某化学メーカー
共創が生まれる施設体験の設計とツール制作
不確実性が高まる現代において、単一の専門領域や一社だけの知見では、複雑化する事業課題を解きほぐすことが難しくなっています。異なる視点を持つ人々が集い、対話を通じて価値を紡ぐ“共創”は、企業にとってますます不可欠な活動となりました。
しかし、その重要性が広く認識される一方で、共創施設を構えても「空間は整っているのに対話が深まらない」「出会いが成果へ結びつかない」といった課題は多くの企業で共通しています。A社も、同様の課題が現場に生じていました。
そこでDNPは、施設の機能や導線といったハード面だけでなく、従業員と来館者がどのような感情で出会い、どのように意味ある関係性を育むのかといった体験の質に着目。来館前の期待形成から、当日の対話、訪問後のアクション設計までを一貫して再構築するプロジェクトに取り組みました。人が自然に惹き合い、気づきが次の行動へとつながる“成果につながる共創”を、体験デザインの視点から実装した取組みです。
(2025年9月22日時点の情報です)
本取組みの全体像
A社は、 2023年にオープンイノベーション推進を目的として共創施設を設立しました。
この施設は、革新的なアイデアを生み出し、企業の成長を加速させる場として期待されています。
しかし、来館者との「共創」が思うように生まれないという課題が浮上しました。そこで、DNPは「共創が自然に起こる体験設計」を支援するプロジェクトを開始しました。
お客さまの課題とご支援結果
ご支援前の課題
・成果の定義が曖昧:A社内で「共創の成果」が共通言語化されておらず、共創活動の基準やゴールが共有されていませんでした。
・来館者体験のばらつき:招待・案内・会話・議論など、来館前後の一連の体験に統一された設計がなく、共創が自然発生するストーリーが欠けていました。
・機会損失:来館者が興味を示しても、応対者の知識不足や時間・導線の制約から“来館者の興味に応えきれない”ことで、共創機会を逃しているケースがありました。
DNPの対応とご支援後の成果
・DNPの独自手法を用いたプロジェクトを提供することで、多様なステークホルダーとの共創に成功。施設機能起点ではなく「来館者&A社従業員視点」で、来館前〜来館後までの体験シナリオを再構築し「なぜ共創が生まれるのか」を明確にしました。
・共創を支援するツールのプロトタイプ:描いた共創体験を支えるためのツール「共創カード」「共創シート」のプロトタイプを制作し、来館者との対話を深め、議論を可視化するツールとして運用の道筋を確立しました。
プロセス
本プロジェクトは、サービスデザイン・ラボ®で開発したデザイン手法「OEJD(Open Experience Journey Design)※」をカスタマイズする形で、下記4つのステップで実施しました。
各プロセスは、A社の従業員、施設運営者、施設のターゲットユーザー、(空間リニューアルも見据えて)空間デザイナーとの共創で推進しました。なお、ターゲットユーザーとなる来館者は「メーカーの企画開発担当者」であり、当社のモノづくり系の事業部員を巻き込んだプロジェクトとなりました。
- ※OEJD(Open Experience Journey Design)とは: 生活者と企業、クリエイターなど参加メンバーの多様性を引き出すことで、アイデアがジャンプすることを重視したサービスデザイン手法です。
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ワークショップの様子(イメージ) |
1.現状分析(現状課題の洗い出し)
現場観察やインタビューを通じて、A社の従業員やターゲットユーザーとなる来館者、施設運営者が感じているモヤモヤや行動の停滞ポイントといった重要課題を可視化しました。
重要課題の具体例としては、施設案内後のミーティングで効果的な対話や具体アクションにつながらない、来館者が関心をもった技術についてすべて説明しきれず機会損失が起きている、「共創の成果」が共通言語になっていないことなどが上げられました。
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現状分析(現状課題の洗い出し) |
2.アイデア発想
ヒントカードを用いた強制連想法により、課題解決につながるアイデアを100件以上創出しました。
ヒントカードは、アイデアの広がりを産むためのインスピレーション用ヒントカードに加え、実現性・具体性を高めるために既存施設に備わっていた設備・備品のカードをオリジナルで制作しました。
このフェーズでは課題解決につながることを重視し、来館前から来館後までの時間軸の中で、空間デザイン・行動支援・支援ツール・イベント施策など領域を広く捉えたアイデア発想を行いました。
3.理想的な共創体験のデザイン
アイデア群を再構成し、課題解決につながる体験シナリオを設計。来館者、応対するA社の従業員、施設運営者それぞれの課題にアプローチした、理想的な共創体験を具体化しました。
体験の中には、そもそも来館前のご招待方法や準備に関する取組みも含まれ、共創施設の活用に向けた事前準備の重要性についても議論されました。
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ワークショップにて理想な体験を設計 |
4.共創ツールのプロトタイピング
最後に、一連の共創体験を促し、共創成果を可視化するためのツールとして「共創カード」「共創シート」をピックアップし、プロトタイプを制作しました。
「共創カード」では、技術の魅力を引き出して活用アイデアの発想を刺激する仕掛けや、来館者へのお土産として活用しつつ、技術担当窓口につながるための問合わせ導線を盛り込みました。「共創シート」では、A社がめざす共創の成果と、成果に至るまでに議論すべき要素が整理されており、会議アジェンダと議事メモを兼ねることができます。
両ツールは、一連の共創体験の中での活用イメージを具体的にシナリオ化・実演を通じてブラッシュアップし、ツールの利用マニュアルに落とし込みました。
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制作した共創ツール |
成果
参加者の感想
本プロジェクトに参加したA社の皆さまからは「共創の重要性を再認識できた」「具体的な改善点が明確になった」といった感想をいただきました。
A社の共創施設では、今回発案した一連の共創体験と共創ツールを一部従業員にてトライアル導入・検証したうえで、実際の施設運営に活用していくことをめざします。
また、一連の共創体験の中で必要な空間・コンテンツ要件に関しては、次期空間リニューアル計画における基本要件として採択検討が進められる予定です。
当社の今後の展開
本取組みは、当社展示会の「DNP THE SESSION 2025」にて事例展示をおこないました。多くの来場者様から反響をいただき、具体的なご提案にもつながっています。
そこで、本件を契機に「共創施設で思うように成果が生まれない」という課題を抱える企業ならびに共創施設運営者様向けに、共創体験のデザインから空間設計の基本計画策定までをご支援するパッケージサービスの提供を開始いたします。
詳細は、「DNPの空間プロデュース」に関するソリューションページよりお問合わせください。
DNPは引き続き、オープンイノベーションに取り組む企業各社の共創施設運営支援に伴走してまいります。
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DNPではサービスデザイン・ラボという組織を編成し、人起点で商品やサービスの新たな体験価値を創造し、
それを継続的に提供するための組織や仕組みも含めてデザインする方法論「サービスデザイン」を推進しています。
※サービスデザイン・ラボは、DNP大日本印刷の登録商標です。