建築BIMが普及しにくい4つの理由
-BIMの義務化や導入メリット

パソコン性能の向上や3D(3次元)モデラーの急速的な進化によって、2009年頃から建築・建設業界に技術革新をもたらした「BIM」。少子高齢化による生産労働人口の減少と労働力不足が深刻化するなか、BIMは建築・建設業界における生産性向上に大きく貢献します。

一方、国土交通省が2022年12月に行った調査では、企業におけるBIMの導入は48.4%と約半数以下にとどまっています。革新的な技術にもかかわらず、なぜ普及が進まないのでしょうか。

そこで今回は建築BIMが普及しにくい理由をはじめ、建築BIM導入のメリットや活用事例について紹介します。建築BIMの導入を検討している建築設計会社の管理者の方などに参考となる内容となっています。ぜひご一読ください。

建築BIMが普及しにくい4つの理由‐BIMの義務化や導入メリット

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建築BIMとは「建築物のライフサイクルを情報管理するソリューション」

建築に使われるBIMとは「Building Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)」の略称で、建築物の設計から施工、維持管理に至るライフサイクルを情報管理するソリューションです。建築BIMの登場により、これまで平面図や立面図、断面図といった2次元で管理されていた建築物の情報が、パソコン上で3次元モデルとして扱えるようになりました。

また似たような言葉に「CIM」があります。CIMは「Construction Information Modeling(コンストラクション インフォメーション モデリング)」の略称で、ダムや道路などのインフラ設備に使用されます。3次元モデルを扱う部分は同じですが、BIMは建設工事、CIMは土木工事が対象です。

BIM、CIMともに意匠だけでなく構造設計や設備設計、コスト、仕上げなどの情報を一元的に管理できるため、業務の効率化が図れます。

公共工事の「BIM/CIM」の原則適用(義務化)が2年前倒し

国土交通省は2020年、2023年までに小規模工事以外の全ての公共事業に「BIM/CIM」を原則適用することを決定しました。この決定は、以前目標としていた2025年までの適用を2年前倒しするもので、「BIM/CIMを浸透させていく」という強い意志が含まれています。

3D次元モデルを活用した一定規模、難易度の事業には、次のような活用目的をひとつ以上めざす必要があります。

・視覚化による効果
・省力化・省人化
・情報収集等の容易化

また、2020年3月には「BIM/CIM活用工事における監督・検査マニュアル」や「発注者におけるBIM/CIM実施要領」を作成するなど、国土交通省を中心に着々と環境整備が行われています。

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建築BIMが普及しにくい4つの理由

本章では建築BIMが普及しにくい理由について解説します。主な理由としては、次の4つになります。

・建築BIMを習熟するまでの業務負担が大きい
・建築BIMソフトの導入や維持管理にコストがかかる
・業務の関係者や発注者から建築BIMの活用を求められていない
・建築BIMマネージャーの人材不足

建築BIMを習熟するまでの業務負担が大きい

建築BIMは革新的で効率的な技術ですが、習熟するのに時間がかかり業務負担が大きく、普及が進まない理由のひとつとなっています。建築BIMソフトウエアは機能や種類が多く、習得するのに時間がかかります。

さらに業務やワークフローの見直しや変更も必要となるため、既存業務と並行して行うには労力が伴うことも関係してくるでしょう。また、これまでの業務は2次元データのCADで行えていたため、建築BIMを導入する必要性を理解しにくいといった課題もあります。

建築BIMの教育や研修の充実や業務プロセスの最適化など、普及を促進する取り組みなどが必要となってくるでしょう。

建築BIMソフトの導入や維持管理にコストがかかる

建築BIMソフトは従来のCADソフトと比較して高価で維持管理にコストがかかるため、導入を見送るといった会社もあります。このようにコストの懸念から、建築BIMの普及が進みにくいといった側面もあります。

現在、建築BIMで広く普及しているソフトウエアのサブスクリプション費用は、1ユーザーあたり1年間で数十万円が必要とされています。これらが人件費にプラスされるため、予算に余裕がない限りは導入が難しいでしょう。

そういった場合は、後述の国の補助金や団体の導入支援制度を使って導入を進めることがひとつの手段です。

業務の関係者や発注者から建築BIMの活用を求められていない

業務の関係者や発注者から建築BIMの活用を求められていないといった現状も、普及が進まない理由のひとつです。これは「現業と並行して新たに建築BIMを導入・対応が難しく、なかなか実行に移せない会社も多い」という業界内の働き方の問題も関係してくるでしょう。

建築BIM導入のメリットを関係各所で共有し、働き方改善を促進していく必要があるかもしれません。

建築BIMマネージャーの人材不足

建築BIMが普及しにくい理由には、建築BIMマネージャーの人材不足も関係しています。建築BIMマネージャーは、各プロジェクトをBIMを通じてけん引するだけでなく、BIMを社内で普及させながら生産性を向上させる人材です。

しかし、建築BIMの普及が進んでいないことから、建築BIMマネージャーの育成も進んでいないのが現状です。このような現状を打破するには、建築BIMの普及と同時に建築BIMマネージャーの育成を支援する取り組み強化も必要でしょう。

その一環として資格支援という手段があります。建築BIMマネージャーには民間資格があり、現在(2023年10月)は2級の申込みが可能で、2024年からは準1級、1級と高難度の資格に挑戦できます。資格取得者が増えることによって社内に建築BIMが普及し、業務効率化が図られることでしょう。

建築BIMの導入で得られるメリット

建築BIMの導入にはさまざまな課題がありますが、得られるメリットも大きいです。「生産性や品質の向上」や「コミュニケーションの円滑化」など、建築BIMの導入コスト以上のリターンを得られます。具体的なメリット例は次のとおりです。

・設計・施工の修正手間が軽減できる
・クライアントとの「思い違い」や「勘違い」を減らせる

設計・施工の修正手間が軽減できる

建築BIMを導入することによって、設計・施工の修正の手間を軽減できます。建築BIMを使用すれば、基本的に意匠や構造、設備の設計をはじめとした関係者とのコミュニケーションを円滑に行えます。

さらに、その過程で出た修正点は自動で設計情報に反映されるため、これまでのように個別に描き直す手間もありません。また施工においても配筋本数の計算や干渉回避も自動算出できるため、施工上のミスを軽減できます。

このように建築BIMを導入することで、設計・施工の修正やミスの手間を大幅に軽減することが可能です。

クライアントとの「思い違い」や「勘違い」を減らせる

建築BIMは2次元データよりも詳細な3次元のデータを設計初期段階から扱うため、クライアントの「思い違い」や「勘違い」といった食い違いを減らせます。

建築BIMを使用することで、クライアントは3Dモデルを介して、建物の外観や内装、設備などをより具体的にイメージできます。また、クライアントからの要望を3Dモデルに反映して確認できるため、大幅な設計変更を事前に防ぐことができ、工期やコストの削減にもつながるでしょう。

建築業務を最適化するBIMオブジェクトの総合検索プラットフォーム「Arch-LOG」

建築業務フローの「パラダイムシフト」をめざす建築BIMソリューション「Arch-LOG」は、設計だけでなく建材にまつわる業務までWebベースで完結できます。すなわち建築業務の最適化が図れるのです。

例えば、建材の検索やサンプル、資料の請求、マテリアルボードの作成、BIMレンダリングなどの建材にまつわる情報の一元管理を可能としています。

また建材カタログ以上の表現力をBIMに反映できることから、製品データのハンドリングやユーザーの利便性向上を図れます。

以下のリンクからDNPが提供している「DNP内・外装焼付印刷アルミパネル アートテック®」のBIMデータの実例を見ることができます。
Arch-LOGで提供されているアートテックのBIMデータ (外部ページ)

建築BIMを活用した事例

本章では建築BIMを活用した具体的な次の事例について紹介します。

・新宿労働総合庁舎
・前橋地方合同庁舎

内外装の色彩計画やサイン計画を可視化|新宿労働総合庁舎

新宿労働総合庁舎は、内外装の色彩計画やサイン計画をBIMにより可視化した官庁営繕事業初のプロジェクトです。延面積が約3,500㎡の庁舎を設計初期の段階からBIMを活用した事例となります。

基本設計段階から「ライトシェルフの採用可否」や「自然換気」などのシミュレーションを行い、実施設計での関係者間の内外装のイメージ共有は建築BIMを活用しています。

複数のゾーニング計画案が比較可能|前橋地方合同庁舎

前橋地方合同庁舎は、複数のゾーニング計画にBIMを用いて行った、規模が最も大きい庁舎になります。設計初期の段階で景観や風環境シミュレーションを行い、建築物の配置や形状に有効活用しています。

外装計画以外にも構造図、電気設備、機械設備の各分野の実施設計図の一部について、BIMモデルを用いて作成した大規模な事例です。

「建築BIM加速化事業」といった国土交通省の補助金も活用できる

建築BIMの導入には国土交通省を中心に積極的に取り組んでいます。2022年度2次補正予算にて国費80億円を投じて「建築BIM化加速事業」が創設されていました。この事業には次の3つのポイントが提示されています。

・令和5年度末までの基本設計・実施設計・施工のBIMモデル作成が対象
・設計BIMモデルや施工BIMモデルの作成等に要する費用について幅広く補助
・協力事業者(下請事業者等)だけでなく、代表となる元請事業者等も補助の対象

これらは建築BIMの社会実装加速化を目的として、さまざまな経費が補助されています。現在は締め切られていますが、今後、補正予算として計上される可能性は高いでしょう。

建築BIMの課題に留意しながら導入準備を

建築BIMが普及しにくい理由をはじめ、それに付随する内容について紹介してきました。建築BIMは世の中の潮流上、不可逆な技術かもしれません。そのため建築BIMの導入を進めていく準備は、規模問わず建築・建設業界に求められる技術となるでしょう。

2023年10月現在の情報です。

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【参考】出典元
国土交通省.“建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細> ”.
国土交通省. “令和5年度BIM/CIM原則適用について ”.
一般社団法人コンピュータ教育振興協会. “BIM利用技術者試験 概要 - BIM利用技術者試験 ”.
国土交通省. “BIM導入プロジェクト~新宿労働総合庁舎~ ”.
国土交通省. “BIM導入プロジェクト~前橋地方合同庁舎~ ”.
国土交通省. “建築BIM活用プロジェクト ”.
丸紅アークログ株式会社. “Arch-LOG ”.

*Arch-LOGは、株式会社LUMINOVA JAPANの登録商標です。
*アートテックは、DNP大日本印刷の登録商標です。

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