有限会社正木建築研究所様

来院する人々に安心感を与える木目調のアプローチ
正木建築研究所による病院リノベーション設計-施工事例

医療法人裕徳会 港南台病院(以下、港南台病院)は、横浜市南部に位置する落ち着いた住宅街にあり、地域密着型の病院として、地域の住民に切れ目のない医療看護介護サービスを提供しています。
港南台病院は、44年間にわたり建物の改修を繰り返しながら運営を続けていましたが、2023年に内外装を一新するリノベーションを行いました。

来院する人々に安心感を与えるようなアプローチのデザインには、「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック®」を取り入れています。歩行者用アプローチの庇(ひさし)の軒天に、アートテックの木目調のパネルが効果的に使われています。

港南台病院の改修設計を手掛けたのは、医療・福祉施設や子ども向け施設で多くの実績を持つ、有限会社 正木建築研究所の正木 拓氏です。今回のプロジェクトの背景や設計のプロセスについて、お話を伺いました。

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有限会社正木建築研究所の正木拓氏

プロジェクトの概要

どのような経緯で、港南台病院の改修設計の依頼を受けたのでしょうか?

正木 拓(敬称略。以下、正木):港南台病院は、介護老人保健施設や有料老人ホームなどを運営する、医療法人裕徳会グループの病院です。この建物は、理事長先生が医療法人の発祥の地に44年前につくられたものです。
当社は以前にも、裕徳会様から認知症のグループホームの設計を依頼いただいたことがあります。グループホームのオープン後には好評をいただき、港南台病院の改修設計の依頼につながりました。

病院の敷地が広いため、はじめは建て直すことも検討しました。しかし、病院に求められる設置基準等が数十年前と現在では大きく変わっていて、新築の場合、病室の面積や廊下の幅を現在の基準で設計する必要がありました。すると、病床数が大きく減ってしまうため、経営的にも地域の利用者にとっても、望ましくありません。そのため、建て直しではなく改修する計画を立てました。

医療法人裕徳会 港南台病院

改修設計の段階では、新築以上にさまざまなことを綿密に検討する必要がありました。既存病院は、東棟に接続するかたちで西棟が増築されているうえに、外来診療が東棟と西棟で分かれています。それにより人の行き来に支障が出ていたため、外来診療部門と検査部門のほとんどを東棟に集約する、地下階と1階の機能を入れ替えるなど、動線を短く単純明快にしました。また、屋内環境改善と冷暖房のランニングコストの改善を実現するため、開口部サッシや窓をより性能の高いものに交換しました。あわせて今回の工事では、ICT化により最新のシステム環境を整えて、リモートでの診察もよりスムーズに行えるようにしています。

道路から出入り口までが庇で覆われている新設されたアプローチ

改修でアプローチに庇を新設

改修では、敷地の入口から病院玄関までのアプローチもポイントとなったと聞きました。その経緯を教えてください。

正木:病院からは、雨天時でもスムーズかつ安全に病院玄関までたどり着くことが求められました。病院玄関は前面道路よりも高い位置にあるため、歩行者の階段と車両用のスロープを設けています。以前の歩行者用階段は、平面的な斜めのアプローチになっていて階段の左右で踊り場の幅が異なり、安全とは言えない設計でした。今回の改修では、安全性を高めるために、直角の折れ階段にして正方形の踊り場をつくり、手すりも途切れないように設置しています。この階段の上部に庇を新設しました。
庇の出寸法は、建築面積に算入されない寸法に抑えています。多少の雨であれば、傘をささなくても濡れずに病院玄関までたどり着くことができ、要求を十分に満たしていると考えています。

港南台病院正面の市松模様に配置されたパネル

木目が一枚ずつ互い違いになる市松模様に配置されたパネル

木目調の外装アルミパネルを最大限に活かす

庇の軒天にアートテックを用いた経緯を教えてください。

正木:港南台病院と地域がさらに発展するようにという願いを込めて、市松模様をどこかに使いたいと思っていました。市松模様には繁栄や承継の意味があるためです。そこで、人を迎え入れるアプローチの庇に市松模様を取り入れると良いのではないか、という考えに至りました。

軒天のパネルは1辺が約90cmの正方形です。異なる色で市松模様をつくるのではなく、木目調として木目の方向を90度ずつ回転させて互い違いに施工することにしました。このときに選択したのが、木目調のアートテックです。

軒天井の部材には、特に耐食性が求められます。台風や暴風雨のときは、雨水が下から吹き上げるようにかかるためです。そのため、公共的な施設の外部では、天然の木材は採用が難しいと感じています。

一方、以前から知っていたアートテックは、耐食性の高さはもちろんのこと、プリントでありながら本物の木材のように豊かな表現力を備えています。木の模様を多様なバリエーションから選べることも魅力です。なにかの材料の代用品としてではなく、アートテックならではの魅力を活かして、積極的に使いたいと思える材料です。

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アートテックの色柄の選定プロセス

アートテックの色や柄は、どのように選びましたか?

正木:DNPの担当者にこちらの要望を伝えてサンプルをいくつか取り寄せたところ、そのなかに自分がイメージしていた色柄に近いものがありました。アートテックは色や素材感をカスタマイズできる点が魅力なのですが、今回は時間が限られていたため、サンプルの色柄のままで進めることにしました。

港南台病院の正面アプローチに利用されている木目調のアートテック

下から見上げても本物の木材のように見える木目調のアートテック

新築でも改修でも、各種の材料を決定するときは、実物大のモックアップや大判のサンプルを取り寄せて選びます。港南台病院の庇も、外壁の白い塗装サンプルとアートテックのサンプルを並べながら、組み合わせを考えていきました。

アートテックについては、サンプルをスキャンしてパースに取り入れて比較検討しました。軒天なので、実物は机の上で見るサンプルよりもトーンが落ちて見えるのですが、それもふまえて、この色を使用して良かったと思います。

取り付けのポイント

アートテックを取り付けるために工夫された点はありますか?

正木:庇は下地を鉄骨で組み、上面と側面はダークグレイ色のアルミ板でカバーし、軒天にアートテックを取り付けています。

アートテックだけで綺麗な市松模様をつくるためには、目地はハッキリさせる必要がありました。そのため、パネル同士の目地を深くしています。施工に当たっては、シーリング材の色と目地の深さ寸法を指定し、そのとおりに施工してもらいました。

なお、軒天パネルの同柄同方向ごとに、中央部分にダウンライトを埋め込んでいます。外部のライトは、屋上の看板を除いて電球色にしました。アプローチの安全を確保するとともに、街の一角が優しく灯されることで、防犯面の強化と街の景観との調和、さらに病院に対する親近感の演出に貢献していると思います。

アートテックの評価と今後の期待

今回の改修について、病院側の評価はいかがでしょうか。また、アートテックを今後どのように使っていくことを考えているかを教えてください。

正木:病院の理事長先生をはじめ医師やスタッフの方々、患者の方々やそのご家族には、とても好評です。外来・検査・病棟などの施設だけでなく、スタッフ専用のカフェのようなナチュラルで落ち着いた休憩室も気持ちよく利用されていると聞いています。エントランスで用いた木目調のアートテックや、院内に設置した天井の木調ルーバーなど、建物全体の統一感を意識した計画が功を奏していると思います。打ち合わせで何度もパースを病院スタッフの方々に確認していただきながら、慎重に作り上げた甲斐がありました。

木目調のアートテックは今回の建物には良く合いましたし、ほかの施設でも使っていきたいと考えています。例えば、子どものための施設で、部屋と園庭の間に大きな庇をかけるような場合です。大きな庇があると、多少雨が降ってもその下では濡れずに遊べますし、夏には庇の下にプールを配置できて便利です。庇の軒天が天然の木の場合は数年で傷んできますが、アートテックは耐久・耐候性が高いので適していると思います。

色や柄については、木目調を再度取り入れるのもいいですが、私は古色(こしょく)といわれる日本古来の伝統色が大好きなので、見せ場となるポイントでストーリーを持たせるために古色を取り入れて設計していきたいと考えています。子どもたちには、施設にまつわる歴史的な概念を伝えていく教育的な側面も期待できます。

アプローチの横面

今回のように、ある程度大きな規模の建物の場合、コストバランスが重要です。エントランス部分はコストを抑え、アプローチや待合ホールなどの利用の多い共用部にコストを集中させると、うまくいくと思います。

賃貸マンションなども可能性があると思います。1,000m2や2,000m2の延床面積のなかで、わずか10 m2ほどのエントランス部分のデザインが、入居者のイメージを大きく左右します。以前に設計した賃貸マンションでは、廊下を室内に入れてホテルライクにし、色を活用して土地柄の個性を出しました。築15年が経ったにもかかわらず家賃を上げることができた、と最近オーナーから聞きました。賃貸マンションに高めの家賃を払う人は、共用空間の美しさを気にしています。

ストーリーをつくり、いい建材をポイントで使えば、多少値が張ったとしても費用対効果は十分に得られると感じます。アートテックは耐候性が高く、色や柄も自由に出せますし、そのような使い方の可能性は大きいと思います。

(2023年11月8日 DNP市谷加賀町ビル 応接室にて)

■設計者
正木 拓(まさき たく)  有限会社 正木建築研究所
1969年 神奈川県生まれ
1987年 鎌倉学園高等学校卒業
1991年 武蔵工業大学工学部建築学科(現在東京都市大学)卒業
同年  株式会社熊谷組設計本部入社
2001年 正木建築研究所設立
2003年 法人化し、有限会社正木建築研究所
行政などの講師を務める。
2010年〜2013年 東京都社会福祉協議会主催福祉講座講師
(東京商工会議所 協賛)
他 埼玉県依頼 介護保険住宅改修・バリアフリー講座講師など
一級建築士、福祉住環境コーディネーター、福祉用具専門相談員。
医療施設、介護施設、児童福祉施設、障がい者施設、教育施設を主に設計・監理している。
個人住宅から総合病院まで幅広い用途の設計と監理を手掛けている。
医療・福祉施設においては利用者様の療養環境、スタッフの方の動線検討などを熟慮して設計業務に当たる。
新築だけでなく改修・用途変更工事の設計も多く手掛ける。
木造耐火建築物の設計も手掛けており、日本初の木造耐火幼稚園を設計した実績あり。

有限会社正木建築研究所 正木拓氏

■事例DATA
医療法人 裕徳会 港南台病院リノベーション
所在地:神奈川県横浜市港南区港南台2-7-41
用途:アプローチ軒天
施主:医療法人 裕徳会 港南台病院
竣工年:2023年
設計:有限会社正木建築研究所
施工:株式会社田中土建工業
建物構造:RC
規模:地上3階建 地下1階建て
敷地面積:1,504.20m2
建築面積:853.16m2
延床面積:2,254.63m2
設計期間:2021年5月-2022年12月
施工期間:2022年4月-2023年9月

※アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。

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