東京都東久留米市様

「要介護認定までの日数の短縮」に向けて、市職員によるBPR・デジタル化を伴走支援

要介護認定は原則として申請から認定結果の通知まで30日以内に行うこととされていますが、全国的に遅延する傾向にあり、東久留米市では42日程度かかっていました。介護を必要とする方も年々増加していて、内部事務の効率化を図ることが喫緊の課題でした。
その課題を打開しようと東久留米市は東京都によるデジタル化支援事業(※1)に参加して、手続のBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)・デジタル化に取り組みました。支援事業を受託したDNPは、株式会社DNPコアライズや株式会社ガバメイツと連携して、東久留米市の取組みを伴走支援しました。

※1 東京都デジタルサービス局|区市町村における行政手続デジタル化支援事業のWebサイト
https://www.digitalservice.metro.tokyo.lg.jp/business/kushichoson-dx/digital-support

2024年4月18日公開

[参考]行政におけるBPR とは?

Business Process Reengineering:国の行政の業務改革に関する取組方針 (2016年8月2日総務大臣決定)では、「現在の業務プロセスを詳細に調査・分解し、国民サービスの質の向上や人的リソースの活用等の面からどのような問題点があるかを徹底的に分析して、業務プロセスそのものの再構築を図ること」をいわゆるBPRとしています。

取組み内容

「要介護認定までの日数の短縮」に向けて、BPRの考え方のもと施策を検討して、試作(プロトタイプ)による実証を行いました。

〇期間:2023年5月~2023年12月
〇実施手順:下記の1,2の流れで実施しました。

1.構想フェーズ

BPRを実施する上では現状にとらわれず根本から業務を見直し、再設計することが重要です。技術の進歩や代替手段の登場により、業務開始した当時の制約・ルールそのものが形骸化している可能性もあります。そこで、構想段階では制約は一時的に考慮せずに、理想の姿を描きました。そして現在の状況と理想とする状況のギャップ(差分)から問題点を把握しました。その問題となった原因を深掘りしながら施策の方向性を検討して、施策効果と実現可能性を考慮して優先的に実施する施策を決めました。

2.実証フェーズ

検討した施策がねらった通りの効果を生むか検証するため、実際にノーコード・ローコードツール(※2)で試作品(プロトタイプ)を開発して、デジタル化した後の運用を体験しました。一部の施策では新たな作業負荷が生じることが判明したため、業務に特化した専用ツールを選定して、両ツールでの導入効果を比較検討しました。専用ツールを導入すると、訪問前後の事務作業にかかる時間を3割削減する効果が見込める結果となりました。

※2 ノーコード・ローコードツールとは、プログラミングの知識がなくてもアプリケーションやシステムを開発できるツールのこと

支援内容

市職員が業務フローの洗い出しからツール導入に至る一連のプロセスを体験し、必要な関連知識及びデジタル化の流れを理解できるように支援事業者であるDNP、コアライズ、ガバメイツが下記の項目を支援しました。

伴走支援の一例:
 ●構想フェーズ
  ・BPR講習
  ・ワークショップでのファシリテーション
  ・課題整理、施策検討の支援
  ・改善計画策定の支援
 ●実証フェーズ
  ・ノーコード・ローコードツールを用いた試作開発のサポート
  ・運用マニュアルの作成支援
  ・説明会サポート
  ・効果測定
  ・実証フェーズ後のさらなる改善案の提示

BPR・デジタル化に取り組んでみて

今回の取組みで苦労した点や得られたことについて、東久留米市介護福祉課の吉冨様と行政経営課の北爪様にお話を伺いました。

東久留米市 介護福祉課 吉冨様

東久留米市 介護福祉課 吉冨様:
今回、多くの自治体が活用するノーコード・ローコードツールを使って、2つのプロトタイプの作成を主に担当しました。作成ツールに初めて触れましたが、ツールの予備知識がまったくない、デジタルに明るい職員が課内にいない、という状況でしたので、どういったものが作れるのか、理想的な完成形はどういうものか、まったくイメージできず、最初の一歩を踏み出すことが最も大変でした。
とあるノーコード・ローコードツールでは、DNPをはじめとする支援事業者のみなさんから拡張プラグイン(※3)の紹介や作りこみのアドバイスをいただけたことで、アウトラインがイメージでき、一番大変だった最初の一歩を踏み出すことができました。
※3 拡張プラグインとは、ツールに機能を追加して、使いやすくするためのプログラムのこと


東久留米市 行政経営課 北爪様

東久留米市 行政経営課 北爪様:
自らの業務をより良いものに変革していく意識の向上は、今回の取組みで得られた成果の中で、最大のものだと思います。
今回の取組みを通し、職員の業務改善への意識・熱量の高まりを感じました。業務フローをとらえることで一歩ひいて業務を俯瞰(ふかん)することができましたし、改善案を皆ですり合わせ、実証するという経験ができました。作成したツールを、担当職員の全員で理解し、ツール使用者となる介護認定調査員の方に説明し、アウトプットする。実際に使ってもらうことでフィードバックをもらう。そして、その効果を客観的にとらえる。DXの上で大事な、サービスデザイン思考や業務効率化面での気づきも多かったと思います。
加えて、DXに向けたBPRの課題も明らかになりました。新しいデジタルツールの活用は最初の一歩が踏み出しにくい。そのひとつ目のハードルを乗り越える手助けや仕掛けが必要だと感じました。また、そもそもデジタルやITに苦手意識を抱える職員も多く、その解消なくして市役所全体の意識醸成は図れないでしょう。今後の取組みや庁内研修などに活かしていきたいと思います。

今後の展開

DNPグループは、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)及びBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)関連サービスの強化と拡大をめざし、2023年1月に新たな専門グループ会社「株式会社DNPコアライズ」を設立しました。
地方自治体では、子育て支援や介護の需要が増大していますが、人口減少が進む2040年頃には、より少ない職員数での行政運営が必要と予測されています。このような状況に対応するため、一部の自治体では、人的資源(職員)を職員でなければ遂行できないコア業務に注力する方針を掲げています。
株式会社DNPコアライズは、BPRを活用して既存業務を見直し、デジタルツールの導入やAI・BPO関連サービスとの組合せを通じて、自治体の課題解決や構造改革の推進を支援します。これにより、地方自治体がより効率的かつ持続可能な行政運営を実現できるよう、全力でサポートします。

サービスの企画・販売元

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この事例で提供したサービス

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