「安心感」をかたちづくる建材選択 ヒューリックが手がける新たな子育て・教育拠点-施工事例
2025年4月、ヒューリック株式会社様(以下、ヒューリック)が手がける新たな子育て・教育拠点「こどもでぱーと 中野」および「こどもでぱーと たまプラーザ」が開業しました。学習塾や習いごと、保育所、学童、小児科、送迎サービスなど、子育てと教育に関わる機能を集約した施設です。その両施設の外観で象徴的に用いられているのが、「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック®」を採用した門型フレームです。
なぜ子どもを軸とした施設を構想したのか。そして、数ある建材のなかからアートテックを選んだ理由とは。事業主であるヒューリック 新事業創造部 こども教育事業室・大久保立樹氏にお話を伺いました。
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関連ページ:アートテック採用事例 こどもでぱーと 中野 、こどもでぱーと たまプラーザ
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ヒューリック 新事業創造部 こども教育事業室 大久保立樹氏 |
「あたらしい子育て」を支えるプロジェクト
「こどもでぱーと」とはどのような取組みなのでしょうか。
大久保立樹(敬称略。以下、大久保):「こどもでぱーと」は、「あたらしい子育てを育てよう。」というコンセプトのもとに生まれた新たな子育て・教育拠点です。保育所や小児科クリニック、親子カフェ、送迎サービスなどの子育てに関する機能に加え、学習塾や運動・英語・そろばん等の習いごとといった教育コンテンツをひとつの施設内に集約しています。
プロジェクトを立ち上げたのは2020年。少子化が進む一方で、都市部では子ども1人あたりの教育費が上昇しており、デベロッパーとして新たに関与できる余地があると判断しました。都内を中心に不動産事業を展開するなかで培ってきた開発や運営のノウハウを、子ども教育分野に応用できるととらえたことが、この取組みの出発点です。
ヒューリックのこれまでの実践が、子育て・教育支援に特化した施設づくりの土台になっているのですね。
大久保:単に機能を集約するのではなく、テナントの皆さんと連携しながら、人が集い、関係性が継続的に生まれる仕組みを重視しています。
例えば中野では、送迎サービスの導入やコンシェルジュを配置しています。1人当たりの教育費が上がるなかで習いごとの選択肢も増え、親御さんが毎回送り迎えをする負担は決して小さくありません。「ここに預ければ一通り完結する」という安心感をつくることで、時間的にも心理的にも余裕が生まれると考えました。
建設地としてまず選ばれたのは中野とたまプラーザでした。どのような判断のもとで、この2つの立地に至ったのでしょうか。
大久保:最初から展開順を定めたロードマップがあったわけではありません。エリアの人口動態や教育熱なども含め、総合的に判断しながら立地を選定しています。
私たちは投資方針として駅近物件を数多く手がけてきました。これまでの経験を活かせることに加え、子どもたちの歩くスピードや防犯の観点から、こどもでぱーとが駅近であることは利用者の安心感につながっているといえます。中野は都市型、たまプラーザは郊外型と位置づけていますが、性格の異なる2つの立地で同時にスタートできたことは、結果的にプロジェクトの幅を広げてくれたと感じています。
現在は、この2棟を含め公表しているもので計6件が進行中です。さらに複数案件の検討が同時進行しており、2029年までに一都三県で20棟程度の開業をめざしていますが、画一的に展開するつもりはありません。各エリアの需要を丁寧に読み取り、プログラムを組み替えていく柔軟性が、事業の核だと考えています。
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こどもでぱーと たまプラーザの外観 |
街と子どもをつなぐ門として
外観でまず目を引くのが、アートテックを用いた門型フレームです。
大久保:子育て・教育のための施設である以上、まず大切にしたかったのは「親しみやすさ」と「安心感」でした。そこで門型のフレームを設け、寺子屋のような学びの場を想起させる構えをつくっています。
門は、内と外を分ける境界であると同時に、新しい世界へ踏み出すための通過点でもあります。上部をとがらせた形状には、子どもたちの成長といった意味を込めました。この門をくぐることで、自然と前向きな気持ちに切り替わる。そんな体験を、建築のかたちとして表現したいと考えていました。
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こどもでぱーと 中野の門型フレーム |
本物の木を「使わない」ことで守れる価値
どのような経緯で、アートテックを採用したのでしょうか。
大久保:温かみのある居場所をつくる上で、木は非常に魅力的な素材です。ただ、外装に本物の木材を用いるとなると、劣化やメンテナンスといった課題は避けられません。
私たちは、この事業を短期的な取組みではなく、長く続けていくことを前提にしています。完成当初は良く見えても、経年によって当初込めた意味が薄れてしまうことは本意ではありませんでした。むしろ、本物の木材を使わないほうが、私たちが大切にしている価値を長く保てると判断しました。
木目調のシートや塗装、ほかの建材とも比較しましたが、リアルな質感という点ではアートテックが圧倒的でした。この門型フレームは「こどもでぱーと」を象徴する要素でもあり、手に触れられる距離だからこそ質感が重要になります。その点で、アートテックは私たちの期待に応えてくれる建材でした。
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門型フレームにアートテックを採用 |
その土地に応じた表情を
中野とたまプラーザでは、アートテックの使われ方にも差異がありますよね。
大久保:色や仕上げ自体は共通していますが、板の大きさや施工の仕方はそれぞれ変えています。「こどもでぱーと」全体としてのデザインガイドラインは設けていますが、細かく決めすぎないようにしていて、街との関係性を最優先にしています。
「こどもでぱーと 中野」は、街路を歩くなかで徐々に視界に入ってくる建築です。より近距離での体験を重視し、板割りを細かくすることで木質感を表現しています。9階建てのビルに対して基壇部のみを囲う構成とも相性が良く、街に対してどっしりとした構えをつくることができました。
一方、「こどもでぱーと たまプラーザ」は、駅からロータリーに出るとすぐ視界に入る建築です。そこで、大判のアートテックを用いることで、遠景からでも印象に残る、すっきりとした存在感を意識しました。1階外壁部がブリックで構成されているため、その対比を際立たせたいという狙いもありました。
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中野(左)とたまプラーザ(右)の外観 |
安全と長寿命化を支える現実的な選択
アートテックの採用に際して、不安はありませんでしたか?
大久保:最も気にしていたのは安全面です。アルミパネルは、カットパネルのまま使うと子どもが切断面に触れた際に怪我をする可能性があります。その点、アートテックは曲げ加工が可能で、手の届く範囲も曲げ処理を施せるので安心して使うことができます。他社製品では、曲げると白化してしまうものも多く、質感を損なわない点でも明確な差がありました。
竣工から約1年が経過していますが、現時点で目立った劣化は見られません。イニシャルコストは低くありませんが、維持管理を含めたランニングコストまで考慮すれば、十分に合理的な選択だったと感じています。100年後も見据えた建物づくりをめざすヒューリックの思想とも、よく合致していました。
街にひらかれ、世代を超えて受け入れられる居場所へ
完成後の評判はいかがでしょうか。
大久保:利用される皆さんからは、「安心感がある」という声を多くいただいています。それはサービスの内容だけでなく、建築の風情も含めた総合的な印象によるものだと思っています。入口で親しみを持ってもらえるかどうかは、子育ての場には重要なポイントです。アートテックの木の質感も、その一端を担っていると感じています。
「こどもでぱーと」という名前から、幼児向けの施設を想像される方も少なくありません。しかし、私たちが想定している子どもの対象年齢は0歳から18歳までです。そのため、中学生や高校生、祖父母含めた保護者が訪れても違和感のない空間を意識してきました。オフィスのように硬すぎず、だからといって幼くもなりすぎない。その中間のトーンを探ることで、世代を超えて受け入れられる場になったと感じています。
中野では、こどもでぱーとを中心に子どもたちが行き交う様子を見て、商店会の会長さんから「こういう通りになってほしかった」とうれしい感想をいただきました。通りの名称がファミリーロードなのも何かのご縁かもしれませんね。9階のこどもでぱーとスタジオでは、習いごとだけでなく地域の子ども向けイベントを開催していますし、私たちとテナントの皆さんとで定期的に施設の魅力アップに向けた議論も実施しています。少しずつではありますが、こどもでぱーとを通じて人と人との輪が、業界や世代、建物を越えて広がっている実感があります。
今後、アートテックに期待することはありますか。
大久保:資材高騰の影響で、新築開発が難しくなる場面は今後さらに増えていくと思います。そのような状況のなかで、既存物件のリニューアルによって印象を大きく変えたい時、アートテックは有効な素材になるはずです。今後、ブリック調やビンテージ感のある加工など、デザインの幅が広がっていくと面白いと思います。
建物は完成した瞬間がゴールではなく、使われ続けるなかで意味を深めていくものです。その積み重ねが、やがて街全体を変えるきっかけにもなり得る。その手応えを、開業から1年ほど経った今、感じています。時間とともに価値を重ねながら、長期耐久性にも応えてくれる建材として、アートテックの今後の可能性にも期待しています。
■事業者
大久保 立樹(おおくぼ りつき)
1990年 兵庫県神戸市生まれ
2014年 東京工業大学 土木・環境工学科 卒業
2016年 東京工業大学大学院 総合理工学研究科 修了
2016年 ヒューリック株式会社 入社
開発事業部にて京都市・地域と連携した立誠ガーデンヒューリック京都(自治会館・ホテル・商業等)の企画~開発~リーシング~開業までを担当、その他既存ビルの建替事業・CRE・PPP事業に多数携わる。
2020年より、新事業創造部にて新たなオフィス商品「Bizflex」や新たな子育て・教育特化型ビル「こどもでぱーと」の企画・開発を手掛け、その他事業提携やM&Aまで幅広く担当。
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■事例DATA
こどもでぱーと 中野
所在地:東京都中野区中野2-26-11
用途:学習塾、無床診療所、店舗
施主(共同事業者):株式会社コスモスイニシア(ヒューリック株式会社)
竣工年:2025年
設計:株式会社松田平田設計
デザイン監修:株式会社生活スタイル研究所
施工:野村建設工業株式会社
建物構造:鉄筋コンクリート造
規模:地上9階
敷地面積:約360㎡
延床面積:約2,078㎡
施工期間:2023年9月-2025年2月
こどもでぱーと たまプラーザ
所在地:神奈川県横浜市青葉区新石川3-2-1
用途:学習塾・認可外保育所
施主:ヒューリック株式会社
竣工年:2024年
設計:大和ハウス工業株式会社
デザイン監修:株式会社生活スタイル研究所
施工:大和ハウス工業株式会社
建物構造:鉄骨造
規模:地上3階
敷地面積:約626㎡
延床面積:約1,326㎡
施工期間:2024年2月-2024年12月
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※2025年12月10日 ヒューリック株式会社本社にて
※アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。