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プライバシーステートメント
展覧会レビュー
村田真/酒井千穂
10/7〜10/9
横浜トリエンナーレ2008
9/13〜11/30 新港ピア、日本郵船海岸通倉庫、横浜赤レンガ倉庫1号館、大さん橋国際客船ターミナルほか[神奈川]
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7日は新港ピア、赤レンガ倉庫、大さん橋国際客船ターミナルへ。楽しみにしていたが主な会場を巡るにしても作品を鑑賞するにしても、あまりにもインフォメーションが少なくて驚いた。作品を仕切っていた木製のパーテーションも舞台裏みたいな印象で、映像作品の音が漏れて視ること自体に集中できないものが多くてもったいない。
9日は開場時間に合わせて訪れた日本郵船海岸通倉庫へ。順路通りに進むと真っ先にヘルマン・ニッチュの作品空間へ入り、動物の血にまみれた衝撃的な映像を見ることになる。この強烈なインパクトとショックがまた重い気分を引き摺らせ、隣の展示空間でもなかなか頭が切り替えられない。そんな展示の構成も気になったが、なにより、作品解説がほとんどない今回のトリエンナーレ、全体的に理解や解釈が困難で「タイム・クレヴァス」というテーマとそれぞれがどう結びつくのかも不明のまま。一通り見ても意気沮喪を味わった気分が否めず残念。ただ、友人からは小杉武久氏のコンサートが素晴らしかったという感想も聞いた。パフォーマンス・イヴェントに合わせて訪れたらもう少し楽しめたかもしれない。

[10月7日(火)、10月9日(木) 酒井千穂]
現代美術への視点──エモーショナル・ドローイング
8/26〜10/13 東京国立近代美術館[東京]
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ドローイングといっても、イメージとして描いた素描や作品の骨組みという意味でのみならず、独立したひとつの手法としてアニメーションやインスタレーション形式の作品なども含めた“ドローイング的表現”を扱った展覧会。展示された16組のアーティストのなかでも、たくさんのドローイングをさまざまな大きさの箱に入れてテーブルに並べたピナリー・サンピタックの作品や辻直之のアニメーションは、友だちの家で思い入れのある宝物の箱の中身を特別に見せてもらったときのように、作家との距離感がグッと縮まっていく心地で見ていて楽しい。散乱するイメージがやがて作家独自の世界として成立していく有様や、そこで新たに発生する作家の模索など、描くという行為自体の衝動や感情を露にしたクールではない面がうかがえてなかなかステキだ。手探りであったり、気持ちの赴くままに描かれていくドローイングの魅力が詰まった会場だった。この後巡回する京都展もまた見に行きたい。
[10月8日(水) 酒井千穂]
パラモデル個展「Pなる想い」
8/30〜10/11 Mori Yu Gallery Tokyo[東京]
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グレーの配管パイプを使った壁面のインスタレーションはやや遠慮気味(?)な展示の印象があったけれど、絵画作品やジオラマなど、パラモデルの表現はいっそうのびのびと自由になっている気がするし、その解放的な雰囲気は見ていて気持ちいい。パーマンの変身バッジをイメージした「P」の文字をアパートやマンションなど賃貸物件の間取り図で構成した平面作品が入口にぽつりと展示してあったが、同じシリーズの《大東京マンション》も面白かった。一つひとつの細かい間取り図には珍しいタイプもあり視線が誘われるけれど、一歩退いてみると画面は「大東京」(の文字)になっているところがニクい。雨の中ちょっと歩き疲れていたが、彼らのユーモアとセンスで気分が復活。
[10月8日(水) 酒井千穂]
拡張された感覚──日韓メディア・アートの現在
9/23〜11/3 NTTインターコミュニケーション・センター[ICC][東京]
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先に韓国のギャラリーで開催された日韓共同の日本展。9組のアーティストの作品が展示された。白い羽根を並べたスクリーンに世界各地の観光名所が映し出される韓国のユニットMIOONの《ツーリスト・プロジェクト》は、裏からの送風によって映像が羽根とともにフワフワと揺れ動く。観光や旅行の商業化で個人の行動も主体性を失っていくというさまを表した作品で、洪水のように情報の渦の中で暮らす私自身の日々にも想いが巡っていく。展覧会の主なテーマは、日韓のアーティストの表現の差異や、メディア・アートにおける独自の表現語法とは何かというものだったが、天井にまで縦横無尽に広がるパラモデルの「青いドローイング」は科学や技術が日々進化し生活環境を変え、表現がいっそう多様化する状況で実に定義しにくい「メディア・アート」の今を如実に伝えているようだった。
[10月8日(水) 酒井千穂]
Trace Elements トレースエレメンツ──日豪の写真メディアにおける精神と記憶
7/19〜10/13 東京オペラシティアートギャラリー[東京]
日豪の10組のアーティストの作品によって「記憶創造装置」としての要素にアプローチするというテーマ。展示作品はモノクロ写真、ヴィデオ、映像インスタレーションとさまざま。現実感と架空のイメージが入り混じり、物語を喚起するような志賀理江子の写真作品シリーズや、ミュージッククリップヴィデオの音を排除したフィリップ・ブロフィの映像作品など、今展のテーマを踏まえたうえで自分なりの想像を巡らせ鑑賞できるものが多く、それぞれの作品の前に立っている時間が長かった。それにしてもその場のイメージによってあっけなく変わってしまう自分の記憶とはなんて脆いものなのだ。今展で「記憶創造装置」としてのメディアはポジティヴに捉えられるものだったが、改めて自分のでたらめな知覚や記憶を思うと複雑な気分になった。
[10月8日(水) 酒井千穂]
ヴィルヘルム・ハンマースホイ──静かなる詩情
9/30〜12/7 国立西洋美術館[東京]
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デンマークを代表する作家らしいが、「室内画派」なんてものがあるのも知らなかった。モデルに描かれている妻の姿はほとんどが後ろ姿、生活臭がほとんど感じられない室内表現や人気のない風景画、違和感のある画面の構図。美しい魅力もあるが、不安定な要素があるだけに何度も振り返ってしまうような、気持ちを引きずられる絵画だ。没してからは90年以上が経っているが、むしろ新鮮に感じられ、なぜこんな絵画を制作したのだろうかと想像が広がっていく。フェルメールに影響を受けたというが、作家が活躍した時代はアール・ヌーヴォー全盛の時期でもあり、そんな同時代との関連性も気になった。
[10月9日(木) 酒井千穂]
都市のディオラマ
9/13〜10/13 トーキョーワンダーサイト渋谷[東京]
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日豪3組ずつ、計6組のアーティストが現地滞在制作を経て開催される本展は東京とシドニーの2会場での交換プログラムで、来年はシドニーでも開催されるという。なかでも、金属部品や電化製品などでつくられたドラムのような装置がガチャン、ガチャンと音を鳴らしていたエキソニモの作品空間が興味深い。正確には作動していない大きな時計つきのこの装置と、壁面のモニタに映し出される時計の映像の間で、時間の交錯する空間を体験しているような気分に陥った。そして、ここにもパラモデルのプラレールのインスタレーション。床、壁面、天井まで空間いっぱいに張り巡らされた青いレールや小さな模型はまるでどこかの街の風景か地図のようで、まさに都市のディオラマ。
[10月9日(木) 酒井千穂]
Index
10/3〜10/5
金沢アートプラットホーム2008
サイトウ・マコト展 SCENE[0]
ワークショップ「レインボーシャワー・AKASAKA」
10/7〜10/9
横浜トリエンナーレ2008
現代美術への視点──エモーショナル・ドローイング
パラモデル個展「Pなる想い」
拡張された感覚──日韓メディア・アートの現在
Trace Elements トレースエレメンツ──日豪の写真メディアにおける精神と記憶
ヴィルヘルム・ハンマースホイ──静かなる詩情
都市のディオラマ
10/12〜10/13
柴田美春展「Complex」
井関未央展「born」
河合晋平展「Live Rock」
TAMA VIVANT 2008 イメージの種子
レッド
10/15〜10/21
松本秋則
クモの網展
堂本右美「After All」
石原慎太郎 十代作品展「痛ましき十代」
坂本友由
林勇気 個展「ちいさなまひ」
ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力
10/23
フェルメール展:光の天才画家とデルフトの巨匠たち
線の巨匠たち
米林雄一展
第4回「アトリエの末裔あるいは未来」展
地下室の残像
ボストン美術館:浮世絵名品展
10/24〜10/29
特別展「大琳派展−継承と変奏−」
駅2008 鶴見線に降りたアートたち展
米田知子 展「ANEND IS A BEGINNING 終わりは始まり」
笹倉洋平展「ツタフ」
藤井秀全「Stain“Outward”」
百花京乱
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