マンションインテリア動向レポート2014

DNPでは、長年にわたりマンションのインテリアトレンドの調査を行い、WSシリーズの開発を行ってまいりました。
本コラムは2014年の1~3月にかけて、東京・山手線エリアを中心にランダムに抽出したマンションモデルルーム114タイプ(15,000戸相当)におけるインテリア仕上げ材の傾向をご紹介します。

*本記事は2015年に作成・公開した記事を、「マンションインンテリア動向レポート2021」公開にあわせて再編集したものですが、最近のトレンドに至る変遷の一情報として、今後のインテリア開発の参考にしていただけたら幸いです。
*各グラフは小数点以下の端数処理により、合計が100%とならない場合がございます。

調査の概要

調査対象としたモデルルームの立地

地図。調査地点

首都圏における2014年のマンション戸数は約8万戸。
総戸数の約1/5を対象とした大規模な調査です。

インテリアコーディネイトの考え方

DNPでは、マンションのリビングのコーディネイトを考える時空間を構成する主な要素を、以下のようにとらえています。

チャート。床・壁面・ドアをベーシックファクター(空間全体が与える印象に最も影響を及ぼす基本的要因)、寝具・ファブリックをアクセントファクター(空間にアクセントをつける副次的要因)、小物・照明ほかをコントロールファクター(自分好みの空間に仕上げる演出的要因)

何もないリビングに足を踏み入れた時、まず床の表情と壁面のテクスチャーが醸し出す雰囲気が空間全体の基本的な印象を支配します。
次にドアや家具などと少しずつアクセントをつけ、仕上げにファブリックや小物などでスパイスを効かせていくと自分好みのインテリアテイストができあがります。
以上をふまえ、今回の調査では空間全体の印象に最も影響を及ぼすベーシックファクターである床・壁面・ドアといった建材に着目しました。

インテリアイメージの分類

床を基軸とした5つの空間イメージに分類し、その関連性を調査しました。

チャート。縦軸を「柔らかな」・「重厚な」、横軸を「穏やかな」・「スマートな」に、空間イメージを配置

調査結果

床材編

床材のタイプ

リビングの床材といえば、一昔前にはカーペットが主流でしたが今では 木質表情のフローリング が一般的です。最近のマンションの木質表情のフローリングには大きく3つのタイプがあります。

グラフ。床材タイプの推移

突板フロア

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薄くスライスした木(突板といいます)を木質基材に貼り合せたフローリング

挽板フロア

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厚めに削りだした木(挽板といいます)を木質基材に貼り合せたフローリング

シートフロア

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木目を印刷した特殊フィルムを木質基材に貼り合せたフローリング

その中でもシートフロアの占める割合が多くなっています。
その理由として
・表面に傷や汚れがつきにくいとか、日焼けしにくいという優れた機能性を付与できること
・工業製品なので安定した製品供給が可能で、空間の品質を高めることができること
・デザイナーのイメージに合った色や表情のバリエーションが豊かなこと
・敷きこんだ時にバランスよく見えるようにデザインされていること
・樹種などのデザインや幅のサイズの違いによりコストが大きく変わらないこと

などの利点が評価されています。

床板の色調(トーン)

床材の色調を濃いものから明るいものまで7つのグループに分類してみました。

グラフの色分け(ディープ、ダーク、ミディアム、ライト、ペール、ホワイト、グレー)

グラフ:床板色調の割合の推移

ウォールナットデザインの床、オークデザインの床

ダーク色のフローリングといえば樹種はウォールナット、ライト色ではオークの木目デザインが主流です。

ホワイト色のフローリング事例

またホワイト色のフローリングの出現率が高いです。これは白色のインテリアは空間が広く、すっきり見えるので人気があるようです。

フローリングの板の巾

フローリングの板の巾をみると 今や約150mm巾のタイプが主流です 。これはシートフロアが150mm巾を標準で設定しているためで、突板フロアの比率が高かった以前は75mmの狭巾がほとんどでした。

グラフ:フローリング巾の使用割合の推移

75mm巾と、150mm巾フローリングの比較

フローリングは一般的に広巾だと製造上のさまざまな点からどうしてもコストが高くなります。シートフロアの印刷フィルムそのものは1mサイズの広幅ですので、サイズへの自由度は天然木よりも有利です。 より巾が広い方が空間の広がりとグレード感を演出できるという考え方 が、シートフロアを普及させていきました。

ドア編

材質

住宅のドアといえば日本人なら 木質表情 の扉を思い描くことでしょう。

木目の扉

その木目の表面材の 約80%が印刷により木質感を表現した特殊なフィルム が使われています。

グラフ。表面材にフィルムを使用した扉は、2006年に57.2パーセントでしたが2012年の87.0パーセントまで増加、2014年は天然木とガラスが少し増えた影響で79.7パーセントでした。

特殊なフィルムの層構成図。下から着色フィルムベース層、木目柄印刷層、木質の凹凸を作る透明エンボス層、表面保護膜層。

カラーと仕上げ

内装の扉の色を床のところでもお話した7つの分類で出現比率をとると、ダーク、ディープとホワイト、グレーの比率が高いです。

グラフの色分け(ディープ、ダーク、ミディアム、ライト、ペール、ホワイト、グレー)

グラフ:内装扉の色の割合

前回床のところで、床にはホワイトが多いとお話しましたが、モデルルームでは ホワイトの床とコントラストをなす濃いブラウンの扉の組み合わせ が多くみられます。
またホワイトやグレーの扉比率もホワイトの床とのバランスのよさから、都心では人気の高い色です。

ホワイトの床とブラウンの扉の組み合わせ
ホワイトやグレーの扉との組み合わせ
グラフ:内装扉の、単色と木目の割合の推移

内装の扉の約90%は木質表情 ですが、時には白やグレー、ベージュといった単色の色の面材も見られます。

乾いた木質間の扉、艶のある光沢感の扉

また一般的に木質感の表情としては、乾いたサラっとした仕上げが施されていますが、 単色の表情としては光沢のある鏡面の仕上げ が多く見られます。

従来の単色は塗装によって、仕上げられていましたが、最近では 印刷技術の応用で木質と同様に特殊なフィルムが使われる比率が高まって来ました

単色の鏡面仕上げ扉

その背景には
1.塗装のコスト
2.塗装での有機溶剤の使用による環境・健康問題
3.塗装に寄る品質のばらつき
4.フィルムの曲げやラミネートなどの加工性の向上

などによりフィルムの良さが評価されたことが上げられます。また単色だけでなく木質の表情での鏡面仕上の扉の比率も高まってきました。

木目の鏡面仕上げ扉

コーディネイト編

床と扉

アクセントを聞かせたコーディネイト

一般的に扉や家具の色を考えたとき、床の色とは同じ色相やトーンでマッチングさせることが一般的です。ちょっと前までトータルコーディネイトといえば内装の色を統一させることと考えられた時代もありました。
最近では あえてそのバランスをくずしてアクセントを効かせたコーディネイトを展開する ケースが目立ってきました。

グラフ:床と扉の濃淡の推移

床が扉に対して同色か、淡いか、少し淡いか、濃いか、少し濃いかの5つの区分で床と扉の組み合わせの比率を調べてみました。
これをみると 4分の3がコントラストコーディネイトであるといえます 。特に床が扉よりも淡い=明るいケースの比率が高いです。

マンションのモデルルームを見てみると床とドアの色のバランスは異なるトーンでコーディネイトされているケースが主流です。

組み合わせ例:床が扉より淡いケース、床が扉よりも少し濃いケース、床が扉よりも濃いケース

概して床が白~ナチュラル色の場合に床と建具が対比する組み合わせが多くみられるようです。

組み合わせ例:床が白色系の場合、床がナチュラル系の場合、床がダーク系の場合

ドアとドア枠

ドア枠

建具と床の関係以外にも建具が収まるドア枠とのバランスも重要なコーディネイト要素です。ドア枠はもともとドアと同じ仕上げが一般的でしたが、ひところ白系の単色にする時代もありました。最近では、以前のように ドアと同じ仕上げ が多くなっています。

グラフ「ドア枠が建具と同じ仕上げかどうか」。2011年までは異色が徐々に増え56.6パーセントになったが、わずか2年後の2014年には同色が89.7パーセントに。

扉と枠が異色、同色それぞれの施工事例

床と巾木

巾木写真

また床と壁の見切りである巾木の存在があります。
巾木は床と建具が同じ色やトーンでまとめた時代には、ドア枠と同じように、建具と同じ仕上げが一般的でした。
しかしながら最近の床と建具のコントラストな関係の中で、巾木に関しては 壁面の仕上げである壁紙とトーンを合わせる仕上げ が多くなっています。

グラフ「巾木が建具と同じ仕上げかどうか」。2003年では異色は41.5パーセントとやや少数派だったが、年々増加し、2015年には98.9パーセントとなり、ほぼ異色。

同色と、異色の施工事例

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