゃない、が、はるか遠くにまで広げようとしている、その方法はそれぞれ異なっていても。
 昨年でしたか一昨年でしたかフォーサイスの公演を見たとき、ダンサーたちのまあ見事な身体的スキルに驚き、練り上げられた演出に感心もしたわけですが、一方で、それがなにか? な疑いを持ったのも確かです。人の体は飛ぶようにはできていない、クルクルと上手に回り続けることも難しい、その原則にあらがって「かのように」見せることではなく、
人の体ができること、してしまうことを深く肯定すること、それをくり返すこと。速く。そうした人の体たちが互いに接触するときの危険と高揚。ニブロールがやろうとしているのは、そんな感覚をどうにか伝えようとする気の遠くなるような作業なのかなあと、思いました。
 「駐車禁止」というタイトルを見たとき、「禁止」の方に重点がかかっているのかとはじめ思ってたんですが、コメントを見ると、逆に路上駐車を望んでいるということなんですね。それを知ったとき、チョト泣けました。

コンドルズ――四国突入第一弾高松スペシャル・ミュージアム・ライブ「大航海時代」
 もうひとつダンスです。コンドルズです。プロフィールはオフィシャルサイトで饒舌に語られてますので、どうぞ。コンドルズ。見てるには激しくいいんですが、書くとなると何だかとまどう。コンドルズチラシどうも、書いてるヒマがあるのならもっと見ろ、いやむしろ演れ、といわれてるような気がするし。で、とりあえず事実関係から。女性客多いです、しかも若い。追っかけ多いようです、しかも若い、実際、北海道から来てる人もいました。メンバーはいろんな人がいます、経歴いろいろ(上記サイト参 照)、ただし男だけです、これはそんなに若くない。学生服を着て踊る、ことが多いです。踊らないことも多いです。リーダーの近藤良平さんは、特に大勢で演る公演では踊る時間が短いようです、でも踊るとキレすぎです、すごいです。笑顔も素敵です。コントとかもあります、人形劇も。なのでセリフ、多いです。でも黙ってる場面も、あります。幕間には映像つきです、これ笑えます。ダンス、と思って見てるとどうもちがう気がします。芝居、と思って見てもまた。
 何でもありの盛りだくさん、ではあるのですが、かといって色んな要素をつぎ足した感じじゃなくて、全体に何か臭いがある。そう、「漢(おとこ)」の臭いです(笑 ようやく色気づき始めた小学校高学年からバカ盛りの高校生くらいの坊主がつるんでフザケたりイキがったりするときのカッコ悪さを固く心に保ったまま、大人の客観性、というんでしょうかアーティスト的サービスサービス!精神というんでしょうか、そんなものを大量に投入して出来上がるのが彼らの舞台です。
 コンドルズは近藤さんを中心にした可変的なネットワークの総称、といえると思うし、ここまでの広がりが実現するというのは驚きなわけですが、でも、「広い」と思うのもこちらの勝手なジャンル分けのせいであって、彼の中ではあれやこれやの表現はむしろ自然に結びついているんでしょうね。彼自身が(確かそうだったと。違っていたらすみません。)以前「どんな体の中にもダンスがある」と書いてました(カッコよすぎ)が、そういう風に「ダンス」はありえるし、そんな(たとえそう呼ばれなくても)「ダンス」を演りたいし見せたいという欲望を抱えつつ疾走するコンドルズを、末ながく応援しています。

コンドルズ公演風景1 コンドルズ公演風景2
▲コンドルズ

 さて、89年からどうにか続けてきた高松市美術館エントランスホールでのダンス&パフォーマンス・ライブのシリーズですが、どうやら今回をもって打ち止めということのようです。最後の舞台を、満員の客席からコンドルズへの圧倒的なカーテンコールで飾れたことは、正直うれしかったし、感慨深いものがありましたねえ。まあ財政難というのが直接的な理由ではあるようですが、不景気だとか有事だとかいうと優先的に取り止めの対象になるのが、こういったパフォーマンスとかダンス系の催しなのはなぜだろうなぜかしら? といいつつ、一方でまだ箱モノとか作っているわけです行政は、今どき。箱ひとつ作る建設費「だけ」で、こういった催しを1000年分くらいできるんですけどね! これで、高松市美術館、事実上、ほぼ常設展と巡回展のみの美術館になりそうです。
 というわけで、せっかくですので、これまでの公演をまとめてみました。オフィシャルサイトなどにリンク張ってます。

1989 勅使川原三郎 「晴天の腕」
1990 大野一雄・慶人 「睡蓮」
1992 岩下徹・氏家哲雄 コラボレーション
1992 木佐貫邦子 「inner reality 1」
1993 維新派 「ヂャンヂャン★オペラ−少年街・虹市・ノスタルジアより」
1994 和栗由紀夫+好善社 「螺旋の夢」
1995 山崎広太 「斜線と軋み」
1995 山田せつ子 「森−月ノ蜜ヲ採る」
1996 水嶋一江 「ストリングラフィアンサンブル '96」
1997 伊藤キム+輝く未来 「生きたまま死んでいるヒトは死んだまま生きているのか?」「rmk」
1998 珍しいキノコ舞踊団 「私たちの家 "typeA :in a museum"」
1999 イデビアン・クルー 「ウソツキ」
2000 舞踏舎天鶏 「女中たち」
2001 コンドルズ 「大航海時代」
会期と内容
●ニブロール「駐車禁止」
URL http://www2.net-kochi.gr.jp/~kenbunka/museum/J_dance/J_nibroll.htm
(「Jダンス最前線」より)
会期:2001年12月13日
会場:高知県立美術館ホール(高知市高須353-2 tel.088-866-8000
URL http://www2.net-kochi.gr.jp/~kenbunka/museum/
●コンドルズ<http://www.condors-jp.com> 四国突入第壱弾 高松スペシャル ミュージアム・ライブ「大航海時代」
会期:2001年12月2日
会場:高松市美術館エントランスホール(高松市紺屋町10-4 tel.087-823-1711
URL http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/kyouiku/bunkabu/bijyutu/bijutu.html

[もうり よしつぐ]

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