ミラノデザインウィーク2022レポート Vol.2

イタリアで6月6日から12日にわたり開催された今年のミラノデザインウィーク。DNPでは社員が実際に現地にて、50件を超えるブランドの視察・取材を行いました。DNP視点で分析したトレンドキーワードとともに、各ブランドの新作をVol.1~Vol.4まで4回に分けてご紹介します。

DNPではミラノデザインウィーク2022を通し、3つのメガトレンドと7つのキーワードを設定しました(詳しいことはミラノデザインウィーク 2022 レポート Vol.1をご覧ください)。今回のコラムでは、”Respectful”を取り上げます。

トレンド方向性




2022年ミラノデザインウィークの様子、各ブランドの新作紹介

Flexform   https://www.flexform.jp
イタリアの伝統的なファッションのカラーコーディネイトである“AZZURRO&MARRONE(青と茶)”をイメージしたコーディネイトは、トラディショナルなモダンさを感じながら、懐かしさや安心感を感じる空間でした。右の画像はAntonio Citterioによる新作のソファPERRY​です。 さまざまなモジュールがあり、柔らかなフォルムとパイピングが特徴です。

Text by Chihori Kunito

Flexform




Poltrona Frau   https://www.idc-otsuka.jp/poltrona-frau-tokyo-aoyama
創業110周年という記念すべき年に発表されたコレクション“True Evolution“では、同ブランドが誇るクラフトマンシップなどの文化的遺産を継承しながら、サステナビリティなどの現代的要素を取り入れた、まさに真の進化をテーマにしたデザインが発表されました。コレクションのひとつ、Ludovica + Roberto Palombaによる「Happy Jack」は、空間にあわせてさまざまなレイアウトが可能なモジュール式ソファ。アルミ製のフレームがもたらす浮遊感のある軽やかさと包み込むようなソフトなクッション性を両立させています。

Text by Hidehiro Anzai

Poltrona Frau




Gervasoni   https://gervasoni1882.com
アジアを含むさまざまな国の文化への敬意を感じられるデザインを発表し続けているGervasoni。Federico Periによる日本の「楕円」を意味するDaenシリーズ(左)では、コンテンポラリーな形状に非動物性素材Eco Leatherによるラタン調の面材が温かみを加えます。Paola NavoneがデザインしたJEKOシリーズ(右)に使用されているEcoTeakは、インドネシアのジャワ島の伝統的な家の梁や構造として使われていたチークの廃材を、地域の許可を得て再利用したものです。

Text by Hidehiro Anzai

Gervasoni




Kartell   https://kartell.co.jp
日本の障子を思わせる和紙で囲まれたKartellの展示ブースでは、KartellのDesign、Beauty、 Sustainability 、Intelligence、Technology、Quality、Culture、Futureについてそれぞれ言及。ブランドのアイデンティティを感じる展示でした。右の画像はイタリアのコーヒーブランドillycaffèとのコラボレーションにより、使用済みのエスプレッソカプセルを再利用して制作されたRe-chairです 。

Text by Chihori Kunito

Kartell




arper   https://www.arper.com/ww/ja
テーマ「The Project of Living」のもと、住まいとワークスペースの境界を見直し、フレキシブルな空間をスタンド全体で表現。グラデーションカラーのカーテンが空間をゆるやかに仕切り、鮮やかに空間を彩っていました。右の画像はAltherr Désile Parkによるデザインの新作ローテーブルGhiaです。天板はオークやMDF塗装仕上げ、テラゾーから選ぶことができます。

Text by Chihori Kunito

arper




Paola Lenti   https://www.paolalenti.jp
インテリアコレクションはMetamorfosi(変容)をテーマに、子どもたちの未来のためにPaola Lentiが果たす責任を表現していました。Metamorfosi collectionはカンパーナ兄弟によるデザインで、製造の過程で発生する端材を活かし、子どもが自由な発想でアートを楽しむ姿勢からインスピレーションを得た製品です。左の画像は海の生物から着想を得たフォルムで、ペットボトルをリサイクルしたポリエステル繊維で構成されています。再び100%リサイクル可能な素材です。右の画像は、紐の端材を使って構成し、糸を割くことで新しいテクスチャー表現をしています。端材を活用としたとは思えない、美しいカラーリングが圧巻でした。

Text by Chihori Kunito

Paola Lenti




Time & Style   https://www.timeandstyle.com/jp
Time & Styleは2022年にヨーロッパ2店舗目となるショールームをブレラ地区にオープンしました。ショールームに入ってすぐに展示されていたのは、スイス人建築家ピーター・ズントー及びアトリエ・ピーター・ズントーによるデザインを再構成したPeter Zumthor collection。右の画像はスイスの温泉施設のためにデザインされたシューズロングValserliegeです。細い金属の脚で構成され、横たわると宙に浮いているような感覚を得ることができます。​

Text by Chihori Kunito

Time & Style




Ritzwell   https://ritzwell.com
創業30周年を記念して、糸島工場の職人による手縫い作業を展示ブース内にて公開しました。言葉の壁を越え、職人の手作業を通しRitzwellのクラフトマンシップやアイデンティティを表現していました。右の画像はIBIZA FORTE シリーズ、イージーチェアの特別仕様です。アームのレザー部分の手縫いとあわせて、座面にもステッチを施しています。

Text by Chihori Kunito

Ritzwell




Memphis Again
トリンナーレ美術館で開催されたMemphis AgainはChristoph Radlのディレクションで開催されました。メンフィスは1980年代にミラノで結成されたデザイン集団で、世界中のデザインや建築に影響を与えたと言われています。ファッションショーのような約100m続くステージを設置し、メンフィスのさまざまなデザインが展示していました。ブルーのLED照明やデジタル文字を表示した空間に、ユニークなフォルムとカラフルな家具が展示され、スタイリッシュ感とレトロ感の対比を楽しむことができました。

Text by Chihori Kunito

Memphis Again


※2022年9月時点の情報です。




まとめ

過去から培ってきた伝統技術を称え、継承しながら、今の時代にあったデザインを提案しているブランドが今年も多く見られました。 “New Normal, New Luxury”という新しい価値観が出現し、長く大事に安心して使用できるもの、穏やかな癒しと幸福感を与えるものに価値が見いだされたように思います。そしてそれらに対して、公正な態度を示す“透明性”も重要なポイントになっています。消費者にとって「憧れ」ではなく、「共感」を得られるようなコンセプト、デザインが意識されているように感じました。




Editor 紹介

Chihoro Kunito

ミラノサローネなどの海外展示会や北欧のライフスタイルをリサーチし、トレンド情報を発信するセミナーやWebでのレポート記事を執筆している。またDNP 5Stylesの企画やコーディネイト提案にも携わる。
関連資格:インテリアコーディネーター、プロモーショナルマーケター

 Hidehiro Anzai

ドイツ・デュッセルドルフを拠点として欧州市場のデザインマーケティングを担当。現地駐在員として市場調査やデザイナーとの対話を通じ、ヨーロッパトレンド情報の収集、及びその発信活動に従事。




関連記事

未来のあたりまえをつくる。®