“Patterns as Time”をテーマにしたDNPブース

「ミラノデザインウィーク2019」で魅せた! 印刷会社のデザイン力

DNPは、2019年4月9日(火)~14日(日)にイタリア・ミラノで開催された「ミラノデザインウィーク2019」に、“Patterns as Time”をテーマにしたインスタレーション展示を行い、初出展を果たした。生活空間ビジネスにおいて、自主的に製品を開発し、自ら販売するビジネスモデルへの転換を図るなか、「ブランド戦略に欠かせないのは、デザイン力だ」と明言し、出展を決断した山口正登専務執行役員に、出展の狙いや今後の展開について聞いた。

目次

ミラノデザインウィーク初出展で、世界の人々を惹きつける

ミラノ中央駅高架下の展示スペース「ヴェントゥーラチェントラーレ」は、入場の順番待ちができるほど熱気に包まれていた。お目当ては、DNPのサーフェスデザイナーが2組のクリエーティブパートナーと組み、コンセプトから練り上げ、それを具現化したインスタレーションだ。「人の感情に残る、触れる、響く」パターンを、DNPが世界に誇る印刷技術を駆使し、空間にデザインした。



  • 動画 2分22秒/DNP ”patterns as time” at Milan design week 2019

ミラノデザインウィークは、約100万人の来場者が訪れる世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ国際家具見本市」に併せて開催される、企業やデザイナーによる展示のことを指す。「近年は、各企業がデザイン力を発信し、その力を認定してもらえる場になっています。DNPは自社のブランド力を海外でも確立したいと考えていますので、ブランドを売り込む絶好の場になると、初出展を決めました」と、山口専務執行役員は経緯を語る。その効果は予想以上に大きく、DNPの展示は、イタリア国営テレビを始め各国のメディアが取り上げたほか、約3万人の来場者が訪れ、大きな関心を集めた。

「今までお付き合いのないクリエーターや企業の方からも、『素晴らしい』といっていただくことができ、DNPのブランド価値を高め、認知を広げたという意味では大きな効果、価値があったと実感しました」。世界的なブランド戦略の第一歩になったのは確実だ。

インタビューに答える山口専務の横顔

Profile

大日本印刷株式会社
専務執行役員 山口 正登

1975年4月、大日本印刷へ入社。2008年6月、ディスプレイ製品事業部の担当役員に就任。2016年4月より生活空間事業部を担当。

DNPが自身のブランドを世界に売り込んでいるのは、「受注産業」から「自主的に製品を開発し、自ら販売する」ビジネスモデルへの転換を図っているからだ。しかし、グローバルでのDNPブランドの浸透は、まだ堵についたばかり。そのブランド戦略に欠かせないのが、高機能製品を生み出す技術力だけではなく、まさに「デザイン力」だと、山口専務執行役員は強調する。

驚くようなものを形に。イメージを具現化する力を最大限に生かす

今回のインスタレーション展示で重要な役割を果たしたのが、今年設立された「イノベーティブデザインセンター」だ。同センターは従来、得意先の要望を受け、住居やオフィスの内外装材などの企画・デザインを行ってきたが、今後はマーケットのニーズを自ら把握し、自社のデザイン力を駆使した製品を得意先に積極的に提案して行く戦略に切り替えた。

山口専務執行役員が同センターのサーフェスデザイナーチームに出した指示はただ1つ、「世の中が驚くようなものを作ってほしい」だった。チームは、「AtMa inc.」と「noiz」の2組のクリエーティブパートナーと組み、空間すべてを「印刷」で見事に表現した。展示スペースを左右2つに区切り、それぞれ全く違った空間を創出した。

ミラノデザインウィークに出展したDNPブース

アクリル板に江戸小紋の模様が光で浮き出て見える

ゼブラ模様のような柄を前面にあしらい、白黒の色調で奥行きを感じさせない空間を表現

  • 左:古い江戸小紋の型紙をスキャニングしてアクリル素材へ落とし込んだ。
    右:壁面や床に施された模様と干渉して、椅子の模様が浮かび上がったり消えたりする錯覚を起こす。

「(同センター所属の)サーフェスデザイナーが、左右で違う空間を一体として表現できるよう、コンセプト作りから、色や形、素材選定、印刷表現、プロダクト加工まで、提案しました。左側で200年以上前の文様を現在に蘇らせ、右側に近未来の空間をデザインし、時空を超えた見事なコーディネートができました」

DNPがデザイン力向上に邁進しているのは、世界的な「デザイン経営」の流れに合致している。世界の名だたる企業は、すでにデザインをブランド価値の創造やイノベーションを実現する力にしている。

「AIを始めとして、技術の進化は今後ますます加速していくでしょう。その時代の中で、生活者に選ばれるには、使い勝手や機能面だけではなく、親しみがあって愛おしくなるようなデザイン、新たな感性の価値を製品に付与していくことが必要です」

イノベーティブデザインセンターは、デザイナーの陣容を55人ほどに拡大し、積極的に製品開発に関わっている。木、石、金属などの模様をアルミパネルに印刷したアートテック®などの自社ブランド製品は、すでにマンションやオフィスビル、商業施設に採用されているが、今後はさらに自社ブランドを強化していく。

笑顔で23人のプロジェクトメンバーが集合し、写真に写っている 

ミラノデザインウィークのために集まった、DNPのプロジェクトメンバー。情報イノベーション事業部や広報室など、複数の部署も協力し、実現した。

グローバル市場に新しい価値の提供を

インタビューに答える山口専務 正面

今回のインスタレーション展示には、初出展にもかかわらず約3万人が訪れた。来場者が数千人規模に留まる国内の展示会と比べても、格段に多い数字だ。世界中からデザイナー、クリエーターのほか、DNPとは取引のない企業や業界関係者も訪れた。「DNPの多様な可能性を感じ取っていただき、多くの方と関係性を築くことで、新たな海外ビジネスへの展開を模索したいと考えています」と、山口専務執行役員は今後の展望を語る。

DNPの生活空間事業部では、家具や内装に使用する印刷シートを海外に販売してきたが、機能とデザイン性を高めた新商材を展開し、近年では欧米を中心にビルの外装向けアルミパネル(アートテック®)や鉄道車両向け内装パネル、自動車向け内装機能材などの製品を開発して販売を拡大している。今後、海外での認知度をさらに上げ、世界のクリエーターや生活者にアピールしていく予定だ。

デザインが特徴的な玉川タカシマヤの外観

成田エクスプレスの車内の天井に埋め込まれたライトが天井に移り込んでいないのが分かる

  • 左:隈研吾氏が設計する玉川タカシマヤの壁面にも採用された、意匠性の高さが特徴のアルミパネル内外装材「アートテック®」。
    右:成田エクスプレスの天井に採用された「アートテック®」。蛍光灯の天井への映り込みを極力減らす特殊加工を施している。

「ミラノデザインウィークは一つの通過点です。次に何をやるかを常に考えていかなければなりません」。DNPは、建装材の新柄発表会を開催したり、東京の『P&I LAB SPACE CREATION』や大阪、名古屋、福岡の展示室を毎年リニューアルするなど、常にそのデザイン力を発信していく予定だ。

「我々のビジネスはB to Bが中心ですが、今後はその先のC(生活者)を意識し、場合によってはB to Cのビジネスを展開していきたい。これがまさに大きな変革で、DNPが社会課題を解決する価値を提供し続けていく挑戦である第三の創業の第一歩となります」

【関連記事】
<ミラノデザインウィーク DNP 特設サイト>
https://www.dnp.co.jp/contents/mdw2019/

<関連記事>
つくる、使う、考える人のデザイン情報サイト「JDN」に、noizの豊田啓介さんがミラノデザインウィークでのDNPとのコラボレーションについて話しています。
https://www.japandesign.ne.jp/interview/milan-2019-dnp-noiz/

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