丸善ジュンク堂書店
書店員が語る2020-2021
第3弾 実用書 ジュンク堂書店 池袋本店 山本寿子さん

私たちDNPは、生活者の「知」を支える出版文化の継続的な発展に貢献するというヴィジョンを掲げています。コロナ禍が社会を席巻した2020年。外出自粛やテレワーク・リモートワークの普及は、書店にも大きな影響を与えました。 いま、生活者が本や書店に求めるものは何か?ポストコロナ時代に求められる出版文化の姿はどんなものか?生活者の気持ちを知るため、丸善ジュンク堂書店の4ジャンルの書店員の皆さんに、2020年の書店動向と、2021年に向けた取り組みのヒントを伺いました。 DNPは今後も、ジャンルに則した最適なソリューションで、生活者のニーズに応える出版ビジネスを支えていきます。

【INDEX】
■コロナによるTOKYO2020延期が響いた
■アウトドア関連需要は急伸!
■テレビの影響力が盛り返している
■実用書は他フロアとも相性がいい

■コロナによるTOKYO2020延期が響いた

外出自粛の影響で、スポーツ本が全体的に低迷

実用書のうち、コロナで一番影響を受けたのはスポーツ書でした。オリンピックが延期になったのは非常に大きかったですね。今回は東京開催ということもあり、ここ池袋本店ではオリパラ関連グッズを取り込むなど、力を入れていた矢先でしたから…。
また、プロ・アマ問わず、さまざまなスポーツ大会が中止になり、プロ野球やサッカー、実技・技術書といったものも、軒並み影響を受けています。プロスポーツの開幕が近づくと、わくわくするような売り場を作ろうと私たちも気合いが入るのですが、今年はとてもそのような雰囲気ではありませんでしたね。
とはいえ、オリンピックが2021年に開催されれば、今年の逆境を跳ね返す起爆剤にしたいですね。お祭りムードというわけにはいかないと思うので、過去のアーカイブや名シーンを振り返られるようなものや、重厚なオリンピックの歴史を振り返るようなコンテンツを考えていきたいと思っています。

■アウトドア関連需要は急伸!

休業日を利用して、アウトドア棚を増やす試みも

同じフロアで扱っている「地図・旅行ガイド」など、特にアミューズメント系はまったく動きが止まってしまった中、アウトドア関連は需要が伸びています。キャンプ場の予約が取れないというニュースもありましたが、如実に数字も伸びてきていますね。現在もその傾向は続いていますので、来年に向けてもっと伸ばせると感じているところです。
池袋本店は緊急事態宣言中も営業していましたが、4月に日曜日を休業にした日がありました。その日を使ってアウトドアの棚を1本増やして、需要に対応しました。
また、新しい生活様式という意味では、“田舎暮らしまでいかないけれど、少し郊外で暮らす”というような価値観も注目されていました。そこで、自然の豊かなエリアでライフスタイル提案をされている方の本を集めて「新しい暮らしの見つけ方」というフェアを行いました。普段は店舗のある東京を意識したフェアになりがちなのですが、地方に目を向けたフェアにも可能性を感じているところです。

■テレビの影響力が盛り返している

パブ情報を共有し先手を打つ、地道なコミュニケーションが重要

実用書はテレビの情報番組で取り上げられた本が“跳ねる”ことが多いですが、コロナ以降、家でテレビを見る方が増えているのか、以前よりも影響・反響がしっかり出るようになっている感覚があります。
パブの予定が早くからわかっているものはしっかりと面で対応できますが、スタッフ間でもテレビやSNSの話題などを共有して売り場に生かすようにしています。また、近年は電車に健康書の広告が出ることが多いんです。「今日はJRがこの本だな」とスタッフで共有して、すぐに案内できるように面出ししたり話題書コーナーに置くなどの対応を行っています。
発売後2〜3年経っている既刊本を、メディアで仕掛けて売るという動きが定番になっているので、それに乗れるように情報収集・対応ができる体制が大事になっていますね。

■実用書は他フロアとも相性がいい

池袋本店全フロアで「他フロアの関連本売り場」を設置

池袋本店は多層フロアで、目的別に来店されるお客様が多いので、なかなか他ジャンルの本に触れていただく機会がありません。そこで、2020年の春くらいから、「このフロアにいらっしゃるお客様が好きそうな本」という括りで他フロアの本を並べる棚を設ける取り組みを始めました。
例えば、6階のPC書フロアにストレッチの実用書を置いたり、7階の自然科学書に関連して入浴本を置いたり。思った以上に反響が良いですし、実用書は他ジャンルの本とも相性・親和性がいい本がたくさんあるので、このような展開には向いていると思います。
棚には限りがあるので、選書が難しいところはありますが、各ジャンルの担当書店員同士が、レコメンドし合うようなコミュニケーションは、これを機に継続していければと考えています。

第4弾はジュンク堂書店池袋本店の文庫・新書担当、平川逸郎さんに伺います!

未来のあたりまえをつくる。®